2020年4月14日 更新

新型コロナで株価が大きく下がっても、日本の年金が破たんしない理由

今年、新型コロナ肺炎大流行の影響で日経平均株価は最大32.2%下落しました。年金資産は株式でも運用しますが「年金制度が破たんするのではないか?」という心配は無用です。なぜなら年金積立金は約120兆円で、運用益の蓄積も約75兆円と大きいからです。

GPIFの運用は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、短期資産の5種類に分けて行われます。GPIFでは2020年4月1日からの5カ年における基本ポートフォリオ(資産構成割合)を「国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%」にすると発表しました。「株式が50%もあるのは危ない」と言う人がいますが、100%ではありません。債券とのバランスをとっています。
株式と債券は、好況時はリスクを取って株式に資金が集まるので株価が上がり、不況時はリスクを避けて債券に資金が集まるので債券価格が上がります。債券は不況に強く、それが株式の損失を埋めます。
2月から3月にかけてニューヨーク証券取引所で株価が急落した時、中央銀行のFRB(連邦準備銀行)は金利を何度も引き下げ、自動的にアメリカ国債の価格は上昇しました。株式のマイナスを債券の価格上昇である程度まで取り返すことが可能でした。
GPIFの過去の運用実績を見ると、2007年度はマイナス4.59%、2008年度はマイナス7.57%で、累計収益額を2年連続で減らしています。これが「リーマンショック」の爪痕ですが、2008年末でも累計収益額はマイナスになりませんでした。
新型コロナウィルスによる運用環境悪化がリーマンショック以上のひどさになり、運用実績マイナス10%が2年続いても、2021年末の累計収益額は約61兆円です。世界の金融市場が壊滅的な打撃を受け運用実績マイナス50%が2年続いてもなお19兆円残り、赤字で年金積立金を切り崩すことはありません。
10年、20年先の年金財政の話ではなく、新型コロナウィルス肺炎大流行による世界的な株安によって日本の年金制度が数年で破たんすることは、非常に考えにくいのです。
これからGPIFの1~3月期の運用実績の大幅マイナスが発表、報道されて「年金は大丈夫か?」と騒がれると思いますが、年金積立金約120兆円とは別にGPIFの19年間の運用成果が約75兆円あり、株式と債券を半々で運用してリスクを抑えていることを知れば、むやみに怖がる必要はないはずです。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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