オフィスでお酒が飲める社内バーは効果的?メリットとデメリット

キャリア
オフィス内にお酒を提供する「社内バー」を設ける会社がじわじわと増えています。いろいろなスタイルがあるようですが、主な目的は社員の間で「飲みコミュニケーション」を活発にすることです。それがもたらすメリットと、デメリットについて考えてみました。
2019.4.4

「とがった業界」から始まった社内バー

社内バーは、オフィス内部に設けられた酒場のことです。IT企業、ネット企業、アパレル企業、インテリア企業、広告業、コンテンツ制作のようなクリエイター系、コンサルタントのようなナレッジ系といった「とがった業界」から始まって、それ以外の業種でも新社屋への移転時に新設するなど、じわじわとひろがりをみせています。
基本形は「カウンターバー」ですが、スタイルはさまざまです。
ホテルの部屋のミニバー程度の小さいもの、社内カフェや社員食堂の一角が夜間営業するスタイル、社長が趣味でバーテンダーを買って出る(クローバーラボ)、スクリーンで映画上映(シンクスマイル)、ワインバー(ADDIX)、卓球台やダーツを備えた大人の社交場(ホワイトボックス)などもあります。さすがにカウンターで「ママ」「チーママ」がお相手するお店はないようですが、いてもおかしくない本格派のしゃれた雰囲気のバーなら数多くできています。
置いてあるお酒やおつまみは社員が持ち込んでくる会社もあれば、福祉厚生費で買い揃えてくれる会社もあります。来訪したお客さんやビジネスパートナーなど外部の人も利用できるバーもありますが、酒代をとっているわけではないので、保健所や警察(風俗営業法)の営業許可はいりません。

最大の目的は社員間の「飲みニケーション」

会社が社内バーを設ける目的の大部分は「社員間のコミュニケーション」つまり飲みニケーションを行う場を社内につくることです。社内であればタダで飲めるだけでなく、盛り場のバーのようにケンカなどのトラブルに巻き込まれる恐れはありません。酔っていたために会社の秘密が漏洩する心配もなく、安心してお酒をたしなむことができます。酒癖が悪い社員でも、そこが社内であれば自ずと酒量の「自制」をするようになるでしょう。
「パワハラ」「アルハラ」という言葉があるように、上司に誘われて赤ちょうちんに行って説教されるコミュニケーションに「古くさい」と抵抗感を持つ若い社員でも、おしゃれな社内バーであれば参加しやすいでしょう。
勉強会、歓迎会、親睦会のような社内イベントの会場に社内バーを使えば、予約の必要がなく、経費も節約できます。そこではふだんは顔を合わせない他部署の人との交流が活発になる効果も生まれるそうで、業務上のプラス効果が生まれたり、一体感の中でカップルが誕生して社内結婚が増えるのを期待している会社、福祉厚生の充実による従業員満足度(ES)の向上を狙っている会社もあります。
あまり当てにはなりませんが、お酒を飲んでリラックスした時間に、会社や業界を一変させるようなすごい発想やアイデアがひらめくかもしれない、という期待もあるようです。
取引先など社外の人を社内バーに招待して、接待とまでいかないような軽いおもてなしに利用している会社もあります。面白いのは採用活動に活用している会社がけっこうあることで、訪問してきた大学生を社内バーに連れて行きお酒を飲ませれば、「胸襟を開いて」本当の志望度など本音が聞けるのかもしれません。もちろん社内バーの存在が好感され採用に良い影響を与えることもあるでしょう。

「会社でお酒を飲む」ことへの抵抗感もある

社内バーはなくても、社員食堂の隣に「社内カフェ」を設置している会社はたくさんあり、ランチタイムはにぎわっています。受付の隣に社内カフェを設け、来訪者との打ち合わせに活用する会社もよく見かけます。しかし、コーヒーやお茶が全くダメという人はほとんどいませんが、体質的にアルコールが全く飲めない人はけっこういます。外国人社員でイスラム教など宗教上の理由で飲めない人もいるでしょう。そんな人にとって社内バーの存在は、「社内なのでしかたなく付きあわされるのではないか?」と内心、恐れているかもしれません。ソフトドリンクも置くなどお酒が飲めない人への配慮ができていないと、社内バーのためにかえってコミュニケーションが疎遠になる社員が出る恐れがあります。これが懸念されるデメリットの一つです。
もう一つの懸念は「世代間ギャップ」です。高年齢層には、たとえお酒が大好きでも「外のしかるべき店で飲むものだ」「公私混同していいのか?」と会社の中でお酒を飲むことに対して抵抗感を持つ人もいて、そんな人への配慮も必要でしょう。
その他、社内バーで飲むと飲酒運転防止の徹底ができなくなる、酒瓶の管理、ビールサーバーや食器などの衛生管理や掃除、ゴミの処理がけっこう大変という声もあります。「働き方改革」にからんで、会社の外に出ないまま上司や同僚と社内バーにいる時間が労働基準法上の「勤務時間」にあたるのかどうかという、微妙な問題もあります。そこは社内ルールで明確にしておくべきでしょう。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。

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