2018.9.17
「美しい」を感じる細胞、フリーズしていませんか?仕事も人生もじんわりあたためる「ひとり研修」のお誘いです。
ビジネスマンが美術研修?
“この絵、何が描いてあるか教えていただけませんか?”
2年ほど前、仕事先の美術館学芸員さんからこんなお話を伺いました。
近年、一般企業管理職の研修を受入れている―――え、美術館で研修って、何をしていらっしゃるのですか?
研修で最初に行うのは「作品を見て」、「何が描かれているかを伝える」。または「一番好きなものを選ぶ」。そして「他の参加者に理由を伝える」。講義や創作も行いますが、まずはこれ。
研修で最初に行うのは「作品を見て」、「何が描かれているかを伝える」。または「一番好きなものを選ぶ」。そして「他の参加者に理由を伝える」。講義や創作も行いますが、まずはこれ。
まずは予備知識なしで「見る」「伝える」
これは“Visual Thinking Strategy(VTS)”という鑑賞教育法だそうです。
しかし、なんだか子供向け夏休み企画のような、やさし気なカリキュラム・・・企業研修で大人相手に、それでいいんですか?
「それがなかなか難しくて、皆さんもじもじするんですよ」
これは“Visual Thinking Strategy(VTS)”という鑑賞教育法だそうです。
しかし、なんだか子供向け夏休み企画のような、やさし気なカリキュラム・・・企業研修で大人相手に、それでいいんですか?
「それがなかなか難しくて、皆さんもじもじするんですよ」
見に覚え、あり
もじもじ・・・身に覚え、あります。
社会人生活10年と少し、今の仕事(美術展用コンテンツの企画製作)を始めた当時、仕事先で、答えるのがとても苦手な質問がありました。それは、学芸員さんからの「どの作品が好きですか?」。
もちろん正解はなく、思うまま答えればよい場面。
社会人生活10年と少し、今の仕事(美術展用コンテンツの企画製作)を始めた当時、仕事先で、答えるのがとても苦手な質問がありました。それは、学芸員さんからの「どの作品が好きですか?」。
もちろん正解はなく、思うまま答えればよい場面。
美術的評価の低い方を選んでしまうんじゃないか・・同僚の出方を待ちたい・・正解は何?・・研修参加者の心の声が想像できます。
時にみなさんは、何かに対して、好きか?美しいか?を自分に問うた事・伝えた事、この一年でどのくらいありましたか?
私がこの時初めて気づいたのは、“自分の感性しか根拠のない事柄を伝える”のを怖がる自分。この機会、大人の日常で驚くほど少ない。そうしている間に、美しいと感じる細胞さえフリーズしてないか?ほうっておいたら永久凍土じゃない?・・これ、まずくない?
こんな記憶に照らすと、研修の「見る・伝える」は、各自の凍結度合い自覚と解凍作業。多くの参加者にとっても、大人だからこそまずはこの過程が必要なんだろうなあ・・と納得できるのです。
(更にビジネス上での必要性分析は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書 山口周著)に明快。興味のある方は、読んでみてください。)
(更にビジネス上での必要性分析は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書 山口周著)に明快。興味のある方は、読んでみてください。)
さてどうしよう・・一緒に「ひとり研修」しませんか?
自分も身に覚えあり、でもうちの会社にそんな専門家の研修はないぞ・・・そんな方へ。
私が「まずい!」に気付いたあの日以来始している事・・まずは自分で、“好き”や“美しい”を感じる細胞を解かそう、という「フリーズ解凍ひとり研修」にお誘いしましょう。
私が「まずい!」に気付いたあの日以来始している事・・まずは自分で、“好き”や“美しい”を感じる細胞を解かそう、という「フリーズ解凍ひとり研修」にお誘いしましょう。
実際に美術館に足を運べる場合は、①解説を読まずにまず一周 ③ひとつ貰うとしたらこれ!を“決める”(「買う」でないところがポイント)という手順。ですがここでは、美術館から作品画像をお借りしての「デジタル版おうち研修」を。ひとり研修ですと、冒頭のVTSでいう「伝える」=コミュニケーションに欠けますが、ここはこれを読んでいるネット回線で繋がった皆さんに向かって、とお考えください。
では、冒頭の作品をもう一度。
何が描いてあるか、教えていただけませんか?
「決める」「伝える」ためには、まず「見る」事が必要。
鑑賞教育で重視されるこの 「見る」過程。やってみると、これ結構負荷があります。
オレンジ、青。何がいる?ある?場所・時間は?浮かぶのは、月か太陽かそれとも・・
普段自分が「見た」としている行為のぞんざいさに、私は都度へこみますが、続けていると、一番優先している要素(色、形、題材・・)や、その時の感情コンディション(ハッピーに見える、悲しく見える)など、自分の“無自覚エリア”が形を成すのが感じられますよ。
鑑賞教育で重視されるこの 「見る」過程。やってみると、これ結構負荷があります。
オレンジ、青。何がいる?ある?場所・時間は?浮かぶのは、月か太陽かそれとも・・
普段自分が「見た」としている行為のぞんざいさに、私は都度へこみますが、続けていると、一番優先している要素(色、形、題材・・)や、その時の感情コンディション(ハッピーに見える、悲しく見える)など、自分の“無自覚エリア”が形を成すのが感じられますよ。
次に、簡単な作品解説を。
ジョルジュ・ルオー『秋の夜景』 1952年(パナソニック汐留ミュージアム所蔵・画像提供)。前面にはキリストと思われる人物。空には、晩年の作品に繰り返し描かれ、月とも太陽とも言明されぬ、世界を包む“光”の源。敬虔なキリスト教徒で、「聖なる芸術」を追い求めたルオーが、晩年にいきついた聖書の風景です。
ジョルジュ・ルオー『秋の夜景』 1952年(パナソニック汐留ミュージアム所蔵・画像提供)。前面にはキリストと思われる人物。空には、晩年の作品に繰り返し描かれ、月とも太陽とも言明されぬ、世界を包む“光”の源。敬虔なキリスト教徒で、「聖なる芸術」を追い求めたルオーが、晩年にいきついた聖書の風景です。
ここで再度作品を見ると、今まで感じなかった空気の温度や匂い、音までもが感じられませんか?「見る」に始まる五感解凍。凍土に、じんわりと温泉が湧き出てくる快感。
仕事きっかけの「ひとり研修」ですが、私はこれで、生活全体があたたまってくる気がします。身に覚えありの方、一緒にやってみませんか?
お時間の許す方は、もちろんぜひ本物で。こちらで「見る」ことができます。
『開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ』展
2018年9月29日(土)-12月9日(日) パナソニック汐留ミュージアム
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180929/