リーダーシップにおいて最も重要。大きな夢を見る能力を育てることを願い、日常業務における目標を超えたビジョナリーな概念をもつ。それをメンバーに伝えられる。
7) 先見力(Foresight)
リーダーとメンバーにおける信頼の基盤。過去の教訓、目の前の現実から今後のことを見定めようとする。意識的に分析を続け、必要に応じて分析的思考から一歩下がって解決策となる直感的洞察を得ることができる。それが見えたときに、気づき、理解できる。
8) 執事役(Stewardship)
メンバーから、大切なものを任せても信頼できると思われている。職場のチームにおいては、主に権限をもたせても大丈夫だと思われている。
9) 人々の成長に関わる(Commitment to the growth of people)
メンバーをただ労働者として見ることを超えて、存在そのものの内在的価値を認め、彼らの成長を促す。
10) コミュニティづくり(Building community)
同じ制度の中で仕事をする(奉仕する)人たちの間に、コミュニティを創り出す。
「サーバントリーダーのつもり」や「いい兄貴」で終わらないためには
グリーンリーフは、ヘルマン・ヘッセの『東方巡礼(1)』に登場するレーオという人物から「リーダーとしてのサーバント」を着想しました。レーオは旅の一行に「サーバント(召使い)」として同行していましたが、彼こそが旅の要であり、実質的リーダーだったという話です。
しかし、レーオのイメージを拡大解釈して、サーバントリーダーはまさに「召使い」のように雑用をこなす存在だと考えるべきではありません。サーバントリーダーの役割は雑用をこなすことではなく、チームを目標達成に向かって導き、メンバー自身の成長を促すことです。そのために自分の存在について問い、気づき、メンバーが理解しやすいビジョンを伝え、先見性をもって道筋を描かなければならないのです。
リーダーシップに不可欠な概念化の能力と先見性をもって信頼を得、メンバーに道を示すからこそ、サーバントリーダーはリーダーたり得る ――それらの欠けたリーダーは「導いているのではなく、目の前の出来事に反応しているだけで、リーダーとしては長続きしない」とグリーンリーフもはっきり指摘しています。
「メンバーの要望に耳を傾ける」「メンバーそれぞれの価値観を尊重する」「メンバーの悩みに共感する」といった項目は理解しやすいし、翌日から実践できそうなことでもあります。しかし、これらを実践しただけでは「サーバントリーダーのつもり」止まり。常にリーダーとしての自分の存在意義を自ら問い、自分自身もリーダーとして成長していく姿勢をもつこと、概念化の能力や先見性を養うことが、「つもり」を抜け出し、「いい兄貴」で終わらないためには必要なのです。