2018.11.9
世界の大学ランキングで常にトップクラスのスタンフォード大学ですが、実は本国アメリカでは学術だけでなく有名アスリートが数多く在籍する「スポーツの大学」でもあるのです。しかも、リオ五輪でメダルを獲得したアメリカ代表選手のうち、じつに22%がスタンフォード大学の学生だったのです。そんな一流選手のパフォーマンスを高めるために作られた注目の疲労回復メソッドが本書のテーマ。
筆者はスタンフォード大学スポーツ医局でアスレチックトレーナーを務める日本人の田中和生氏。興味深い最新研究データの提示もさることながら、私たち日本人の職場環境やライフスタイルを熟知しているからこそできる実践的なアドバイスをしてくれています。内心「この本、そりゃ流行るはずだ」と思いつつ、一部ではありますがその中身に迫りましょう。
睡眠不足は脳震盪と同じ?スタンフォード大学が明かす「疲れ」の正体
アスリートのパフォーマンス低下の原因を研究し続けてきたスタンフォード大学の最新の見解によると、疲労とは「筋肉と神経の使いすぎや不具合によって体の機能に障害が発生している」状態のこと。そして注目すべきは筋肉だけでなく「神経のコンディション」だと言います。
神経とは、脈拍や呼吸、消化をコントロールする「自律神経」。そして手足をはじめ身体の動作をコントロールする「中枢神経」の2つからなりますが、その司令塔は「脳」。大学では、睡眠不足のアスリートの脳の機能を測定したところ、なんと脳震盪を起こしてしまったアメフト選手と酷似したデータが得られたそう。どれだけ神経への影響がパフォーマンスを左右するのかをうかがい知ることができました。
さらに、その神経のバランスを乱す大きな原因が『体の歪み』。これを整えることがスタンフォード式『疲れない体』を手に入れる神髄です。
「疲れ」を客観的に知る4つの方法!
本書最大のテーマに迫る前に、数値化するのが難しくMRIなどでも判別することができない「疲れ」を客観的に知る方法をご紹介。もちろん「疲れた」という実感は大切にするとして、疲労を知るための4つの条件があるのだそうです。それは…
①「脈」がいつもと違う
安静時、1分間に自分の脈が何回打っているかの「ベースライン」を知っておくことで疲労を感知できます。運動後に脈が速くなるのは当たり前ですが、なかなか脈が落ち着かない時や、安静時にもかかわらず脈拍が早い時には疲れているのかもしれません。
安静時、1分間に自分の脈が何回打っているかの「ベースライン」を知っておくことで疲労を感知できます。運動後に脈が速くなるのは当たり前ですが、なかなか脈が落ち着かない時や、安静時にもかかわらず脈拍が早い時には疲れているのかもしれません。
②「いろいろな時間」に寝ている
睡眠時間が足りないのはもちろん、不規則な場合にも副交感神経の働きが悪くなります。もっとも、睡眠不足は倦怠感などを感じやすいので分かりやすいかもしれませんね。
睡眠時間が足りないのはもちろん、不規則な場合にも副交感神経の働きが悪くなります。もっとも、睡眠不足は倦怠感などを感じやすいので分かりやすいかもしれませんね。
③「腰」が痛い
脳は常に体のバランスを取ろうとするため、例えば猫背で肩が前に出ていたりすると腰を後ろに反らせてつじつまを合わせようとするのだそうです。その結果、全身のバランスが崩れて疲労が蓄積しやすい身体に。
脳は常に体のバランスを取ろうとするため、例えば猫背で肩が前に出ていたりすると腰を後ろに反らせてつじつまを合わせようとするのだそうです。その結果、全身のバランスが崩れて疲労が蓄積しやすい身体に。
④「呼吸する場所」を間違えている
胸だけで浅く呼吸している人は、脳に酸素が行きわたらない。さらに体幹の筋肉を使えていないので姿勢が崩れて「疲れやすい体」が定着している。
胸だけで浅く呼吸している人は、脳に酸素が行きわたらない。さらに体幹の筋肉を使えていないので姿勢が崩れて「疲れやすい体」が定着している。
さて、4つの条件を挙げましたが一番気になったのは④ではないでしょうか。胸で浅く呼吸している?呼吸の仕方が「疲労しやすい体」を作っている?いろいろと初耳でしたが、それもそのはず。実はこの呼吸の仕方こそ先ほど述べた「体の歪み」を無くし、「疲れない体」を手に入れるためにスタンフォード大学が導き出した秘策なのです。
スタンフォード式「疲れない体」を手に入れる呼吸法!
本書の大部分を割いて紹介しているのがこの呼吸法について。シンプルに説明すると、息を吸うときも吐くときも“お腹を膨らませて固くする”呼吸の仕方なのですが、お腹の内圧を高めるという意味の英語の頭文字をとって『IAP呼吸法』とも呼ばれます。
ちなみに、身体に良い呼吸法と言えばすぐに「腹式呼吸」がイメージされますが、実は息を吐くときにお腹をへこませる「腹式呼吸」と『IAP呼吸法』は真逆!(スタンフォードでは「腹式呼吸」を推奨したことは一度もないのだそうです。)
そして、『IAP呼吸法』の仕方ですが…
・まず、お腹をパンパンに膨らませながら5秒かけて大きく息を吸う。この時、肩を上げないように意識する。
・そして、お腹を膨らませたまま5~7秒かけてゆっくり息を吐く。
・まず、お腹をパンパンに膨らませながら5秒かけて大きく息を吸う。この時、肩を上げないように意識する。
・そして、お腹を膨らませたまま5~7秒かけてゆっくり息を吐く。
図解でお伝え出来ないので分かりにくいかもしれませんが、やってみると非常に簡単。しかしその反面、気を抜いたらすぐに普段の呼吸法に戻ってしまいます。田中氏は椅子に座って行う簡単な呼吸トレーニングを1日少しずつ行うことを推奨しているので参考にしてみて下さい。
スタンフォード式呼吸法のメリットとは?
先に方法を紹介しましたが、この『IAP呼吸法』の仕組みは、呼吸によりお腹の内側から圧力がかかることで、お腹の外側の筋肉も鍛えられて体の中心「体幹」が安定。姿勢が整うのです。
そのメリットは計り知れず、中枢神経と体の連携がスムーズになるため無駄な動きが無くなり、運動のパフォーマンスが上がるうえに疲れやケガを予防できる。この呼吸法を導入したところ記録が劇的に向上したアスリートは数知れないのだそうです。
人間は1日3万回の呼吸をしていると言いますが、『IAP呼吸法』そのものが体幹を鍛える行為につながるのでその効果は抜群なのかもしれません。
本書では、呼吸法の他にも「肩こり」や「入浴法」など疲労回復のテクニックがたくさん紹介されています。どれも説得力抜群のデータ付きで紹介されており、早速私も実践したいと思いました。
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