2017年12月7日 更新

「私は君のジョーカーとして、ここに現れた。」富者の遺言[第10話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

「君は、私のことをどうやら信じないようだね」
「そりゃ、そうですよ。突然誰かもわからない人が、なぜ僕を助けるんですか? 信じろ、 という方が無理な話です」
「私が現金三〇〇〇万円の入ったスーツケースを持っていたら、信じるかい?」
「……すいません。気を悪くされたのなら謝ります。でも、だって、そんな話……」
「たとえば、今の君に現金三〇〇〇万円を渡したとしよう。それを君はどう使う? きっと借金返済に使うだろう。だけど、その後も人生は続く……。そして、また同じ失敗を繰り返すんだ。お金に翻弄される多くの人間が辿る道だ」
「そんなことはないです! きっと、もう一度チャンスがあれば……」
「チャンスがあれば、なんだね?」
 この老人の前で、僕は咬呵を切る勇気が出なかった。
 もう一 度過去に戻って、やり直せたとしても結果は同じような気がした。
「ご老人、いや、ジョーカーさんで良かったですか。僕の話を聞いてくれませんか?
僕がなぜ、いま、ここで途方に暮れていたのか。ジョーカーさんに聞いてもらいたいのです」
 広場の周りではデパートのイルミネーションが輝いていた。空はすでにもう真っ暗になっていたが、ライトアッ プされた照明が僕らふたりを明るく照らしだしていた。まだこの老人が何者かわからなかったが、僕はこの三年間であった出来事を打ち明けてみようと心に決めた。不思議と寒さはもう感じなかった。
(毎週金曜、14時更新)
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泉正人 | ファイナンシャルアカデミー 泉正人 | ファイナンシャルアカデミー
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