2017年12月20日 更新

〈新川 義弘〉どんな世代とも共存共栄 ~新川義弘が語る、“競争原理は不要。長期目線で人的資産を育てていく”

一軒のレストランが街の価値を向上させ“街の資産”となっているという姿を目指し、お客様、街、レストランが一緒になって、長期の目線で店作りをしていく。起業人の新川さんに、大切な人的資産の育て方などについて聞きました。

2015.3.28

「常連を増やすのは自分ではなく店」視点の変化で現場目線 から経営者目線へ

神原
新川さんは、現場のスペシャリストであるとともに経営者ですね。
現場の視点と経営者の視点、何か変わるところはあるのでしょうか?

新川
僕の両親は食堂を経営していて商売人の環境で育ったのですが、子供心に「大きな組織の中で、大きなものを動かしたい。」という想いがありました。そして(株)グローバルダイニングに勤務していた26歳のときに、世田谷の池尻にゼストというテキサスメキシコ料理のレストラン出店計画があり、僕はその店の店長を任されました。

新川
当時はネットも携帯もない。そういった中でトレンディな店を運営していくためには、常連を作って、そのパイを増やしていかなければならない。そしてそれは、「自分が」ではなく「店が」そのように動いていかないといけないと思うようになり、その結果、目線がどんどん経営者の視点になっていきました。以前であれば、例えば常連さんから「この間、来たときに、あなたがいなかったから面白くなかった」などと言われると、「やっぱり、俺がいないとだめなんだ。」と、とても嬉しかった(笑)。でも2年、3年経って「これじゃだめだ、自分がいなくなったときに、この店がだめになる。」と思うようになってきたのです。それを感じ始めたのが、30歳前後のときでした。そこで自分の経営的なマインドが出来てきたような気がします。

自分のやり方を実行して結果が出始める

新川
この店に僕は1992年の夏まで、3年間勤めました。それから、タブローズという、フレンチをベースにしてアジアのエッセンスを加えた店の立ち上げに参加しました。「これをやるとお客様が来なくなる」という基本的なことがありますよね。例えば、「目を合わせないで話す」とか、「言っていることとやっていることが違う」とか、「時間帯や曜日で機嫌が違う」とか。
それで僕は、採用のときに、自分が嫌だと思っていることをやっている人、例えば目を合わせないで話をする人とは一緒に仕事をしないという、自分のやり方を決めて実行したんです。そうすると、結果が出始めました。

神原
ご自身の経験や仮説があって実行してみたらいいチームが出来て、それがきちんと店舗の数字にも反映されたということですね。
新川
「選り好みして採用している場合じゃない」と周囲から言われましたが、「俺は違う、何回面接して、何回募集をかけても、納得できない人とは一緒にやらない。」と言って実行していきました。そんな事をしているのは僕だけでした。今から考えると、かなりガンコだったかもしれません。でも僕は、それが功を奏したと、今でも思っています。それをやり通したということが、僕のチームの勝因だったと思っています。

「ぶれることのないお客様目線」と「オリジナルの強さ」 この2つで店を軌道に乗せる

神原
タブローズの立ち上げのときは、新業態の開発を企画の段階から関与されていらっしゃいますが、そのときのご経験についてお聞かせください。

新川
1992年に店の立ち上げに携わったとき、社長から単価13,000円の店をやるから、と言われました。ゼストの単価は3,500円でしたから、3倍強ですよね。結果として軌道に乗せることが出来たのですが、これは「お客様目線」からぶれることがなかったということと、「オリジナルの強さ」の二つの結果だったのだろうと思っています。これは今でも経営的観点から大事にしています。例えば、本や映画、旅などで得た情報、一瞬のフラッシュバックでも良いのですが、それを組み立てていって、「俺はこういう店をやりたい」「これを売りにしたい」を、自分の言葉で言えたとき、これは強くないですか?
飲食店経営に限らないことだと思いますが、自分の頭の中でぱっと思いついてこれだ!と進めていって得られた実績は不動です。

「エンターテインも楽しめる店に」人生のターニングポイント となった2ヶ月の研修で見つけた自分の型

新川
若い頃、自分の少ない給料から「いい店とは、どういうところだろう」と思って、色々食べ歩きをしました。手取り15万円のころに1人3万円の料理を食べに行ったり(笑)。そのとき受けた自分の感覚、不満も興奮も自分の中にストックしておきました。またタブローズの立ち上げの前に、西海岸に2ヶ月間の研修に行ったことも大きかったですね。向こうでは欧風の料理屋をやっていてもハリウッドですから、常連が行くと「Hi, George, how are you?」とか言って、いきなり肩を揉み出すし(笑)。そこで感じたのは、「高級でも、もっとフレンドリーな店にしてよいのではないか」ということです。

神原
店員とお客様のコミュニケーションの仕方が、日本とは大きく違ったんですね。

新川
白髪のおじさんが、25歳くらいのウエイターにハイ・タッチしたり・・・。ほんとうにカルチャーショックでした。純粋に「いいな、これ!」と感じて、ストンと胸に落ちました。この2ヶ月間が、僕の人生のターニングポイントでした。それで僕の店でも、「構えずにやろう」「知っているお客様がいたら挨拶しよう」「この間召し上がっていただいたものの感想を聞こう。」「エンターテインしよう」というやり方に舵を取りました。
神原
エンターテインメント・レストランにしようと。

新川
そのとおりです。食事に来るけれども、エンターテインも楽しむ。ショーを観に来るというのと同じ感覚です。

神原
お店のスタッフが自分を知っていてくれて、コミュニケーションが楽しいと、またそこに行ってみたいという気持ちにもなりますね。
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