2018.9.18
8月10日(決戦日)
初回交渉は意外にあっさりと終了したように報道されています。茂木大臣のコメントにもそれを裏付けるかのように、「日米貿易を促進させるための方策を探求し、共通認識に基づき協力分野を拡大することで一致した」とまさに玉虫色。なぜ、このようなソフトな交渉内容になったのでしょうか。
ここからは再び推測になりますが、米国側が中国や欧州との貿易交渉の方向性を決めた上で、その後に日本との交渉を行いたいというスタンスなのではないかと感じています。
トランプ政権は、8日のオハイオにおける補選で戦略の見直しを迫られました。しかし、これまで中国、欧州、日本、南米に対して激しい貿易戦争を全面的に仕掛けています。その結果、G7内では明らかに浮いた存在になり、ロシア、中国、欧州と世界の主要国との対立軸は深まるばかりです。自ら対立を演出してきたトランプ政権とはえい、今振り返ると、唯一日本が味方であるかのように見えたかもしれません。よくよく考えると鉄鋼やアルミに追加関税を発動しても表立って対抗策や強い抗議を行わなかった日本。トアランプ政権が、ソフトランディングを意図しているのであれば、日本は優先的にその対象になる可能性があるかもしれません。
今回、次のFFR交渉の日程は、9月下旬になりました。9月末に予定されている日米首脳会談の直前に行うことが発表されています。この日程は、9月20日開催予定の自民党総裁選の後に予定されています。もし、勘ぐるとすれば、この日程は総裁選への配慮しつつ、それまでに他の国とのスタンスを決めていくということかもしれません。考えすぎかもしれませんが、もしこの仮説が正しいとすれば、米国が米国民の富をファーストという考えへ方向転換するのであれば、次回交渉は以外に厳しくならない可能性を一つのシナリオとして考えておく必要がありそうです。
8月16日(決戦5日後)
さて、このFFR決戦の5日後、8月16日に米国株式市場のダウ工業平均が+396.32ドル高と大幅反発をしました。そのきっかけは、中国商務省による発表でした。中国商務省の代表団は、8月下旬に米国を訪れ、6月初旬以来の貿易協議に臨むというものでした。通常であればこのニュースではここまで株価が大きく反発をしないはずですが、8日のオハイオ州の補選結果によりトランプ政権が貿易戦争のソフトランディングを図るのではないかということを楽観シナリオを市場がサブシナリオとして折り込み始めた証拠です。
ただ、これはサブシナリオであることに注意が必要です。相場においてサブシナリオがメインシナリオに成り代わるまでには、確信に結びつくような確度の高い裏付けが必要になります。例えば、経済指標、雇用指標や物価指数などが好転すること、また、このような指標では測れない政治的な流れや世論などが大きくシフトしているなどを含めて考える必要があります。
メインシナリオが悲観的で、サブシナリオが楽観的な場合、楽観的なシナリオであるサブシナリオがある程度の短期間でメインシナリオに取って代われない場合、つまり、期待が裏切られたという状態になります。その時は、失望感が市場を覆うような反動が懸念されるため、サブシナリオが楽観的な場合はより冷静に判断する必要があります。引き続きメインシナリオは、トランプ政権の強気姿勢は継続し貿易戦争は拡大する、ただし、サブシナリオとして米国は貿易戦争をソフトランディングが台頭し始めていることを頭の片隅において置く必要がありそうです。