2019年3月6日 更新

【ビジネス戦略】「ニーズ後追い」は邪道でなく重要な方法

ビジネスではよくニーズを「発掘せよ」「自ら創り出せ」「先取りしてチャンスをつかめ」と言われますが、あえてニーズを後追いするのも戦略の一つです。創造や仕掛けが必要ない分、ムダを省きコストも安くすみます。撤退もしやすくなります。決して「恥ずかしい邪道」ではありません。

どこかの企業の経営者が「わが社もユニクロのようになりたい」と思っても、道は非常に険しいでしょう。「フリース」や「ヒートテック」のヒットの陰では、大小の失敗が繰り返され、試行錯誤の連続に多大な経営資源が費やされ、おびただしいムダが発生していました。もし当たらなければ、ダメージは大きいです。常識を変えるようなニーズ創造型企業になるには、それなりの覚悟が必要です。
では「わが社もハニーズのようになりたい」ではどうでしょう? ユニクロと比べると成功へのハードルは低くなりそうです。
創造や仕掛けでの試行錯誤を避けて「他社で当たっているもの」を選んでそれに似た商品を出せば「狙いを外して失敗するリスク」は小さくなります。他社の商品に見劣りしない品質で、しかも価格が多少安ければ、流行やニーズを後から追いかけるタイプの消費者の心をつかむことができます。ハニーズのようにロットを小さくしてサッと退き、売場に置く期間を短くすれば、在庫のリスクも小さくできます。経営資源の投入はより小さく、ムダはより小さく、そして利益はより多く。つまりコストパフォーマンスが良くなります。
ニーズ後追い型企業には「あれ、流行っているから私も買おう」というニーズ後追い型のお客さんが集まるので、次第に顧客基盤が厚くなって経営が安定していきます。そのニーズ後追い型のお客さんの数は、非常に個性的なニーズ創造型や、感度の高いニーズ先取り型のお客さんの数倍、数十倍存在します。
もちろんニーズ後追い型企業にも、同じことを考えている似たもの同士で競争が激化して利益が確保できなくなる「レッドオーシャン化」のリスクはあります。そこはうまく撤退できるか、時間との勝負になるでしょう。
あなたはニーズ創造型、ニーズ発掘型は「立派な王道」で、ニーズ後追い型は「恥ずかしい邪道」だと思っていませんか? ビジネスをイメージだけで語るのは禁物です。そこには戦略の違いはあっても貴賤はありません。後追いも後追いなりに、創意工夫によって成功を収められる可能性は、大いにあります。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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