2018.7.24
一品ずつ登場するフルコース料理の給食
イタリア料理というのは本来、前菜、プリモピアットと呼ばれるパスタやリゾットの料理、セコンドピアットと呼ばれる肉や魚料理、そしてデザート、果物と順番に運ばれてきます。自宅での食事も、まずパスタやリゾットなどを食べ終えた後に、肉や魚あるいは野菜を食べるのが習慣。
そのため、給食もそれに準じて一皿ずつ登場します。給食は、教室ではなく専用の食堂で食べます。給食を作り運んでくれるのは、そこで働くシニョーラ(おばさま)たち。
日本と違い、「嫌いなものは無理に食べる必要ない」と考える親が多く、イタリアの親たちの過保護は食生活にも及んでいるのかもしれません。しかしそれは、地中海的な「人間性重視」の食育と言えないこともなく、幼年期には好き嫌いの多かった人が大人になってなんでも食べるということも多いのです。
イタリアらしく、ピッツァが登場したり、アドリア海沿岸の町では魚介類が豊富であったり、美食の町ボローニャではプリモピアットの種類が非常に多い、といった愉しい話題にも事欠きません。
巷にあふれるオーガニック食材
イタリアのオーガニック食材市場
ここ数年、イタリアではオーガニック食材が大ブームです。
かつては高価で庶民には手の届かなかったオーガニック食材は、現在は普通のスーパーにもごく普通にそのコーナーがあります。市場が拡大したせいか、スーパーマーケットも
自社ブランドを展開、価格も一時期に比べると落ち着きました。
この大ブームが、給食にも大きな影響を与え始めました。「フードインサイダー」はもともと、世界保健機関(WHO)が推奨する健康な食生活を基準にポイントを加算します。世界保健機関が「発がん性がある」と公表した加工肉やパーム油が含まれる食材の頻度は少ないか、品質、栄養のバランスなどが調査されます。そして、オーガニック食材の使用頻度も調査対象になるのです。
イタリアにおけるオーガニック業界のデータを網羅する「Biobank」は、イタリアの1311都市の給食について詳細な報告を行いました。
1311都市のうち、給食食材の70%から89%が有機食材という自治体は129団体、90%以上という都市は111都市に及びます。これらの「優秀な」都市は、70%が北イタリアに集中しており、経済的優位は給食事情にも反映されているのです。
そしてイタリアの給食第一位に輝いたのは、北イタリアのクレモナでした。栄養学者によれば、クレモナの給食は栄養バランスが完璧で穀類のバラエティが豊富、加工肉の使用がゼロ、そして豆類と野菜の量が多いというのがその理由でした。
高得点を獲得したクレモナ、実はその郊外の小さな町では、過去に給食をめぐるこんなお話がありました。
市長vs父兄 給食をめぐる紛争
人口1000人前後のクレモナ郊外の2つの町は、毎月の給食費150ユーロ(日本円で2万円弱)という高額にもかかわらず、それに見合わない給食の「質」に父兄が大反発していました。子供の健康を考慮し地産地消をモットーに、価格も大幅に抑えるために、40人ほどの父兄によって学校給食が運営されることになったのです。
この父兄の「反乱」に対して市長は激怒、父兄が組織した給食センターで作られる給食は「市立の学校内では提供してはならない」と通達したのです。負けじと父兄は教会に助力を要請、教会は子供たちに食堂を提供することになったのです。学校から教会の食堂までは、毎日スクールバスで子供たちが送迎される事態に。そのスクールバスの運転手も、父兄によってオーガナイズされています。
すべてはボランティアとして組織されているため、この動きに参加しない父兄の子どもは否応なしに昼食を自宅で摂らなくてはならなくなりました。
北イタリアの給食ポイントが高いのは、このように親たちの意識が高いことが関係しているかもしれません。
今日は「ビアンカ」でお願いします
「体調が悪い子供のためのメニュー」がある学校もあります。
子供のお腹の具合がイマイチ、という場合は親が連絡帳に「今日は“ビアンカ”でお願いします」と書きます。「ビアンカ」とは「白」のこと。
イタリア人はなぜか、「白」い食材は消化が良いと思っているようです。パスタにパルミジャーノチーズとオリーブオイルを絡めただけの「パスタ・ビアンカ」は病人用と考え、トマトソースやニンニク入りのパスタは体調が悪いときはさけるのです。「ビアンカ」のメニューは、これにハムとニンジン、そしてリンゴ。
いずれにしても、親から子供への干渉が大げさなイタリアらしいエピソードですね。