日本の例では、2017年の「韓国、ソウル市日本人女児強姦事件に判決 一転無罪へ」という記事があります。これも目的は広告収入。後のインタビューで発信者は「韓国についてはどんな話題でも信じたいという思いの人、拡散してやろうという人がネット全体にいた」ことに注目したと答えました。彼自身は韓国に対して何の感情も知識もなく、フェイクニュースについても「これが誰かの人生や、実生活に影響を及ぼすことはないんじゃないでしょうか」という考えです。
また、有償の口コミというケースもあります。特定の商品に高評価をつけさせ、商品価値を誤認させ購入させるのが目的。口コミ投稿者は、投稿によって金銭など何らかの見返りを得る仕組みです。
意図せざるフェイクニュースと発生のメカニズム
フェイクニュースに騙されないためには、その発生メカニズムから特徴をおさえる必要があります。
私たちがフェイクニュースを目にするのは、多くの場合それが「拡散」されているから。拡散の理由は、「ネタ」として面白いという場合や、事実だと「誤解」し危機感を抱いたという場合があります。
多く拡散された投稿は「力」を持ち、たとえ小さな誤情報であってもフェイクニュースとして大きく成長してしまいます。深く考えない「いいね!」やリツイートが、フェイクニュースを成立させてしまう。これが、意図せざるフェイクニュースの発生メカニズムです。
もう一つの発生メカニズムは、自分がすでに信じている事柄をサポートするような情報は信じやすいという確証バイアス。自分の考えや信念に合致する投稿を安易に拡散すると、フェイクニュースになってしまうことがあるのです。
フェイクニュースの犠牲者を出さないために
マサチューセッツ工科大学 Sinan Aral教授によれば、偽情報の量は事実情報より多く、数倍の規模と速さで広まります。しかも、この状況は今後悪化すると警告。
まずはフェイクニュースに騙されないことが重要です。偽情報はあえて驚きや嫌悪を与えるものが多く、他人に知らせたくなるもの。心を強く動かされた時こそファクトチェックの視点が必要です。
もし偽情報だと分かった上で拡散ボタンを押すなら、それはフェイクニュースへの加担かも。投稿は拡散されるたびに力を持ち、時には人の命をも奪うことを思い出さなければなりません。
その投稿に力を与えていいのかどうか、拡散ボタンを押す前に今一度、自分に問いかける必要があるでしょう。
【参考URL】
「“フェイクニュース”暴走の果てに 〜ある外交官の死〜」、NHKクローズアップ現代+、2019年3月4日、https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4256/
木内登英「日本でもフェイクニュース対策」、ナレッジ&インサイト、NRI Financial Solutions、2019年1月31日、http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2019/20190131_2.html
「「ヘイト記事は拡散する」嫌韓デマサイト、運営者が語った手法」、BuzzFeed News、2017年1月27日、https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/korean-news-xyz-2
「特集 フェイクニュース」、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2019年1月号』、ダイヤモンド社、pp.17-82
「“フェイクニュース”暴走の果てに 〜ある外交官の死〜」、NHKクローズアップ現代+、2019年3月4日、https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4256/
木内登英「日本でもフェイクニュース対策」、ナレッジ&インサイト、NRI Financial Solutions、2019年1月31日、http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2019/20190131_2.html
「「ヘイト記事は拡散する」嫌韓デマサイト、運営者が語った手法」、BuzzFeed News、2017年1月27日、https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/korean-news-xyz-2
「特集 フェイクニュース」、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2019年1月号』、ダイヤモンド社、pp.17-82