借金王ジュリアス・シーザー 借金で、世界の半分を手にした男

今では、歴史の教科書に当然載っている有名なシーザーですが、意外なことに彼は40歳を過ぎるまで、公職につくこともなければ、手柄を挙げて有名になることはありませんでした。でも、別の意味で有名でした。彼は、借金と女性関係で有名だったのです。

2017.9.4
共和制ローマ紀の軍人であり、政治家でもあったジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサルとも呼ばれます。ジュリアス・シーザーは英語読みです)。今回のお話は、彼がまだ独裁官になる前のお話です。

シーザーの借金の理由

彼の現在にも伝えられている容姿は猛禽類にも似たイケメンで、数多くの女性と浮名を流しました。(一説によると、元老院議員の1/3の妻がカエサルに寝取られたと伝えられています。のちに「ブルータスお前もか!」で有名なブルータスの母親とも愛人関係があったとか。) この派手な女性関係で欠かせなかったのがお金です。彼は惜しげもなく愛人にプレゼントを繰り返し、いつしか借金は莫大な金額になってしまいました。
今でもイタリアに残る古代ローマの公共建築の多くは、政治家たちが自腹を切って建築したものです。その昔、共和制ではコンスル(執政官)という役職は選挙で選ばれており、民衆からの人気によって結果は大きく左右されます。そのため、民衆からの人気を得るために、民衆が喜ぶような公共建築を政治家たちは競ってローマに建築しました。シーザーが行った公共建築で現代まで残存しているものは、フォルム・ユリウム(ローマ市内)です。

シーザーの借金の総額

女性関係と公共建築、どちらもお金がかかりそうですね。
現代に伝えられているシーザーの借金総額は1,300タレントと言われています。これは、12万人の兵士を1年間雇用できる金額で、当時としても天文学的な借金額で、ローマの国家予算の約1割を使ってしまったそうです。
こんな金額を借りる方も借りる方ですが、貸す方も返ってくると思っていたのでしょうか? そして、共和制ローマでは利息は禁止されているとはいえ、シーザーに返せるアテはあったのでしょうか。この莫大な借金を返す唯一の方法をシーザーは債権者たちに提案します。 「この借金を返すには、私自身が出世するしかない」 まさに逆転の発想というべきか、唖然とするしかありませんね(笑)。債権者たちは、莫大なお金を人質に取られたら、シーザーを政治的に支持するしかありません。もし、彼が失脚でもしようものなら、借金はすべて返ってこないのですから。

出世払いで完済したシーザー

債権者たちは、当時のローマきっての資産家のクラッススに保証人を頼みこむことにしました。シーザーは、借金を抱えたまま属州の総督を歴任して、やがては人望を集めていきます。その後、三頭政治(ポンペイウス・クラッスス・シーザー)で一角に食い込んだシーザーは、クラッススの死後、ポンペイウスとの対立で勝利をおさめ、地中海世界の王となっていったのです。
さて気になる借金ですが、属州の総督をしていたときの蓄財で徐々に返していき、最後には終身独裁官に就任することで、完済したそうです。

借金を自分の力に変えて

シーザーは、借金を弱みにするのではなく、自分の強みにして、政治的立場を強化していきました。また、債権者たちも、半分はシーザーに投資するようなつもりでお金を貸していたようです(お金の使い道の半分は愛人たちでしたが)。
そして、このような逆転の発想ができる強靭なメンタルを持っていたからこそ、多くの人を惹きつけ、歴史に残る結果になったのだと思います。最後は暗殺という形で人生の幕を下ろしましたが、彼のことは2,000年がたった現在でも、こうして話題になり続けるのですから、すごいですね。
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