2017年12月7日 更新

「やったことがないこと」へのチャレンジを繰り返せば、お金を超える価値がたまっていく(植松 努)

「お金とは、体の中に蓄積されているマンパワー。(植松 努)」

 (1930)

2017.6.1

「安定してラクができる=いい会社」の時代は終わった

これからのお金との付き合い方を考えるうえでは、僕たちが今生きている社会の変化についてきちんととらえなければいけないと思います。

大人が子どもに対して言う教えとして、「ちゃんと勉強しないと、いい学校に行けないし、いい会社に入れないよ」という言葉はよく聞かれます。子どもの頃、僕はその意味を知りたくて、大人たちに「いい会社とは何ですか?」と質問しました。返ってくるのはだいたい「安定していて、ラクをしてお金をもらえるのがいい会社だ」という答えでした。

これは本当でしょうか?

僕が暮らしている北海道の赤平町という町は昔、石炭を掘る産業で栄えました。でも、石炭を掘って売る産業自体が衰退し、6万人いた人口は1万1000人にまで減りました。みんな、「仕事がない」と嘆くけれど、嘆いてもしょうがないと、何もない原っぱに工場を建てたのが17年前のことです。

この間、リーマンショックや東日本大震災などいくつものピンチがあり、なんとか乗り越えてやってきましたが、これからはもっと大変な事態になると考えています。日本人の誰もが経験してこなかった大きな変化――人口の急激な減少です。日本の人口は明治維新以降急速に伸びてきましたが、2004年末をピークにして今度はとんでもない勢いで減少しています。人口増加の時代には当たり前だった常識がまったく通じなくなる新しい時代をすでに迎えているわけです。

人口増加時代には、何もしなくてもどんどんマーケットが拡大するわけですから、自分の能力以上に給料が増える時代でした。ただ同じことを繰り返すだけでも仕事はいくらでも増え、のれん分けもたくさんあり得た。つまり、今までの「安定」とは、単に人口増加の副産物に過ぎなかったということに気づかなければいけません。マーケットが縮小する時代には、現状維持をするのにも並々ならぬ努力が必要です。これからは努力が輝く時代になると僕は思っています。

さらに言えば、「安定していて、ラクをしてお金をもらえるのがいい会社に入るために勉強しなさい」というのは、矛盾していると子どもながらに感じていました。勉強は能力を高めるために頑張るはずのものなのに、大人になってそれを使わない=ラクをする方がいいというのはおかしいじゃないかと。

「お金さえあれば何でも手に入る」はウソである

 (1931)

大人になった僕はもう知っています。「ラク」と「楽しい」は同じ字を書くけれど真逆のことだということを。ラクをすると努力をしなくなって無能になります。すると、誰からも必要がられなくなって人生がつまらなくなる。だからこそ、本気で「楽しい」を探求しなければいけないのです。

そもそも「お金をたくさん稼ぐ」ことは幸せな人生のためにどれほど重要なことなのでしょうか? たしかに、カッコよくて素敵なものには高価なものが多く、例えば高級スーパーカーのランボルギーニは7000万円くらいします。これを手に入れるには何が必要か。お金さえあれば手に入るでしょうか? 違います。ランボルギーニを作ってくれている人がいるから手に入るのです。世の中にあるどんなに素敵なもの、高価なものにも必ず、それをその手で「作っている人」という存在があります。

僕は父親が車の部品を修理する仕事をしていましたし、家の近くには板金屋さんなどものづくりを目の前で見せてくれる大人たちがたくさんいました。今のように工事現場が覆われることはあまりなく、どんな立派な建物も、イチから人が作っていく様を見てきました。だから、僕たちはものに対してお金を払っているのではなく、自分の代わりにそれを作ってくれた人に対してお金を払っているのだという感覚が染みついています。

そして、同時にこう思うのです。誰かにできることならば、自分にもできるのではないか? 同じ人間なのだから。それに気づけば、お金よりも能力のほうが欲しくなるんですね。

使えば使うほどふえていく「能力」こそ投資すべき価値

お金は一度使えばなくなるけれど、能力は何度でも使えるし、使うたびに増えていく。僕は、お金とは、体の中に蓄積されているマンパワーだと思っています。能力を高めるほどふえていく。もしかしたら仕事になってお金を生み出すものになる可能性もあるかもしれない。だから、自分自身に投資するのが最も効率がいい。

戦後の焼け野原から、大量にものを作り出し、日本の隅々にまで行き届かせなければいけなかった時代には、「言われたとおりに正確に仕事をこなす人」が重宝されました。それが、時代の要請でした。でも、素直さや従順さにおいては人間よりもロボットが勝ります。「言うことさえ聞いていればお金をもらえる」という時代はもう終わりです。これまでできなかった能力を磨いて、人から喜ばれる価値を生み出す人でなければ、ロボットに取って代わられてしまうでしょう。

僕は宇宙ロケット開発で有名になっていますが、会社の本業はリサイクル業界向けのマグネットの開発・製造・販売です。一貫して大事にしてきたのは「少量でもいいから高く」という姿勢です。価格競争ではなく、他にない付加価値を高めて、その価値に対してお金をいただくというサイクルで製品の品質を高めてきました。結果として、今では狭いマーケットながらシェアほぼ100%を占めるようになりました。お金はもらえるものではなく、生み出すものであると僕は考えています。
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生産性を高めて「時間」を生み出し、「できないこと」に挑戦する

付加価値を高める商品開発を続けていくと、利益率が高まります。すると、大量生産で稼ぐ必要がなくなり、手元に「時間」が生まれます。この時間を使って何をやるかが重要です。すでにできることをやるのでは進化はなく、「できないこと」にチャレンジするのです。時代の変化によってどんな仕事にも寿命があることを強く意識しての、“未来への投資”とも言えるでしょう。

ロケット開発は、世の中から「どうせ無理」という言葉をなくしたいという思いで続けています。「どうせ無理」という言葉がなくなれば、自信や可能性を潰される人が減って、いじめや戦争も減るはずだと信じています。弱い者いじめの究極の形である児童虐待も絶対になくしたい。やめるわけにはいかないのです。だから、ロケットに関しては、どこからもお金はいただかず、自分たちの稼ぎだけでやっています。工場の隣にあった広大な土地を買って、「100年経っても壊れない家」が並ぶ未来の街を作る計画も進行中です。自分のお金で買ったのだから、チャレンジは自由です。
やりたいことをやり続けるための条件は「誰のお金もあてにしないこと」。どんな夢だって、誰かに「させてもらおう」と思っている限りできないし、できたとしても奴隷のようになってしまう。夢があれば、とにかく早く「やってみる」。失敗しても、それを乗り越える経験が積み重ねになって実力になる。
世の中の技術の進歩もものすごくて、5年前に不可能と言われていたことが簡単にできるようになる時代です。誰でもなんでもチャレンジして、ラクではなく楽しい人生を手に入れてほしいと心から願います。そして、僕自身もまだまだたくさんの夢を追いかけていきたいと思っています。
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