Twitterの偽アカウント一斉削除から考える情報汚染の問題

偽アカウントの一斉削除がTwitterやFacebookで行われました。その数は、合計7億件にものぼると言われます。偽アカウントとは何か、情報汚染とはなにか、偽アカウントによって生じる情報汚染にはどのようなものがあるのかを掘り下げます。

2018.9.10

TwitterとFacebookの偽アカウント一斉削除

2018年、TwitterとFacebookが偽アカウントを一斉削除しました。ツイッター社は7月上旬に数千万のアカウントを凍結、Facebookも1月から3月にかけて5億8300万件のアカウントを無効にしたのです。この2社だけで、2018年に入ってからの合計7億件にものぼります。
偽アカウントとは、実在する他人になりすましたアカウントのこと。広義には実在しない誰かをつくりあげたアカウントも含むと考えてよいでしょう。こうした偽アカウントは、ただフォロワーの水増しに使われるだけのものもあれば、誹謗中傷コメントの投稿をしたりリツイートしたりする場合もあります。フェイクニュースを生み出し、拡散する道具にもなり得るということです。
ツイッター社はこうしたアカウント削除を行うことで情報の正確性と透明性を上げ、信頼性を高めるとしています。

偽アカウントと「いいね!」が生み出す情報汚染

高田明典氏は著書『情報汚染の時代』で、インターネットにあるブログやTwitter、Facebookなどの投稿は、「見てもらうために」「褒めてもらうために」「ウケるために」「いいね!」を押してもらうために」 加工されている場合が多いと指摘。私たちにも身の覚えのあることではないでしょうか。
このいいねやフォロワーの数は、インターネット上での影響力と見なされています。ところが、もし偽アカウントがリツイートやいいね、フォロワー数を量産していたとしたら、商品の評価や人物の注目度には、人々の純粋な感想や興味以外の思惑が多分に働くことになってしまいます。これが、消費者の理解を歪ませる情報汚染の始まりです。
実際に起こってしまった深刻な情報汚染は、たとえば2016年のアメリカ大統領選挙。ロシアで自動ツイートを行う偽アカウントのネットワークが構築され、それらのアカウントが政治的なフェイクニュースを大量に拡散して有権者たちの判断に影響を与えたと言われています。また、2018年7月にはインドで拡散されたフェイクニュースによって10件近くの暴動が起き、複数の死者が出ました。

無自覚な情報汚染も軽視できない

残念なことに、日本人向け偽アカウント販売サイトが複数存在します。運営者は、ツイッター社の規約を知らないのかもしれないし、無視しているのかもしれません。また、偽アカウントの量産で情報汚染をしていることに無自覚なのかもしれません。自分でアカウントを大量作成して自分の投稿に大量のいいねをつける人々も同様に、そうした行為を情報汚染とは考えず、マーケティング戦略のひとつであるとさえ言うかもしれません。
現代はインターネットで簡単に情報を得られるようになったと言われます。しかし、実際には汚染された情報が氾濫し、現実の認識や判断が歪められてしまう時代になったという方が良いかもしれません。
情報汚染による悲劇を避けるには、情報を受信する側が汚染度を判断する目を養わなければなりません。また、情報を発信する側も、自分が情報を汚染していないかどうか慎重であるべきです。それには、高田氏の提示する以下の観点が役立つでしょう。
1. 自分が欲していない状況でもたらされた情報か否か
2. 利害関係にある当事者や関係者が発信している情報か否か
3. 権威性の低いところからの情報か否か
4. 最近登場した発信者からの情報か否か
5. 閉鎖的な集団からの情報か否か
上記に該当すれば、それは情報汚染されている可能性が高くなります。発信者は、自分が情報の受け手だと想定してみると良いでしょう。
Anshi

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