海の向こうの原油高
インフレが近づくかもしれない2つ目の要因は、海の向こうの原油高、OPECと非OPECによる減産合意です。11月30日の会合で、現在の原油の減産を2018年末まで延長することが合意されました。その結果、2017年9月には1バレル当たり40米ドル後半だった国際原油価格は、12月時点で55〜60ドルまで上昇しています。
さて、今回の合意で注目すべきポイントは、産油国の思惑が一致したことによる延長合意だということです。今までは、OPECの各加盟国は好き勝手にやっているというイメージがありましたが、今回はどうやら違いそうです。対立中の、サウジアラビアとイラン、政治的な思惑で動くロシアが一枚岩になったように思えます。
では、なぜ一枚岩になったのか。それは、原油高にしたいという思惑です。原産国の財政が原油安により圧迫され、もうこれ以上原油安を容認できなくなっています。特に、サウジアラビアは、歳入の70%を原油の売却で得ていまするため、どうしても原油価格を高く維持したいという思惑があり、これは多かれ少なかれ原産国の一致した思惑でした。
この会合の決定は、米国の物価にも影響を与えそうです。米国は、シェールオイルの生産が増えてきているとはいえ、まだまだ石油輸入国です。つまり、今回の原油高は、米国の物価上昇につながります。米国ではインフレ防止策として金利を高く誘導するでしょう。
このような原油高が日本に与える影響は2つあります。1つ目は、原油高による日本国内でのガソリン高、石油製品の高騰などによるインフレ。2つ目は、米国のインフレ防止策によるドル高、それによる日本の輸入物価の上昇です。
このような「海の向こうの出来事」で、日本はインフレになる可能性を秘めていることがわかりました。2018年は、世界経済の変調を感じる1年になりそうです。みなさんも、来年は今までと違う心づもりで迎えてみてはいかがでしょうか。
値上げから読み解く景気。日本の景気は回復しているの、してないの?

メディア記事だけを見ていると日本の景気は回復しているようです。GDPの7期連続プラス、日経平均16連騰とか。でも表面の数字だけ見て判断していると将来の見通しを誤ります。常に本質を考えるようにしましょう。
この記事に興味がある人におすすめ
渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/