10年間でたった1000時間——日本人の英語学習が非効率的なワケ

英語を勉強しているのにいつまでも上達しない——その原因は、中高時代に慣れ親しんだ非効率的な英語学習法かもしれません。成果を上げている英語学習法の特徴は、音読による大量で丁寧なインプット。英語学習の常識を見直し、今年こそ使える英語を習得しませんか。

2018.5.7

日本人は10年間で1000時間しか英語を勉強していない?!

日本人の多くは中学3年間・高校3年間、大学4年間も含めれば10年間の英語学習をしています。ところが、実際にそれで使える英語が身についたかと言えば、常に疑問符がついてまわる現状。多くの英文を読んだし、リスニングや会話の授業もあったのに、なぜこれほど「英語ができない」のでしょうか。
高校時代を振り返ってみてください。文法、読解、オーラルコミュニケーションでそれぞれ1時間ずつの授業が毎週あった場合、1週間の英語の授業は合計3時間。窓の外を見たり内職をしたり、居眠りしたりという、注意力散漫な時間を差し引いて実質的に週に2時間の英語学習をしていたとすると、10年間やっても1040時間しか勉強していないという衝撃的な数字が出てきます。

中高で行われてきた従来の英語学習法

どのような英語の勉強をしてきたかも重要です。文法を難解な文法用語と共に学び、長文読解では単語を1つ1つ調べながら1文ずつ和訳していく授業スタイル。受験期になると突然2ページにわたる英語長文の趣旨を読み取って設問に答えろと言われます。
単語学習では入試用英単語集をめくり、英単語と日本語を突き合わせて覚えていくスタイルが多いでしょう。「単語は例文の中で覚えろ」と言われたことのある人もいるでしょうが、例文を暗記するなんて大変。単語をピンポイントで暗記するほうがラクなため、多くは文脈から切り離した単語学習を行っています。
そんな勉強法ですが、英語でエッセイを書いたり、英語で会話をしたりする時間はほとんどありません。入試問題にリスニングはありますが、お世辞にもネイティブスピードとは言えないゆっくりペース。
どうしてこれで、ナチュラルスピードでの英語のコミュニケーションが可能になるでしょう。

使える英語の習得に必要な時間と方法

『留学しないで「英語の頭」をつくる方法』(KADOKAWA、2014年)の著者、齋藤兼司氏によれば、ネイティブの赤ちゃんが母語を習得するのに9000時間のリスニングをこなしているとか。
非ネイティブの大人の場合、3歳レベルの英語が使えるようになるまでに1000時間〜1500時間の学習が必要で、さらに実際の会話で使える英語が口から出てくるまでに最低1000時間の会話練習(セルフトーキング等)が必要だと言われています。
私達が中学高校、さらには大学で学習してきた英語の総時間では全く足りないということが一目瞭然。毎週3時間というペースで続けても、到底ネイティブと会話できるようにはなりません。
そして、使える英語を習得するには、英単語の学習方法や読解の方法も変える必要があると言います。齋藤氏が推奨するのは、子供用の辞書(ピクチャー・ディクショナリー)を使って英単語を日本語ではなくイメージで覚えること。簡単な英単語をイメージ化できるようになったら、「一文一絵」で英文を1文ずつイメージ化していく——最終的にはこれを拡げて、日本語で文章を読んで頭に思い描くのと同じように、英語で文章を読んで頭に内容を思い描けることを目指します。
この他いくつかのトレーニングを繰り返すことで、ネイティブスピードに近づくことができると言います。

イングリッシュカンパニーの英語学習法

「第二言語習得研究」の成果を取り入れた英語トレーニングで大きな話題を集めているイングリッシュカンパニーも、学校英語とは全く異なる学習法で受講者を3カ月間みっちりトレーニングします。
イングリッシュカンパニーが重要視するメソッドは、英文をチャンク(意味のまとまり)で捉え、内容を理解したらしつこく音読を繰り返して英語を身体に染みこませること。すると、最初は半分も理解することができなかった英語のリスニング課題が、2倍の速さでもすべて理解できるようになります。
課題文の音読を繰り返すと言っても、ただダラダラと読み上げるわけではありません。チャンクを意識することで英語のリズムや英文の構造を捉え、英語を文頭から理解していく練習をしつつ、発音を矯正します。課題文の単語や表現を覚えるために、文の一部が空欄になっており、日本語訳を参考にしながら穴埋めしつつ音読を繰り返し、最終的には課題文すべてを暗唱できるまでに染み込ませていくのです。
しかも宿題が大量に出る上、毎日教師とLINEでコミュニケーションをとります。これによって持続的な英語のインプットとアウトプットが行われ、英語を聞く耳や英語を話す口がどんどん育っていくという仕組みなのです。

インプットの量と質を上げて今年こそ使える英語を習得

こうして見ると、学校英語で行われるインプットは量も質も遠く及びません。文脈を無視した単語暗記では文章の中で単語を使えないし、英文和訳中心の英文解釈では日本語を経由しないと理解できないから、ナチュラルスピードのコミュニケーションにいつまでも追いつけないのも道理です。効率的なインプットに最も適した音読も、教科書を数回読み上げるだけでリズムや発音の矯正はほとんどありません。大したインプットをしていないから、使えるアウトプットが出来ないのだと言えるでしょう。
効率的な学習方法は、課題文を何度も音読してインプットしていくこと。単語も表現も発音もリズムも、あるいは英語のロジックでさえ、しつこい音読で少しずつ身についていきます。
使える英語の習得には最低1000時間が必要と言いましたが、毎日3時間続ければ約1年で達成可能。今年こそ、使える英語を習得してみませんか。
Anshi

Anshi

より充実した素敵な生き方に——一過性のブームに流されない「選ぶ生き方」を掲げ、世の中に氾濫する雑多な情報から本当に役立つものをご紹介しています。
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