貯まったら貯めておけ! 住宅ローンの繰り上げ返済は無駄でしかない

お金がもっと欲しいと思って取った行動が、実は、お金を遠ざける結果になっているかもしれません。NG行動に気づき、 “発想”を少し切り替えることで「お金持ち体質」が手に入ります。泉正人の最新刊『お父さんの「こづかい」は減らすな』より特別編集編をお届けします。

2018.6.28

貯まった100万円の使い道は?

もし、貯金が100万円貯まったとしたら、みなさんはどうしますか? この低金利時代に、まとまったお金を銀行に預けておくだけではもったいない、うまく活用したいと誰もが考えていることかと思います。
何かと話題の株や投資信託で資金を運用するのは、リスクもあるし勉強するほど興味はない。かといって、比較的金利の高いネット銀行の定期預金に預けるとしても0.2%程度の金利で年間2000円しか増えないのでは、あまり意味がなさそうです。住宅ローンを組んでマイホームを購入している方であれば、「繰り上げ返済するべき」というのをよく耳にするかと思います。なにしろ住宅ローンは借金の額が大きく、少しでも減らせれば精神的な負担が減りますし、金利1.5%のローンであればただ預金しておくよりお得と言えます。

貯金こそ保険。100万円のお守りです。

繰り上げ返済には返済期間を短縮する「期間短縮型」と毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」があり、いずれもトータルの返済額を減らすことができます。100万円期間35年、3500万円の住宅ローンで100万円を「期間短縮型」返済でシミュレーションしてみると、総返済額が56万円減る計算になり、メリットがあるように見えます。
しかし、借金を早く減らしたい、月々の利息がもったいないという理由だけで、手元の信金である100万円をすべて使ってしまうことこそ、大きなリスクになると考えるべきです。
なぜなら、「貯金は保険になる」、からです。せっかく貯めた100万円を活用しないことがいまはもったいなく思うかもしれませんが、いつ何が起こるかはわかりません。突然、怪我やリストラ、冠婚葬祭イベントなど想定外の事情で、まとまったお金が必要になる可能性はゼロではありません。
保険では対応できないリストラなどの想定外のことで、もし必要な100万円のお金がなかったらそうなるでしょうか。当面の生活費で別の高金利なローンを組む必要に迫られるかもしれません。住宅ローン金利の10倍以上の金利がかかったら、本末転倒です。
また、わたしたちは不測の事態を回避するために、医療保険や傷害保険に入りますが、そもそもある程度の現金があれば、その保険は必要なく、毎月数万円もの保険料を減らすことができるのです。手元に100万円のお守りがあると考えて、ムダな保険料を払っていないか見直してみることこそ、よりよいお金の運用法ではないでしょうか。

超低金利の住宅ローンは投資と考えて借りておく

金額が大きいので住宅ローンを思い借金ととらえがちですが、住宅ローンで借りるお金は、そのほかの目的で借りるローンよりも特に低い金利で借りられるものです。
企業であれば、金利の低いときに借りられるだけ借りて、そのお金を設備投資や人材投資に回し、数年後に会社を成長させ利益を上げていきます。年間100万円の利息を払ったとしても、1億円を借りることがメリットと判断するのです。個人であっても、その判断は同じです。住宅ローンが超低金利という現状では、貯まったお金で繰り上げ返済するよりも、何かあった時のために、手元に残しておくのが正解。またそのお金を自分や家族の勉強資金に投資するのが有効です。
資格を取って収入アップを図りたい、株式投資や不動産投資を始めたい、独立して会社を作りたい、子供に難関校を受験させるために塾に行かせたい、といったことをしようと思ったら、すべてお金がかかります。
お金が貯まるまで待っていたら機会損失になるし、借金すれば利息が発生します。しかし、100万円というまとまったお金が手元にあれば選択肢が増えるのです。繰り上げ返済は、今後もし金利が大幅に上がって、毎月の金利負担が自分への投資リターンを上回るようになった時にすればいいのです。
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