この論文は、米国の年金運用などのデータを数多く分析したもので、株式や債券などに分散投資が行われているポートフォリオでは、投資のタイミングでもなく、どの資産にどれだけの割合で投資するかというアセット・アロケーションがもっとも重要であると、結論付けたものです。
この論文が発表された後も色々な論文やリサーチが発表されました。アセット・アロケーションが運用のパフォーマンスに与える影響度合いについては70%〜90%と様々ではありますが、総じてアロケーションの影響がもっとも高いということは揺るぎない事実になっています。このような影響もあり資産を守りたい富裕層においては、アロケーションが最大の関心事となったわけです。
戦術の重要性
運用成果に大きな影響を与えるアセット・アロケーションですから、戦略的に試行錯誤しながら資産運用をスタートするわけですが、その後ほったらかしにして良いわけではありません。資産運用において最大限の成果を上げるには、長期間資産運用を行うことが大切であることは広く知れ渡っていますが、残念ながらその期間中に色々なことが起こるのが経済、資産運用ではごく当たり前のことです。当然その中には想定外のことも起こります。
そのような時にアロケーションの比率見直しを戦術的に行うことを戦術的アセット・アロケーションといいます。そのコツは、経済の状況を正確に見極め、資産の変動率を抑えながらその人それぞれの目標にマッチするアロケーションに組み直すことです。
この見直しが運用成果に大きな影響を与えることも実証されており、そのため富裕層はきちんと定期的に運用成果の見直しを行うことが習慣化しています。年に数回は、そのための時間を確保し、成果と向かい合っています。
私たちがそこから学ぶべきことは、運用先に預けっぱなしにするのではなく、どのような状況でも自分の運用成果を精査する時間を定期的に確保して向き合う時間を作るとこからはじめということだと思います。
渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表、ファイナンシャルアカデミー取締役
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