2018.9.11
カジノ実施法と聞くとカジノのイメージだけが強くなりますが、実際はカジノを含む様々なレジャー施設や国際会議場を1カ所にまとめた統合型リゾート(IR)の整備を認めるという法律です。カジノはあくまでもIRの付属なので、カジノ付きIR(統合型リゾート)実施法とも呼ばれています。現在、全国で3か所の導入が決まりました。(2018年8月現在)
1. カジノ付きIR導入の経済効果
カジノ実施法の目的はIR導入で観光客を増やし、地域経済の振興と日本全体の財政を改善するということです。
カジノ付きIR導入では建設投資という経済効果も大きいですが、重要なのは運営による直接的、間接的に発生する経済効果です。
直接経済効果となるのはIR内での雇用創出や運営による生産です。一方、間接経済効果はIRの運営に関連する物やサービスをサプライする会社の生産や付加価値がIR導入で増加し、その増加による雇用創出という波及効果です。
例えば、IR内の飲食店に食材を卸している会社が生産を増加したり、雇用創出したりという効果が挙げられます。
さら更に第二の波及効果はIR内やサプライ会社の雇用創出で雇われた人々による消費増加です。
オックスフォード・エコノミクスが2014年に出した 東京と関西にIRを導入すると想定した試算をネバダ大学の研究所(IGI※) がまとめた報告によると、年間運営生産額は東京で2兆2410億円、大阪で1兆6220億円、直接雇用は東京で3万4500人、関西で2万6000人、間接雇用は東京で6万8000人、関西で5万1500人、GDPへの影響は両方で年間約2兆3000億円です。(※IGI…International Gaming Institute)
これに伴って消費税収入が増え、更にはカジノ収入に30%課税し、その他にも法人税等もありますから、かなり税収入が増えるというメリットもあります。
2. カジノ付きIR導入で実際どこが儲かる?
カジノ実施法の成立を一番喜んでいるのはリゾート産業、ゲーミング産業、観光産業ではないでしょうか。
また、IRと一言でいってもその特徴はそれぞれなのでどのようなビジネスチャンスが間接的に展開されるかは各々です。
例えば、ラスベガスでは大人向けショービジネス、シンガポールのユニバーサル・スタジオで有名なリゾート・ワールド・セントーサでは家族向けの企業、ドイツの温泉が売りのバーデンバーデンは裕福層向けの企業などがそれぞれ恩恵を受けているようです。
海も温泉も有ある日本はその土地特有の利点を生かしたIRを建てることで地方創生も大いに期待できそうです。
トレンドに敏感なH.I.S.の澤田社長はカジノは地方に置くべきと、長崎ハウステンボス内への誘致に意欲を示しております。
当然ながら、海外の企業も黙ってはいません。ハードロックカフェ社は、海外著名アーティストの招聘をアピールしたり、香港メルコのホー社長はいくら投資しても構わないビジネスチャンスと、日本のカジノ導入に賭けようとしています。
3. メリットはデメリットを超えるのか?
日本経済にメリットがあるということは明らかなようですが、ギャンブル依存や治安悪化などの社会的なデメリットについてはどうなのでしょうか?
実は、ギャンブル依存症についてIGIの報告で意外な事が分かりました。シンガポールでは2010年にカジノ付きIRの導入以来ギャンブル依存症の推定率が減ったという事です。
理由はカジノ導入に伴い、ギャンブル依存症に対する予防や治療などの政府取り組みが強化されたからです。
犯罪については、統計上、カジノと犯罪の関係性は弱いとIGIは指摘しています。特にシンガポールはカジノ導入のために犯罪調査部門を新たに警察に設立して犯罪防止対策を徹底しているそうです。
日本はシンガポールを手本に、日本人のカジノ入場には制限や6,000円の入場料を設定するなど依存症対策に取り組んでいく姿勢を示しました。
しかし、経済的メリットとデメリット、どちらが大きいか結局は始まって見なければ分らないのではないでしょうか?
日本経済の未来は、カジノ付きIRの導入により観光立国として、アメリカ、中国に次ぐ世界3位の経済大国の位置を守っていけるのでしょうか?まさに日本にとっては大きな賭けに出たというところかもしれません。
参照:
https://www.unlv.edu/sites/default/files/page_files/27/JapanSocialEconomicImpactsReport.pdf