富裕層から学ぶアセット・マネジメント〜戦略と戦術編〜

200年に渡り資産を築く富裕層はリスク管理を徹底していることを前回お伝えしました。今回は、この富裕層はどんな時もある戦術で資産を増やし守り続けることをお伝えします。

2018.2.26

最初は「戦略」のち「戦術」

アセット・マネジメントの基本は、最初は「戦略」ありきでスタートし、のち「戦術」的にコントロールしていきます。なにやら難しく意味不明と思われるかもしれませんが、言葉の響きほど難しいものではありません。投資をしたい資金を、戦略的に適切な資産(アセット)を選択して適切な配分(アロケーション)で分散を行うことです。このような手法を戦略的アセット・アロケーションと呼んでいます。また、この戦略的に決められたアセット・アロケーションを経済情勢などを勘案して戦術的に定期的に見直すことを戦術的アセット・アロケーションといいます。
アセット・アロケーションを構成する5大要素は、リスク、期待リターン、期間、目標金額、配分(アロケーション)といえます。前回もお話をした通り、アセットをマネジメントするには、まずはリスクをしっかりと把握することが大切です。ただし、少しむずかしいのが各資産毎(株とか債券とか)にリスクとリターンが存在し、その数値は資産毎に大きく異るということです。また、各資産が持つリスクリターンには、過去の実績に加えて、これからの景気サイクルや経済環境などの外部要因を加えて考える必要があります。最終的には、これらをすべて含めて想定のリスクとリターンを決定していきます。
これからも分かるように富裕層がなぜ景気サイクルや経済環境に対してアンテナを張り巡らしているかといえば、それはアセット・マネジメントを行うためには必要不可欠なことだからです。皆さんも、どこのような経済環境では株が調子良い、悪いなどを日頃から理解していくことが、アセット・アロケーションを組む際に活かすことができますので、是非アンテナを張り巡らせてみてください。

運用成果の90%がアロケーションで決定!?

この「運用成果のほとんどがアロケーションで決定している」という話は、日本ではあまり認知されていないように感じますが、世界では大変有名な話です。この話は、アセット・アロケーションと運用成果の関係について説明したもので、
「アセット・アロケーションが運用成果の90%を説明する」
というものです。
この説明は、1986年に米国のブリンソン、フッド、ビーバウワー教授により発表された「Determinants of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)という論文によって世の中に知れ渡るようになりました。論文の骨子は、ある期間におけるある運用(ファンド)の運用成果に対するアセット・アロケーションの影響度が93.6%もあったというものです。
この論文は、米国の年金運用などのデータを数多く分析したもので、株式や債券などに分散投資が行われているポートフォリオでは、投資のタイミングでもなく、どの資産にどれだけの割合で投資するかというアセット・アロケーションがもっとも重要であると、結論付けたものです。
この論文が発表された後も色々な論文やリサーチが発表されました。アセット・アロケーションが運用のパフォーマンスに与える影響度合いについては70%〜90%と様々ではありますが、総じてアロケーションの影響がもっとも高いということは揺るぎない事実になっています。このような影響もあり資産を守りたい富裕層においては、アロケーションが最大の関心事となったわけです。

戦術の重要性

運用成果に大きな影響を与えるアセット・アロケーションですから、戦略的に試行錯誤しながら資産運用をスタートするわけですが、その後ほったらかしにして良いわけではありません。資産運用において最大限の成果を上げるには、長期間資産運用を行うことが大切であることは広く知れ渡っていますが、残念ながらその期間中に色々なことが起こるのが経済、資産運用ではごく当たり前のことです。当然その中には想定外のことも起こります。
そのような時にアロケーションの比率見直しを戦術的に行うことを戦術的アセット・アロケーションといいます。そのコツは、経済の状況を正確に見極め、資産の変動率を抑えながらその人それぞれの目標にマッチするアロケーションに組み直すことです。
この見直しが運用成果に大きな影響を与えることも実証されており、そのため富裕層はきちんと定期的に運用成果の見直しを行うことが習慣化しています。年に数回は、そのための時間を確保し、成果と向かい合っています。
私たちがそこから学ぶべきことは、運用先に預けっぱなしにするのではなく、どのような状況でも自分の運用成果を精査する時間を定期的に確保して向き合う時間を作るとこからはじめということだと思います。
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