ブロックチェーン、AIで先行くエストニア!「つまらなくない未来」の作り方

欧州バルト三国の一国として知られる「エストニア」について紹介した本。と言っても、観光情報を紹介するのではなく、今この国が世界の注目を集めている“あるモノ”についての貴重な現地レポートです。

2091.5.15
その“あるモノ”とは…人工知能(AI)、ブロックチェーン、無人ロボット、仮想通貨、スタートアップ・エコシステム、ゲノムなど。実はエストニアは1990年代から世界に先駆けてIT立国を目指し、上記のような技術をいち早く取り入れ「電子政府」を実現させた国として強烈な存在感を放っています。その先進性はというと、本書の監修を務めた起業家の孫泰造氏曰く、サービスや働き方、人々の生活に至るまで「未来の社会をダントツで先取りしている」というほど。
観光資源も人口も少ないエストニアが、いかにして「電子政府」を実現させ、世界が注目する国になったのか?日本も本気で導入を考えるべき便利なシステムや価値観とは?知られざる国エストニアの成長戦略から私たちの「未来を面白くする方法」を学んでみました。

日本では当たり前の「面倒くさい」がエストニアには存在しない!

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政府が徹底して電子化を推進した結果、エストニアでは「現金」「確定申告用紙」「ファックス」「薬の処方箋」「パーキングメーター」「運転免許証」「地域の回覧板」など、これらのモノすべてが消えつつあるのだとか。さらに、自分の車を売るのに面倒な書類を集める必要もなく、わずか1分で完了。日本の役所では長い列に並んだ挙句、書類に不備が見つかったら再び出直さなければいけないこともありますが、エストニアではもう絶滅した光景なのです。
さらに驚きなのは、エストニアでは子供が誕生すると病院側がオンラインによる国民登録手続きを行い、わずか10分後には国民ID番号の取得が完了。しかもそれだけでなく、健康保険の加入、児童手当や育児休暇の申請などもすべて自動で行ってくれるというのです。
ただし、オンライン上で出来ないことが3つだけあり、それは「結婚」と「離婚」、そして「不動産売買」。不動産売買は金銭的に大きな決断であるため。結婚、離婚は感情的に「早まってはいけない」という理由からなのだとか。なるほど、結婚や離婚までオンラインで簡単にできてしまうと後悔する人々が続出してしまうかもしれません。ですが、行政手続きの99%がオンラインで出来てしまうエストニアは羨ましいばかりです。

独自の少子化対策!優秀な人材を呼び込む秘策!

日本と同じく少子高齢化問題を抱えているエストニア。しかし、その対策は日本とは異なります。日本の少子化対策といえば待機児童の解消など地道な方法ですが、エストニアは電子身分証明書(デジタルIDカード)をすべての人々に開放し、銀行口座を開設、起業しやすくするというものでした。
その狙いは、国境を越えて活躍する優秀な人材の頭脳を結集し、IT産業で自国を活性化するというもの。実際に、この制度を利用してユニークな求人サイトサービスを展開するスタートアップなどが誕生。人口減少の緩和にも成功しているのだそうです。

8歳からのロボット開発授業!

エストニアのある学校では、8歳からロボット開発の授業を必修科目にしているのだそうです。子供たちはパソコンでプログラムを組み、レゴで組み立てたロボットを動かす。自律的に障害物をよけたり、物をつかんだりしながらゴールに向かうロボット。思い通りに動かなかったら、子供たちはパソコンに戻りプログラムを改良、そしてうまくいったら大きな声をあげて喜びます。
この教材を開発した先生が言うには、授業の目的は大きく2つあり、ひとつは「プログラムがどのように動くのかを理解すること」、そしてもう一つは、課題解決方法としての「プログラミング的な思考力」を身に着けるためだといいます。この先生はIT業界から教員に転職したそうですが、こうしたユニークで先端的な授業を取り入れることもエストニアに世界が注目する理由の一つなのかもしれません。
また、教育現場に3Dプリンターやブロックチェーン技術の導入を支援する起業家や、参加者3万人超という世界最大級のロボットコンテスト「ロボテックス」を主催するなど、先端テクノロジーを積極的に取り入れようとする姿勢には驚くばかりです。

次世代に必要なスキル「4C」とは?

未来を突き進むエストニアという国、そして子供たちの教育を目の当たりにした孫泰造氏は、これからAIやロボットが進化していく中で必要になる力を、4つの単語の頭文字に由来する「4C」という言葉に集約しました。それは…
・クリエイティビティ―
・クリティカル・シンキング(批判的思考力)
・コミュニケーション
・コラボレーション
という4つの言葉。特に、今とはまったく違う新しい社会に生き、まったく新しい仕事に携わり、まったく新しい暮らしをする子供たちに必須の要素になるとのこと。私たち大人も、次世代を担うの子供たちの好奇心に火をつけ、創造性を伸ばす方法をエストニアの人々にならってみるのも面白いかもしれません。
横山ケン太

横山ケン太

趣味はアウトドア、興味は財テク。フリーの作家として活動中。
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