「令和」というポスト平成の時代をどう生き抜いていくか

新しい元号「令和」が発表されました。いよいよ5月からは新時代が始まります。どの世代も、今までの常識や考え方をアップデートする必要があるでしょう。 塩野誠・佐々木紀彦著『ポスト平成のキャリア戦略』 より、20代〜40代のビジネスパーソンがポスト平成という時代をどう生き抜いていくか、軸となる考え方をご紹介します。

2019.4.9

ポスト平成の時代にはすべてが陳腐化する

そんな塩野さんと私が今、キャリア戦略を語るのは、日本、日本企業、日本人が明らかに大転換期を迎えようとしているからです。
4ページより引用
本著は、著者である佐々木紀彦氏と、もう一人の著者である塩野誠が対談する形で書かれています。
佐々木氏は、慶應義塾大学やスタンフォード大学大学院を経て、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。東洋経済オンライン編集長やNewsPicks編集長を歴任しています。多くのメデイアでその姿を目にした人は多いのではないでしょうか。
塩野氏は、慶應義塾大学やワシントン大学ロースクールを経て、現在は戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー各国政府ファンドとの協調投資に従事。その間には、さまざまな企業と携わってきました。
ポスト平成の時代に向けて、20代、30代、40代に向けて、世代別にキャリア戦略について語った一冊です。今という時が日本にとって大転換期に当たっているからこそ、読むべき一冊であるといえるでしょう。
ポスト平成の時代には、今以上に昭和・平成のキャリア戦略は完全に陳腐化しているといいます。
それにもかかわらず、世の中に溢れるキャリア論の多くは、リアリティに欠けているのだとか。著者が属するメディア業界でいえば、40代以上のメディア人が語るキャリア戦略は99%役に立たないと言い切っています。
先輩や会社のいうことを従順に聞いていたら、10年後、20年後に地獄をみる。それはあらゆる業界で言えることなのかもしれません。
それにしては、昨今の若者は危機感が薄すぎる。危機感があったとしてもどこに進んでいいかわからない人材が多いようです。
この本は、そんな若い人たちに向けて、著者の知恵と経験を率直に伝えたいという願いが込められています。

キーワードは「ハングリー&ノーブル」

ハングリーさがないと事を成せないですし、何でも貪欲に吸収し、決断する度胸も持てません。その一方で、ノーブルさがないと、悪い事をしてしまう。そこのバランスの難しさだと思っています。
38ページより引用
日本人としてポスト平成時代をに生きるためのキーワードを一つ挙げるとしたら、「ハングリー&ノーブル」であるといいます。
今の日本にも、貪欲に金銭や名誉を求めるハングリーな人や、高貴な気概に満ちたノーブルな人はいるものです。しかし、ハングリーかつノーブルな人は、ほとんど思い当たらないと著者は語ります。
大半の成り上がりは、自らの欲望や自我に食われてしまい、ちっぽけな成功に満足してしまっている。そして、大半のエスタブリッシュメントは、良識があっても勇気と野蛮さに欠けるため、いい子ちゃんで終わってしまうのだとか。
むしろ、昭和の本物のリーダーには、ハングリーさとノーブルさを持つ人々が多くいたようです。ノーブルというのは、高潔な気概のことであり、たとえば本田宗一郎や松下幸之助、緒方貞子などが筆頭でしょう。
それ以外のキーワードとしては、「越境」が挙げられています。どこにも安全地帯がなくなっていく時代に、いかにして越境者たれるか。さらには、混沌とした「カオスにおける意思決定」も必須スキルになっていきそうです。
どんなカオス状況においても、自らのミッションを実現するために、知的に領域横断していく。私たちは、ハングリーかつノーブルな精神性を大切にしながら生きていく覚悟が必要なようです。

真面目をバカにしない

令和の時代において「偉大な人生」を送るためには、どんなことが大事なのでしょうか。
その一つとして、「真面目をバカにしないこと」であると著者はいいます。「仕事が苦痛だよね」などと言って、一生懸命やることや真面目なことをバカにしてしまうと、いろんなことを真正面からとらえられなくなってしまうようです。
インターネット上、SNSで人々が批判的に議論することがありますが、何かのお題に対して茶化すことだけをしていると、そのうち何も残らなくなってしまう。
SNSはナルシストの鏡のようなもので、小さい喜びや自己承認を安易に得られてしまうから、リアルの世界でリスクをとる意欲が萎えてしまうといいます。
自己愛マネジメントは、今の時代を生きるために必要であり、SNSに振り回されないだけの強固な自己と戦略眼が必要なようです。
根底になる普遍的な考え方をしっかりと据えつつも、柔軟な思考と行動で新時代を乗り越えていきたいものです。
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タイトル: ポスト平成のキャリア戦略
著者: 塩野誠・佐々木紀彦
発行: 幻冬舎
定価: 1,620円 (税込)
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(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家/絵本作家/ブックコーディネーター 。元・銀行員であり図書館司書。現在は、女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。
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