日経ウーマン大賞minitts中村氏 限定100食が生む働き方改革

キャリア
日経WOMANのウーマン・オブ・ザ・イヤー2019で大賞に選ばれたminitts創業者の中村朱美さんは、ランチのみ1日100食限定のステーキ丼専門店「佰食屋」でシングルマザーや高齢者でも働きやすい労働環境をつくり、人生100年時代の新しい働き方を実現しました。
2019.1.7

起業すれば自分で働き方のルールをつくれる

2018年11月、雑誌「日経WOMAN」が主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」で大賞に選ばれたminitts代表取締役の中村朱美さんは、1984年生まれの34歳。京都府出身で京都教育大学を卒業後、専門学校の広報スタッフとして働きました。仕事はやりがいがあり満足していましたが、女性でも残業や出張の多い職場でした。
26歳で結婚し退職。2人の子どもの子育てに追われながら中村さんは、育児と仕事を両立できないかと考えていました。しかし現実には当時、そんな柔軟な働き方ができる勤め先はほとんど見当たりませんでした。
「起業すれば、自分がオーナーの会社だから好きなように働き方のルールをつくれる」
それが、スタートアップの最大の理由でした。選んだ業種は「飲食業」で、それまで全く経験がない分野でした。あえて挑戦したのは、料理好きのご主人に料理人のセンスがあるとみたからでした。結婚前、ご主人がつくったステーキ丼がとてもおいしかったそうです。
2012年9月、中村さんはご主人と「minitts」を創業。京都市右京区の阪急西院駅近くの住宅街に2012年11月29日(いい肉の日)、ステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」をオープンしました。当初は来客数が少なく上等な国産牛肉を廃棄せざるを得ないほどで赤字でしたが、メニューなどで試行錯誤を重ね企業努力を続けているうちに「安くてもいい肉を使っている」と評判になり、業績は上向きました。現在はテレビなどメディアで紹介される、行列ができる人気店です。
「佰食屋」は、ステーキは品質がいい国産牛のもも肉にこだわっているので、ステーキ丼は1日100食限定。minittsは同じ京都市内に第2号店「佰食屋・すき焼き専科」、第3号店「佰食屋・肉寿司」もオープンさせています。第4号店の出店も計画しています。

「ランチのみ」で多様な働き方を実現

minitts、佰食屋の経営で中村さんはご主人と役割を分担しています。ご主人がメニューを考えてレシピを決め、本人は接客、応対、従業員の教育を受け持ちます。2歳と4歳の子どもの子育てにあてる時間はしっかりと確保し、「育児と仕事を両立させたい」という願いをかなえました。
「佰食屋」は3店舗ともランチ営業のみで夜の営業がなく、1日100食限定で売り切れたら営業終了です。片付けや翌日の仕込みをしても、従業員は全員が遅くとも午後5時45分には店を出て帰途につくことができ、残業は一切ありません。長時間営業で、人手不足で残業が多くなり、休みが取れないためにさらに人手不足を招いているという飲食業の「常識」をくつがえしました。それは、長時間営業などで儲けを追求することだけが会社ではない、という経営コンセプトです。
ランチ営業のみ、1日100食限定なので、従業員の働き方の多様化が図れます。正社員でも労働時間は家庭の事情などに合わせて1時間単位で選べます。短い時間でも働きがいを持って働けるので、シングルマザー、親の介護などの事情を抱えた人でも細く長く働くことができます。それが「人生100年時代の新たな働き方」として注目されました。
そんな柔軟な働き方ができる飲食店をつくったのは、中村さんが夕食は家族みんな揃って食べるべきだと強くこだわっているからで、「仕事だけが人生じゃない」とも言います。

「1日100食限定」で食品廃棄問題も解決

minitts、佰食屋の「1日100食限定」「売り切ったら営業終了」という経営コンセプトは従業員の働き方改革だけでなく、食品廃棄問題の解決にもつながっています。
牛肉は必要な分だけを塊で仕入れ、丁寧にさばいて廃棄率を極力抑えます。もも肉をステーキに、それ以外の部位の肉はハンバーグにして、ムダにしません。「佰食屋・肉寿司」でも「クラシタ」はにぎり寿司で、硬い「スジ」は一晩煮込んで軍艦巻きで提供し、全ての部位をおいしく食べて廃棄が出ないように工夫しています。
飲食業では余った食材を廃棄するのは「営業上やむを得ない」ととらえる経営者が多いのですが、中村さんは「そんなもったいないことはしたくない」とこだわります。店で提供するメニューの数が少ないのは、食品廃棄をできるだけ出さないようにするためだと中村さんは言います。
中村さんは、そんなminitts、佰食屋の経営コンセプトに賛同する経営者を募集し、全国に広めるフランチャイズ化も考えています。

参考URL:
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO38273200Y8A121C1000000?channel=DF130120166018
https://ikumen-smile.com/nakamura_akemi-9950

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。

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