流される力(11)思考をまねすれば 結果も変わる

流される力
自分の「我」や「未熟なこだわり」を捨て、結果を出している人のアドバイスを素直に聞いてそのまま行動する、これが「流される力」=信託思考です。より多くの人に流されることで、速く成長し、人生の成功を手にできます。泉正人著「流される力」より抜粋。
2018.11.22

思考をまねすれば 結果も変わる

自分にふさわしいトラスティを見つけたら、その人の表面的な「行動」ではなく、その人の「思考」までをも信じて、まねすることが必要です。
誤解のないように、ここでひとつ断っておきたいのですが、まねをすること自体はけっして悪いことではありませんし、卑怯なことではないと、僕は考えています。
トリンプ・インターナショナル・ジャパンの元社長で、19年連続の増収増益を達成した吉越浩一郎さんは、著書『「残業ゼロ」の仕事力』(日本能率協会マネジメントセンター)のなかで、TTP (=徹底的にパクる)という概念を紹介されています。
この概念は、世の中に完全にオリジナルなものなどないのだから、会社の業績を上げるため、結果を出すためであれば、良いシステムや考え方をどんどんまねすべきだという信条にもとづいたものです。
そして、同書の中で、TTPはまねする相手の「暗黙知」を盗むことにもつながると述べています。
「実戦で勝負を分けるのは、本人にもきちんとわかっていない、言葉にできない暗黙知をどれだけ持っているかなのです。暗黙知は誰も教えてはくれないので、手に入れたければ盗むよりほかないのです」
吉越さんがおっしゃるとおり、

自分にとって有益な考え方やしくみなどを見つけたら、それをまねすることが結果や成果を出す近道になる

と思います。
また、クリス・アンダーソン著『フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)の中には、このような記述があります。
「儒教では、他人の作品をまねることは敬意の表明であり、教育の基本になるという知的財産に対する考え方がある」
中国では、師のまねをすることは、学びの中核を占める大切なノウハウなのです。

行動の裏にある思考を見極める

ただし、思考信託では、「行動」ではなく、その人の「思考」までをも信じて、ますることが必要です。
繰り返しになりますが、「結果」は「行動」の積み重ね、その「行動」は「思考」の積み重ねです。
つまり、人の行動の裏には、必ず思考があります。
だから、単純に行動をまね(コピー)しても、表面的なことしかわかりません。行動のまねを積み重ねても表面的な切り貼りだけになってしまいます。
行動の本質を考えて、思考の部分からまねしなければならないと、僕はつねに心がけています。
その際、「どのような思考がベースになり、この人は、こんなことをやっているのだろう?」と相手の立場になって考えてみると、相手の思考になることができます。
たとえば、先のワインの例でいえば、「本田さんは、なぜワインを飲むという行動をしているのだろうか?」と相手の立場になって考えてみると、「ワインは世界共通の文化で、人との関係をなごやかにする力のあるもの」ということがわかってきます。
さらに、ワインしか知らない人が「ワインが良い」と言っても、あまり説得力がありません。本田さんのようにワイン以外のお酒の楽しみ方も知っている人が、その中で「もっともワインが良い」と思っているのであれば、その思考はまねをする価値が一局いと考えることができます。
このような行動の裏にある思考を理解してまねをしなければ、単にワインを飲むだけの行動で終わってしまうでしょう。
また、もしも星さんに「良い物件を見つけたのですが買いますか?」と聞かれたら、
「いろいろ見てきた物件の中でも、これが僕に合う物件だからだろう」と考えることができます。
星さんは、けっして見つけた物件の中から悪いものを教えたりするわけではありません。星さん自身が購入するに値すると見定めた物件を、自分の条件に合わないという理由(少額すぎる、土地勘のないエリアなど)で僕に譲ってくれることがほとんどなのです。
それほどまでに僕を信頼し、親身になってアドバイスをしてくれます。
このような星さんの言葉の裏にある思考まで考えてまねするからこそ、星さんを信じて、その物件を買う方向で検討することができるのです。

結果を変えたいなら思考から変える

もし「結果を変えたい」と思えば、行動を変えるしかありません。行動を変えるには思考を変えるしかありません。

トラスティの思考をまねすれば、その人の思考で行動ができます。その人の思考で 行動すれば結果が出ます。

これは当然のことですが、思考信託の本質といっても過言ではありません。僕自身が何度も身をもって体験したことでもあります。
思考信託をすること自体はお金がかかるものではありませんから、結果を変えたいのであれば、思考をまねない理由がありません。
うまくいっている人の思考ができあがるまでには、数年、あるいは何十年という長い年月がかかっているに違いありません。
僕もトラスティに流されることによって何度も経験してきたのですが、

思考信託をすれば、その熟成された思考を回り道することなく学ぶことができる

のです。

泉 正人

ファイナンシャルアカデミーグループ代表、一般社団法人金融学習協会理事長

日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。

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