流される力(13)教えてもらえる人間になる

自分の「我」や「未熟なこだわり」を捨て、結果を出している人のアドバイスを素直に聞いてそのまま行動する、これが「流される力」=信託思考です。より多くの人に流されることで、速く成長し、人生の成功を手にできます。泉正人著「流される力」より抜粋。

2018.12.19
思考信託できる人を見つけられたとしても、その人があなたのためになにも力を貸してくれなければ、流されることはできません。情報などを教えてもらうためには、自分自身が「教えてもらえる人間」になる必要があります。
熟した実は多くとも、それをもぎ取る人間が少なすぎる。
教えを受ける者は多いが、
教えを施する者はあまりにも少ない。 サミュエル・スマイルズ著『自助論』より

自分の考えや常識は取り払おう

前回は思考信託をする相手であるトラスティについてお話ししました。
しかし、せっかく自分の目標とするトラスティが日の前にいたとしても、アドバイスをしていただけなかったり、声をかけていただけなければ、「流される」ことはできません。

思考信託は、こちらから一方的に「教えてください」という関係ではなく、トラスティが「この人に教えたい」と思える「自分」にならなければ成立しない関係です。

この回では、トラスティから見て、「教えたくなる人間」になるために、なにをすればよいかをお伝えしていきたいと思います。

「我」を出すと遠まわりの人生が待っている

学生のときは、先生や塾の講師の指導を素直に聞くものですが、社会に出た瞬間に経験や学歴などが邪魔をして「自分はある程度できあがっている」と勘違いし、人の言うことを素直に聞けなくなってしまう傾向があるように思います。
なぜか日本では、自分の考えをしっかりもっていることを美徳、かつ大人の人間として評価することが多いようです。
僕には「自分の考えが絶対だ」という刷り込みが日に日に積み重なることによって、頑固な人間をつくり出しているように思えてなりません。
「世の中はこうだが、自分は違う」
「先輩の言うことはおかしい」
美容院で働いていたころの僕も、このように反抗し、それをカッコいいと思っていましたが、あとになって振り返ってみると、意味のないことだと気づきました。
実際に成功者の中には頑固な人もいますが、最初からいま現在の考えをもっていたわけではなく、成長過程では他人の行動に流されていることが多いものです。
たとえば、大リーグで活躍するイチロー選手も、昔からいまのスタイルが完成されていたわけではなく、あの域に至るまでに監督やコーチなどの指導を仰いだり、ほかの選手から学んできています。
先ほど触れた女子マラソンの高橋尚子選手も、恩師である小出義雄監督の指導を受ける前までは、目覚ましい成績を残している選手ではありませんでした。小出監督の指導を全面的に聞き入れることで、めきめきと頭角をあらわしたのです。
繰り返しになりますが、

成長過程では自分の「我」は捨てたほうが賢明です。

教える立場になってみると理解できるのですが、自分が教えても教えたことをやらず、「我」にしがみついている人には、教えたいという気持ちがなくなってしまうものです。
心理学には「好意の返報性」という言葉があります。
人は他人から肯定的な態度をとられたり、評価されたりすると、その人に対して好意をもって接するという心理傾向のことです。
反対に、否定的な態度をとられたり、評価されなかったりすると、好意が増すことはありません。
つまり、「教えても実行しない」という否定的態度をとられると、人はそれ以上教えようという気持ちが失せてしまうのです。

自分より能力や実績のある人に聞いてしまおう

自分が経験したいと思っていることや、壁にぶつかっていることのほとんどは、世の中のだれかが経験していることです。
エベレストに登りたいならエベレストに登った人に聞くのがいちばんですし、起業して独立したいのであれば事業を成長させている人に聞くのが確実で、いち早く目的地に到着できると思います。
また、自分では「仕事ができる」と思っていても、「ビジネスの世界」という大きな視点で見てみると、数兆円以上のビジネスをつくっている経営者や、何億円もの収入があるビジネスパーソンはたくさんいます。
自分がすぐれているという感情は一度横に置き、

「自分より能力のある人は必ずいる」

と考え、クリアな状態でものごとを考えるように僕は意識しています。
必死に自分の頭で考えて無駄な「我」を出すよりは、自分より実績を出していて経験のある人や得意な人から聞いてしまったほうが、成果も早く出ますし、気持ち的にもすっきりします。

自分の能力がたりていないことを認めてしまったほうが、早く、楽に成長できる

のではないでしょうか。
「我」を出すことを否定するつもりはないのですが、結局は遠まわりになってしまうことが多いと思います。
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