結果を出す人は収入が上がるという必然〜『お金原論』[第5回]〜

「お金」とは何か ── 。このシンプルな命題に、現代の視点から向き合おうというのが『お金原論』という新しい学問だ。現代において、私たちの生活とお金とは一蓮托生だ。お金の悩みから解放され、自由な時間を産み出し、心に描く夢のライフスタイルを実現したい。そんなあなたへ。

2017.8.29
『お金原論』という本の命題は、「お金とは何か」ということ。
「お金」という軸を通じて自分自身をニュートラルに見ることができれば、人生をもっともっと楽しめるようになるだろう。
これから毎回、『お金原論』の中身を少しずつ伝えていく。すべてが賛同を得られるものであるという確信はない。しかし、生活や人生と切っても切り離せない「お金」というものについて、1人でも多くの人に「お金とは何か」という議論に加わっていただければ幸いである。

結果を出す人は収入が上がるという必然

「頑張っているのに評価してもらえない」──この論理は、会社側の立場に置き換えて考えると、ひどく一方的な主張であることがわかる。なぜならば、会社にとってみれば、それだけを理由に給料を大盤振る舞いするわけにはいかないからだ。
考えてみれば、当然のことだ。会社にとっても、社員が頑張った分だけ売上げが伸び、利益が出れば問題ないのだが、今の時代はそんなに甘くはない。「頑張っている」ことを心情的に評価しないわけではないが、心情で会社全体が沈没しては本末転倒だ。
しかし、どんな会社であれ、結果を出す人ならば、給料は上がっていくはずだ。
プロスポーツ選手は、結果を出さないと収入が上がらない。誰もがそれを当然のことと理解している。そして、プロスポーツ選手が収入を上げるためには、「頑張っている」という事実だけでは足りない。そこには「結果」が不可欠だ。毎日バットを1000回素振りしていることが評価され、収入が上がるわけではない。
収入が高いプロスポーツ選手は能力が高いとわかる。コマーシャルの出演料が高いタレントは、視聴者からの求心力が高いとわかる。役員報酬が高い経営者は、経営能力が高いとわかる。
会社員の場合も、これと同じ原理に落とし込んで考えると、思考がとてもシンプルになる。
仕事をして収入を得ているということは、その仕事のプロである。つまりプロスポーツ選手がスポーツスキルによって結果を出し、収入を得ているのと同様、会社員として給料を得ている人は、会社員という仕事のプロであるということだ。自らの仕事スキルを活かし、会社の業績アップに貢献をする代わりに、給料という形で収入を得られるのである。
残業という形で働く時間の長さを「頑張っている」。アポイントメント獲得のためにひたむきに電話をかけるという形で「頑張っている」。でも、収入が増えない。「こんなに頑張っているのに、会社にちっとも評価してもらえない」──そんなふうに不満に思っている人がいたとしたら、そこには「結果を出す」という思考が抜けている。結果を出せば、収入は確実についてくる。
「今の会社は完全年功序列制だから、自分がいくら頑張っても、そもそも給料が上がる仕組みになっていない」と思う人もいるかもしれない。しかし、心配は無用だ。
あなたが仕事で生み出す価値よりも収入のほうが低かったら、他の会社から引き抜かれたり、容易に転職できたりすることで収入が上がっていくはずである。
もしも今の会社から適正に評価されていないと考えるのであれば、試しに転職活動をしてみるのがよいだろう。転職活動は、自分の正しいマーケット価値を知るためには、このうえない絶好の場だ。
加えて、もしも本当に収入以上の経済的価値を提供しているのに収入が低いままだったとしたら、あなたが転職することを会社に伝えたとき、会社は必ず「給料を上げるから、辞めずに残ってほしい」と引き留めるはずだ。現在の仕事が営業部門のような直接的に売上げを立てる仕事ではなかったとしても。
こうした視点に立って物事を捉えることを、私は「両面思考」と呼んでいる。
ブックオフコーポレーションの現・取締役会長の橋本真由美さんをご存じだろうか。
タレントの清水國明さんの実姉としても有名だが、彼女が最初に「娘の学費の足しになれば」とブックオフで働くようになったときは、アルバイトとしての採用だった。当時の時給は600円だったという。栄養士の資格を持つ橋本さんは、「カロリー計算とPTA活動くらいしかしたことのない主婦だった」と、とあるインタビューで振り返っている。
しかし、そこから当時の古書店ではありえなかった「立ち読みOK」、女性にも入りやすい清潔感のある店舗づくり、本を作家の名前順に陳列することなど、アルバイトでありながらも貪欲に提案を続けたことで、圧倒的な信頼を得ていく。そして、1年4カ月後には、アルバイトという雇用形態のまま店長に抜擢。さらに、「パートでは労働時間に制約がある。もっと思いっきり働きたい」という理由から正社員にしてもらったという。
朝9時から夕方5時までが正規の勤務時間であったにもかかわらず、朝9時から翌朝5時まで夢中で働くということも頻繁だったという働きぶりと、会社を急成長に導く提案が評価され、取締役、常務取締役を経て、ついには創業者の後を継いで社長に就任した。
このように、長い目で見ると、収入は必ず自分が提供した価値に連動していく。「この人はいくらの価値をもたらしてくれたのか」という結果が、収入として自分に還ってくるのである。
(『お金原論』13〜16ページより転載)
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