26歳でブロックチェーンの教科書を執筆したエンジニア<赤澤直樹>

インタビュー

世の中には、新しい技術や概念など、まだ情報量が少なかったりそのものの定義が曖昧なものがたくさんあります。理解したいと思っても情報が点在していて全体を捉えづらい。今回は、そんな「未知なるものの学び方」をテーマに、FLOCブロックチェーン大学校で講師も務めるブロックチェーンエンジニア 赤澤直樹さんにお話を伺いました。

赤澤さんは26歳という若さで、11月11日に発売され、文系ビジネスパーソンでもブロックチェーンプログラミングがゼロから学べると話題の『Pythonで動かして学ぶ!あたらしいブロックチェーンの教科書』を執筆。自分なりの手法で新しい概念を習得するのが得意という「未知なるものの学び方」のプロフェッショナルともいうべき人物。

高校では理系クラスを選択していたにも関わらず、大学ではフランス語学科を専攻、その一方でフリーランスエンジニアとしてAIやビッグデータ活用のプロジェクトに参画、そして大学院では経営学の領域で研究を進めながら、エンジニアとして企業から様々な案件を受注しつつ、今は講師としてブロックチェーンについて教鞭を執るという一風変わった経歴の持ち主でもある赤澤さん。そのバックグラウンドにも学び方のヒントが隠されていそうですが、どんな人生を歩んできた方なのでしょうか?

高校生の時に初めて知ったNASAプロジェクトチームが全ての始まり

STAGE編集部:本の執筆も手がけるエンジニアであり、講師としての顔も持つ多才な赤澤さん、どんな高校生だったのですか?

赤澤:高校時代は理系クラスに所属していたのですが、「この先の人生には色々な可能性や選択肢がある中で、この段階で文系・理系って決めてしまうのもどうなんだろうな」という思いがありました。
また、ドキュメンタリーで観たNASAのプロジェクトチームにすごく刺激を受けて……人種・国籍・年齢・性別関係なく、世界中から優秀な人が集まってきて、同じ目標に向かって頑張るっていうのが純粋に「かっこいいな」と思って、将来はそういう環境で働きたいなという想いが芽生えたのもこの頃でした。

大学に進学。「苦手な言語系を学ぼう!」と思い立ち、なぜかフランス語を専攻

STAGE編集部:大学ではどのようなことを学ばれたのですか?

赤澤:「文系・理系」と決めずに、その後の人生の選択肢を幅広く持ちたいという考えから、文理融合の総合学部のある広島大学に入学しました。文理融合ということで、文系理系両方の学科が選択肢にある中で、ふと思い立ったのが「苦手な言語系を学ぼう」ということでした。将来的に、NASAのプロジェクトチームのように世界中の人とチームを組むことをイメージしていたので、英語でコミュニケーションできるようにならないと話にならないですし、そういった考えもあり「言語文化プログラム」というコースを専攻することにしました。

ところがその当時、学科を選択する時に「英語のみ」というものがなくて。そこで英語の他に使っている人が多い言語を調べていたらフランス語が出てきたのと、哲学に興味が出てきた頃でもあったので、英語も学べるフランス語の学科を専攻することになったんです。その学科ではフランス語でのコミュニケーションはもちろん、フランスの哲学や社会学、言語文化研究が行われていました。これまで1ミリも触れてこなかったフランスだったので(笑)、単位を取るのにはものすごく苦労をしましたが、文化というものを複眼的・俯瞰的に分析する力がついたと思います。

AIやデータ解析を学んだ理由は「普通のアルバイトより稼げそうだし、この先につながる」

STAGE編集部:大学時代、独学でAIやデータ分析を学んだということですが、何かきっかけはあったのですか?

赤澤:すごくリアルな話なのですが、まず「生活費を稼ぐ」というのが一番の目的としてありまして。稼ぐ手段としては、普通に飲食店でアルバイトとか色々あったのですが、「どうせ同じ稼ぐなら、この先につながる何かで稼ぎたい」と思ったんです。そして、自分の武器というか、スキルを考えてみた時に「データの分析はできるな」と思って調べてみたところ、データ分析・データサイエンスといった分野が今はホットだということがわかってきて。「これでお金を稼げるんじゃないかな」と思ったんです。そこから、その仕事をするためにデータ分析まわりのことを少し勉強して、クラウドソーシングで、フリーランスとして仕事を受け始めることにしました。

仕事を始めた当初は、アプリケーションの分析機能を開発するような、データ分析まわりのものが多かったのですが、続けていく中でデータ分析の延長線上にAIという技術があり、AIを使ったシステム開発案件も出てきたので、必然的にその勉強もすることになっていきました。

100%の知識がなくても「まずは実際に手を動かして作ってみる」こと

STAGE編集部:エンジニアとしてビジネス経験もない状態で、どうやって勉強したのですか?

赤澤:本を読む、検索する、また当時は大学院生だったので大学の論文をダウンロードして読みまくる。使えるものは全部使い倒して調べる。そして、一通りのインプットをした上で、一番重要なのが「実際に手を動かして開発してみる」つまりアウトプットするということでした。

STAGE編集部:執筆された書籍のタイトルにもある「手を動かして」というキーワードですね。

赤澤:そうですね。実際にやってみるってものすごく大切だと思うんです。泳げるようになりたいのに、プールサイドで練習していても、絶対泳げるようにはならないじゃないですか。プールに入って、実際に足をバタバタさせて、時には溺れかけながら「こうやって手足を動かすんだ」って泳ぎ方を覚えていく。それと同じような感じで、仮に知識が足りなかったとしても、「こうかな?」とか想像力を働かせて手を動かしてみて実際にプログラムが動けば、後から「これってこういう意味だったんだ」ってわかってきたりするので、100%の知識がなくてもまずは行動してみることが大事なんだと思いました。

サトシナカモトのビットコイン論文を読み、ブロックチェーンという発想に感動

STAGE編集部:大学院生兼フリーランスとして、忙しい日々だったんですね。

赤澤:そうですね。大学院の勉強をしながらAIのシステム開発やWebのアプリケーション開発などのプロジェクトも行っていたので忙しい時期もありましたが、案件のある時ない時でムラはありましたね。プロジェクトがない時期は、開発案件ではなく技術系の記事を書くという仕事も請け負っていたのですが、記事のテーマの中にAI・IoT・そしてブロックチェーンがありました。

ちょうど同じ頃、知り合いがビットコインの始まりと言えるサトシナカモトの論文の存在を教えてくれて、「記事を書く参考になるかな」ぐらいの気持ちで読んでみたら、これがめちゃくちゃおもしろくて。一番感動したポイントは、その発想力。ブロックチェーンって、実は使っている技術自体はそんなに新しいものじゃなくて、むしろ既に使い倒されている古い技術ばかりなんですが、それをつなぎあわせて全く新しい技術にした、つまり「技術力じゃなくて発想力で新しい技術を創り出した」んですよね、そのことに大きな衝撃を受けました。その論文はビットコインについて書かれたものでしたが、それをきっかけにブロックチェーンを勉強したり、他の暗号通貨についても調べるようになっていきました。

赤澤 直樹(Naoki Akazawa

FLOCブロックチェーン大学校講師 ブロックチェーンエンジニア。フリーランスとしてシステム開発やAI開発、データ解析に従事する中で分散システム、特にブロックチェーン技術の奥深さに魅了される。教育を通じて、共に活躍できるブロックチェーンエンジニアを輩出するべく、株式会社FLOCに参画。講師や各種執筆、中上級者向けの新規教育コンテンツ制作に加え、広島大学大学院博士課程後期で研究活動も行う。執筆協力に『Pythonで動かして学ぶ!あたらしいブロックチェーンの教科書』(翔泳社)

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