日本・世界で富裕層が増加中!世帯数の推移とリッチな外国人が増えたワケ

いわゆる「富裕層」世帯数の推移を眺めてみると、日本でも世界でも増加傾向にあるようです。都内の銀座や青山など比較的高級とされるエリアにおいても、確かに昨今はアジア系のリッチな雰囲気を纏う外国人に出会うことが、すっかり珍しくなくなったように感じます。

2019.12.5

金融資産1億円以上で「富裕層」?定義や意味は?

まず、メディアでもしばしば耳目に触れる「富裕層」という言葉ですが、世界共通の確立した定義、意味づけがある訳ではありません。それでも、野村総合研究所(NRI)が2016年に日本全国の企業オーナーを対象に「NRI富裕層アンケート調査」というものを実施しており、こちらで用いた5分類・定義を参考に語られることが、現在では一般的になっています。
①超富裕層(純金融資産5億円以上)、②富裕層(純金融資産1億以上5億円未満)、③準富裕層(純金融資産5千万以上1億円未満)、④アッパーマス層(純金融資産3千万以上5千万円未満)、そして⑤マス層(純金融資産3千万円未満)の5分類です。
ここで言う純金融資産とは、保有している預貯金、株式、債券、投資信託など金融資産の合計金額から負債を差し引いた金額を指しており、現金、ないし即現金化できる金融資産だと考えておけば良いでしょう。一般論としては、1)超富裕層と2)富裕層とを合わせて「富裕層」と称されています。
また、世界有数の戦略コンサルティングファームである米国のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)による「2015年版グローバルウェルス・レポート」においても、100万米ドル(約1億1千万円)以上の金融資産を有する世帯を「富裕層」と看做しています。日本基準にせよ、米国基準にせよ、年収額は富裕層の要件でないことは共通していますね。

日本の「富裕層」世帯数の推移を眺めてみると?

上で触れたNRIによる調査結果などによれば、日本の「富裕層」世帯数は、現在127万世帯を超えているものと見られます。過去15年間(2000年〜2015年)には大幅な増加で推移し、現在もこの傾向が続いているものと考えられるのですね。15年間の世帯数の推移では、「富裕層」が48%強の増加、「超富裕層」となっています。
ちなみに、純金融資産の残高推移から眺めても、15年間で6割も増加しています。これほどまでに「富裕層」世帯が増加している最大の理由は、政権与党を自民党が奪還した2012年以降の株価急上昇です。
加えて、2015年度の消費税10%アップ予定が2019年度に先送りになったことや、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2014年に運用ポートフォリオを見直し、国内株式での運用比率を12%から25%へと大幅に引き上げたことなども、日経平均株価の上昇を後押ししたと考えられます。
この間の日経平均株価の推移を見れば、2012年には9,000円程度に過ぎなかったものが、2015年には19,000円程度にまでなり、3年間で2倍以上の伸びとなっているのです。現在では23,000円超にまで、更に伸びてきています(2019年11月7日現在)。日経平均株価がこれだけ上昇している訳ですから、株式を多く保有する「準富裕層」や「富裕層」世帯の金融資産の推移についても、自ずと想像がつくと言うものです。
つまり、自己資金で株式を取得していれば、純金融資産5,000万円以上の「準富裕層」世帯から、純金融資産1億円以上の「富裕層」世帯へランクアップできる可能性が高かった、と言えるのですね。

世界の「富裕層」も増加中?眼を見張る世帯数の推移

先にも登場した米国のBCGですが、こちらが実施した世界における家計金融資産に関する調査によれば、2016年の世界の地域別「富裕層」世帯数は、1位が北米地域で約760万世帯、2位は西欧地域、及び日本以外のアジア・太平洋地域(中国含む)で同数の約380万世帯となっています。
全世界では約1790万世帯と推計され、「富裕層」による保有資産が占める割合は、全体の45%にもなっているとのことです。家計金融資産規模の推移を眺めてみても、2016年は北米や西欧、中南米、中東、アフリカの各地域で顕著な伸びを見せているようですね。
他方、日本以外のアジア・太平洋、東欧、そして日本の各地域における金融資産の規模の推移を見てみると、伸びは緩やかなものとなっており、昨今の中国経済減速が影響している模様です。それでも、減速傾向にあるとは言え、日本以外のアジア・太平洋地域の「富裕層」の金融資産規模は、今後も増加傾向で推移するものとBCGでは分析しています。 そして、2017年には、日本以外のアジア・太平洋地域の金融資産規模が西欧地域を追い越して北米地域に次ぐ規模になったと推計される他、2019年中には、日本以外のアジア・太平洋と日本を合わせた両地域の金融資産規模が北米地域を超えて、世界最大となることも予測されています。
アジア新興国の「富裕層」世帯数が増加で推移し続けていることは、都内の銀座や青山界隈を歩いてみると、身なりの良いアジア系観光客を多く見かけるようになったことからも、肌で感じることができるのではないでしょうか。
Kenneth S

Kenneth S

総合商社のIT戦略担当からIT系ベンチャー企業の経営補佐などを経て、現在は海外在住の個人投資業。時折、物書きもしている。
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