「君は、私のことをどうやら信じないようだね」
「そりゃ、そうですよ。突然誰かもわからない人が、なぜ僕を助けるんですか? 信じろ、 という方が無理な話です」
「私が現金三〇〇〇万円の入ったスーツケースを持っていたら、信じるかい?」
「……すいません。気を悪くされたのなら謝ります。でも、だって、そんな話……」
「たとえば、今の君に現金三〇〇〇万円を渡したとしよう。それを君はどう使う? きっと借金返済に使うだろう。だけど、その後も人生は続く……。そして、また同じ失敗を繰り返すんだ。お金に翻弄される多くの人間が辿る道だ」
「そんなことはないです! きっと、もう一度チャンスがあれば……」
「チャンスがあれば、なんだね?」
「そりゃ、そうですよ。突然誰かもわからない人が、なぜ僕を助けるんですか? 信じろ、 という方が無理な話です」
「私が現金三〇〇〇万円の入ったスーツケースを持っていたら、信じるかい?」
「……すいません。気を悪くされたのなら謝ります。でも、だって、そんな話……」
「たとえば、今の君に現金三〇〇〇万円を渡したとしよう。それを君はどう使う? きっと借金返済に使うだろう。だけど、その後も人生は続く……。そして、また同じ失敗を繰り返すんだ。お金に翻弄される多くの人間が辿る道だ」
「そんなことはないです! きっと、もう一度チャンスがあれば……」
「チャンスがあれば、なんだね?」
この老人の前で、僕は咬呵を切る勇気が出なかった。
もう一 度過去に戻って、やり直せたとしても結果は同じような気がした。
もう一 度過去に戻って、やり直せたとしても結果は同じような気がした。
「ご老人、いや、ジョーカーさんで良かったですか。僕の話を聞いてくれませんか?
僕がなぜ、いま、ここで途方に暮れていたのか。ジョーカーさんに聞いてもらいたいのです」
僕がなぜ、いま、ここで途方に暮れていたのか。ジョーカーさんに聞いてもらいたいのです」
広場の周りではデパートのイルミネーションが輝いていた。空はすでにもう真っ暗になっていたが、ライトアッ プされた照明が僕らふたりを明るく照らしだしていた。まだこの老人が何者かわからなかったが、僕はこの三年間であった出来事を打ち明けてみようと心に決めた。不思議と寒さはもう感じなかった。
(毎週金曜、14時更新)
via amzn.asia
泉 正人
ファイナンシャルアカデミーグループ代表、一般社団法人金融学習協会理事長
日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。