お金持ちの国はどこ?日本は台湾にも抜かれランキング外へ転落?

「お金持ちの国」と聞いて、どこを連想しますか。オイルダラーで潤うドバイやカタールでしょうか、それともカジノが盛んなマカオやモナコでしょうか。比較の基準次第で、世界の「お金持ちの国」ランキングは異なります。いずれにせよ、日本は既に「お金持ちの国」とは言い難いのですね。

2019.3.25

日本は「お金持ちの国」ランキング外? アジアの中でも1人負け?

お金持ちの国を考える時にまず参考になるのが、国際通貨基金(IMF)が1年に2度公表している公式データです。その国の購買力平価(PPP)を考慮した1人当たり国内総生産(GDP)が公表されており、上位の国ほど国民生活は豊かである、と基本的に看做すことが可能です。アメリカ(米国)や中国、日本など人口が比較的大きな国であれば、国単位で見た際のGDPは言わずもがな突出します。しかし、国単位のGDPでは国力は測れても、その国民が一般的に豊かなのかは測れません。そこで登場する指標が、PPPを考慮した1人当たりGDPによる切り口なのですね。
2019年3月18日現在のIMFによる最新データでは、1位は13万3000米ドルのカタール、2位は12万7000米ドルのマカオ特別行政区、3位は11万3000米ドルのルクセンブルク、4位は10万2000米ドルのシンガポール、5位は8万6000米ドルのブルネイとなっています。原油・天然ガスなどを豊富に産出する国、カジノ政策に成功した国(地域)、金融センターとして成功した国など、この辺りはお金持ちの国の常連ですね。ベスト5の内、今や3か国がアジアの国なのも興味深いところです。
香港10位、スイス11位、米国12位となっていますが、日本は大きく引き離されて31位です。この切り口では、お金持ちの国ランキングのベスト30にすら日本は既に入れなくなっています。32位には韓国が迫っており、抜き去られるのも時間の問題でしょう。注目すべきは、何と17位に台湾(中華民國)がランクインしていることです。これは18位のドイツや、19位のスウェーデンをも上回ります。アジアのお金持ちの国として、既に台湾は日本を大きくリードしているのですね。

ブランド力がある国は「お金持ちの国」?

少し視点を変えて、ブランド力がある国は一般的にお金持ちの国である、という現状を見てみましょうか。米国ニューヨークに本拠を置くブランド・コンサルティングファーム、フューチャーブランドによる国別ブランド指数(Country Brand Index)によれば、日本は2014〜15年の世界トップであり、アジア諸国の中では断トツの高評価です。この調査は、高頻度で海外旅行をする17か国の旅行者2530名の意見を聴取し、文化、観光、経済、政策、価値観などの切り口から、国としてのブランド評価を実施したものです。トップの日本以下は、2位スイス、3位ドイツ、4位スウェーデン、5位カナダなどとなっています。
ブランド力がある国として上位ランキング入りするアジア諸国は、日本以外では14位のシンガポールです。いずれにせよ、先に触れたPPPを考慮した1人当たりGDPの切り口からも、日本以外はランキング上位のお金持ちの国ばかりになっていますね。国としてのブランド力・ネームバリューの面から見ても、日本人のこれまでの実績・ポテンシャルを考慮しても、PPPを考慮した1人当たりGDPによるお金持ちの国ランキングで、日本がベスト30からすら転落している現状は、明らかに特異な感じがします。

対外純資産で見れば日本は世界トップの「お金持ちの国」?

他方、お金持ちの国がどこかは別の観点からも眺めることができます。政府や企業、個人投資家が海外に保有する資産から負債を差し引いた金額が対外純資産ですが、こちらの切り口では日本は世界トップのお金持ちの国、ということになります。財務省の最新データ(2017年末時点)によれば、日本の対外純資産は328兆4000億円で、何と27年間連続の世界トップです。
ちなみに、2位はドイツの261兆2000億円、3位は中国の204兆8000億円などとなっています。日本円は世界中から安全資産と看做されますが、その最大の理由は、日本が外貨建て資産を世界で最も多く保有する国であるためなのですね。他の上位の国は、先に出たPPPを考慮した1人当たりGDPを切り口にしたランキングで見ても、お金持ちの国が多いです。しかし、日本の場合、世界最大の対外純資産の保有を誇るお金持ちの国でありながら、日本人の生活水準に反映されているとは言い難いのが問題です。
蛇足ながら、米国は対外純資産ワースト1で、マイナス885兆8000億円と世界最大の赤字を抱えます。それにも関わらず、PPPを考慮した1人当たりGDPを切り口とすれば、米国は間違いなくお金持ちの国と言えます。その上、米ドルが国際決済に使われ続けるのは、米ドルが世界の基軸通貨である所以(ゆえん)ですね。
マクロ的視点では、日本が国として既にdeclining(衰退しつつある)のトレンド入りしていることは事実でしょう。それでも、海外在住の私の目から見ても、日本人の生活水準の昨今の下降には大きな違和感を覚えます。日本は国際的な評価や対外純資産の面で圧倒的に優位にも関わらず、不自然に国民生活のレベルが低い国なのです。最早、国民の生活水準からみると、アジア諸国の中ですらお金持ちの国だとは言えなくなってしまいました。日本のメディアは、この事実をキチンと報道されているのでしょうか。
Kenneth S

Kenneth S

総合商社のIT戦略担当からIT系ベンチャー企業の経営補佐などを経て、現在は海外在住の個人投資業。時折、物書きもしている。
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