思考を深め人間力を高めるための読書方法とは

ネットで情報が溢れる時代に、本を読む意義はどこにあるのでしょうか。思考力を深めつつ、豊かに人生観を身につけることができる読書の仕方を知りたいものです。

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2019.3.20
読書が苦手、または本を読む時間がないというビジネスパーソンは意外と多いのかもしれません。
斎藤孝著『読書する人だけがたどり着ける場所』 より、ネットで情報を簡単に拾える時代に、あえて読書することが大事である理由をご紹介します。
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読書は人生観を深めることができる

自分一人の体験には限界がありますが、読書では疑似体験をすることもできます。読書によって人生観、人間観を深め、想像力を豊かにし、人格を大きくしていくことができるのです。
8ページより引用
明治大学で教育学を専門に教鞭を振るっている著者ですが、いうまでもなく連日、多くのメディアにも出演。さらに、言葉や文章に関する執筆を多数行なっています。
読書の楽しみについて、今までにも繰り返し語ってきたという著者ですが、本著は「読書が人生の深みをつくる」を前提に、読書がもたらす効能についてまとめている一冊です。
読書時間ゼロの大学生が過半数を超えたというデータがあるのだといいます。理系学生だけではなく、文系の学生も本を読まない傾向があるというから驚きを隠せません。しかし、読書をしていないといっても、文字を読んでいないわけではない。インターネットやSNSでむしろ膨大な文字量を読んでいるのだといいます。
本を読まなくてもネットを見ればいいという風潮が強い現代において、ネットで読むことと読書には重大な違いがあると著者は語ります。それは「向き合い方」です。スマホでさまざまな情報にアクセスして、主導権を握りながら次々に消費していくというネットの見方。それは、そもそも読書とは構えが違うのだといえそうです。
著者をリスペクトしながら本を読むという行為は、逃げ出さずに最後まで人の話を聞くようなものであり、体験として自身に刻まれます。
自分固有の体験だけではなく、本の世界における体験がさらにアップデートされれば、人生観が深く豊かになっていくことはいうまでもないでしょう。
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読書で深みを感じ取る力を養う

浅い人と深い人。どちらの人の話を聞きたいか、聞くまでもありませんね。では、その浅い・深いはどこから来ているのでしょうか。それは一言で言えば、教養です。
27ページより引用
最近は、リベラルアーツに関する本が数多く出版されています。グローバル化が進み、さまざまな問題が複雑化する今、物事を解決に導くためには専門分野を超えた柔軟性が必要になってきているからでしょう。
著者は、大学の講義だけできなく一般向けの講演も行っていて、幅広い質問を受ける機会があるようです。その中で、本質的なことに触れた質問ができる人と、表面的な部分にとらわれた浅い質問しかできない人がいるといいます。
浅い人と深い人、その違いは教養にあるのだとか。雑学や豆知識という観点ではなく、自分の中に取り込んで統合し、血肉となるような幅広い知識としての教養。そこでカギとなるのが、物事の本質を捉え、理解する力であるといえるでしょう。
単なる物知りではなく、教養が人格や人生にまで生きている人が深い人であると著者は語ります。「深みを感じる取る力」を身につけて深い人になっていくためには、読書ほど適したものはなさそうです。
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思考を深める読書の仕方

思考を深めるために大切なこととして、自分に引きつけて考えることであると著者はいいます。読書についていえば、ただ、本を読んで物語の筋を理解するだけではなく、自分自身に引きつけて考えることが重要なようです。
次に、感情を動かして読むこと。思考が深まりやすいのは、感情が動いているときなのだとか。頭と心の両方が大事であり、本を書いた人物の心と一緒になって感動しながら読む。感情を乗せて読むことで、より深く本の世界に入ることができるようです。
その他に、著者はメモを取ることを勧めています。ぼんやりと本を読んでいるだけでは、今、自分の思考が深いのか浅いのかがよくわからないものです。読みながら感じていることをメモすることは、思考の深掘りを続ける一助になるようです。
読んだ本について人に語る上で理解が曖昧だと、きちんと言葉にできないものです。誰かに話しつつ、質問を受けたりしながら話すことで、より思考が深まってくるのだと著者はいいます。
多くの深い理解を導くことができる読書という行為。もっと身近に楽しんでいきたいものです。
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タイトル: 読書する人だけがたどり着ける場所
著者: 斎藤孝
発行: SBクリエイティブ
定価: 864円(税込)
ナカセコ エミコ

ナカセコ エミコ

(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家/絵本作家/ブックコーディネーター 。元・銀行員であり図書館司書。現在は、女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。
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