STAGEに見合った行動をとる
繰り返しになるが、お金の教養とは、私がこれまで出会い、時間を共にした多くの経済的、心理的な自由を得た人々から、その価値観や成長の軌跡の共通項を発見してまとめた、普遍的な原理原則だ。そして、長い歳月をかけて、そこに向かうための方法論をロジックとして完成させたのがこの「お金の教養STAGE」という概念フレームワークだ。
この概念フレームワークの潜在能力を引き出していくうえで鍵を握るのが、「バランス」だ。
お金の教養STAGEを高めるためには、そのSTAGEに見合った行動をとることが重要になる。なぜなら、STAGEに見合っていない行動をとると、ズレや違和感を生み、結果として信用が高まらないからだ。
先ほど、一流のプロスポーツ選手がポルシェに乗っているのはそれほど違和感がないが、社会人になりたての20代の若者が同じポルシェに乗っていたら金銭感覚に問題があるように映ってしまうと述べた。
では、反対に一流のプロスポーツ選手が、軽自動車に乗っていたらどうだろうか。100円ショップの例と同様に、「この人はケチなのでは?」という目で世の中から見られ、結果として信用が高まりにくい。信用が高まらないと、長期的に高い収入を維持することは難しい。「軽自動車に乗る」という行為そのものは何のルール違反をしているわけでもないのに、だ。
たとえば、「稼ぎ方」「増やし方」がSTAGE5の人が、食事の際に、友人や後輩に絶対にご馳走せずに毎回割り勘での支払いを要求していたりしたら、非常にバランスが悪いと感じるだろう。この行為自体、法を犯しているわけでもないし、本来は非難される理由などどこにもない。しかし、本人が正しいことをしていると思っていたとしても、そのバランスの悪さゆえに、周りからの信用が高まりにくい。
信用を築かずに得たお金は、長期的には遠ざかっていってしまう。一時的には「稼ぎ方」「増やし方」がSTAGE5まで到達したとしても、他の要素のSTAGEが低いことによって信用が中途半端にしか得られず、安定してSTAGE5にいることが難しくなってしまうのだ。ゆえに、こうしたお金の教養STAGEを効率良く高めていくためには、できるだけ各要素ごとのSTAGEはバランス良く揃えておいたほうがよい。
ビジネスにおいて融資を受けるときにも、信用があるほどお金は借りやすい。ここでの信用には、いわゆる与信としての経済的信用のみならず、人脈や交友関係といった人間的信用も大きく影響する。
アメリカのあるウェブサイトでは、世界の著名投資家がいつ、誰に、いくらの投資をしたのかという情報が蓄積、公開されている。そして、投資を受けたという実績が、さらなる投資はもちろん、金融機関から融資を受けられる可能性を生んでいく。これらの資金調達によってビジネスはますますより大きくなっていく。「どれだけ人から信用されているか」という事実が、ダイレクトにビジネス、つまり「稼ぎ方」に結びついていくわかりやすい事例といえるだろう。
人生の重要な局面では信用が大きく影響する。高いSTAGEになればなるほど、その影響度は大きくなる。より信用を高めるためにも、STAGEに見合った行動をとるということはとても重要なのだ。
また、お金のトラブルに巻き込まれないためにも、STAGEの各要素をバランス良く揃えて上げていく、ということは不可欠だ。
私が知っている限りでも、一流企業に勤めていながら多重債務を抱えている人は意外と多い。また、儲け話に乗ってまとまった資金を投資したらそのまま戻ってこなかった、不動産会社に勧められた投資用マンションを購入したら空室が続いて困っている、といった不穏な話も多い。STAGEの各要素がアンバランスであることは、とかくトラブルを招くのだ。