2017年12月7日 更新

「つまり、勝つ為にお前に声をかけにきたんだ」第7章[第14話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

 そこから、大谷はまくしたてるように、このビジネスに懸ける思いと勝算、そして僕を選んだ理由を並べたてた。このあたりもアメリカ仕込みなのだろう。褒められて悪い気がする人間はいない。
 そして、最後にこうつけ加えた。
「つまりは、勝つ為にお前に声をかけにきたんだ」
「それは銀行員である僕という意味なのか……、それとも……」
 大谷はもったいぶって、十分に時間をあけて答えた。
「もちろん、努力家のビジネスパートナーであるお前という意味さ」
「わかった。大谷が思いつきでやろうとしていないこともわかった。それにお前が何かやるなら、きっと成功するだろう。お前はそういう星の下に生まれてる気がする。だが、このことは一旦考えさせてくれ」
     *
 老人は複雑な表情で僕の話をずっと聞いていた。
 この老人が、この時の僕を見たら、なんと言っただろう。
 この大谷という口のうまい男の話に乗ろうとしている僕を止めただろうか?
 それは誰にもわからない。ただ、この時の僕はようやくチャンスが巡ってきたという気持ちだった。
 それは、銀行で退屈な仕事をしながらずっと待っていたチャンスだった。
「ところで、エースケ。俺が一度だけお前にテストで負けそうになった時のこと覚えているか?」
「ああ、覚えてるよ。二年の秋だった。お前は、バスケ部の練習で夏休みは、ほぼつぶれていたからな。こっちとしてはお前に勝つチャンスだった」
「そうだったな。俺もほとんど準備してなかったから、負けるかもしれないと思っていたよ」
「でも、お前は僕に勝った」
「ははは、もう時効だから正直に言うけど、あの時、純粋な実力だったら、お前の勝ちだったよ」
「ん? どういうことだ? ……カンニングか?」
「ははは。そういうことさ。要領の良さは昔からさ」
 それを聞いても僕は不思議と腹はたたなかった。むしろ、そんなパートナーに対して、僕にはない逞しさを感じて頼もしく感じた。
 僕の心は半分決まっていた。
(毎週金曜、14時更新)
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泉 正人 泉 正人
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