2019年4月26日 更新

ロボットAIと人間が一体化する「自在化身体」で未来はどうなる?

「人間拡張工学」という分野で研究されている「自在化身体」は、装置を装着すれば人間の能力を拡張して「超人」になれる技術です。それは未来の産業、ビジネスをどう変えるのでしょうか? 人間と技術の進歩との関係には、光の部分もあれば闇の部分もあります。

人間の能力を拡張する自在化身体は、未来の産業、ビジネスを変える可能性を秘めているのでしょうか?
たとえば、人形職人がひな人形の顔の「目を刻む」「肌を仕上げる」「唇に色をつける」という異なる3種類の作業を同時に、正確に行って作業時間を3分の1に短縮する、あるいは学校の先生が東京と名古屋と大阪で同時に授業を行って生徒の質問に的確に答えるといった「離れ業」も、自在化身体によってできるようになります。「自在化身体」を持つと、人形職人はまるで手を何本も持っている「千手観音」のように、同時に複数の作業が行えますし、学校の先生はまるで忍法の「分身の術」を使っているかのように、複数の場所に三次元ホログラム映像として現れ、それが人にものを教えることができます。
人形職人の話は「マルチタスク職人」と言って、作業工程を一度に処理できることで作業時間の短縮ができ、品質を保ちながらより短納期で仕事を行い、また、複数の職人の仕事を一人でこなすことで人件費コストを抑え、他社との競争に勝つことができます。そんな作業の合理化により、産業界でいま問題になっている人手不足の解消にも貢献できることでしょう。
しかしビジネスの世界ではむしろ学校の先生の話のほうが重要になるかもしれません。それは人件費コストの削減効果が大きい「管理職の省人化」に直結するからです。
たとえば東京本社にいる執行役員が、「分身の術」を使うように大阪支社の営業部長の仕事も名古屋工場の工場長の仕事も同時に、完全に行えるなら、大阪支社営業部長、名古屋工場長はいらなくなります。それが本当に実現すれば、管理職の人数を減らすことができ、ホワイトカラーの生産性は向上することでしょう。事業拡大中の成長企業が直面しがちな「拡大している組織を管理できる人材が追いつかない」という悩みも解消されます。
しかし、自在化身体を持った経営幹部が「兼任」で組織を管理し、中間管理職を廃止してしまうなど、サラリーマンのささやかな出世願望を踏みつぶす「暗黒の未来」ではないかと思われるかもしれません。産業革命の時代に機械の打ち壊し運動が起きたように、人間と技術の進歩の関係には光の部分も闇の部分もあります。あなたはどう思いますか?

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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