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2019.8.9
パラレルワーク(パラレルキャリア)ってなに?
P.F.ドラッカーが「明日を支配するもの」という書籍で提唱した働き方が、パラレルワーク、またはパラレルキャリアだといわれていますが、それをすぐに副業・複業・兼業とつなげてしまうのは、少し強引です。
P.F.ドラッカーが提唱したのはパラレルワークではなく、あくまでもパラレルキャリアという副業・複業・兼業よりもスケールの大きい概念。代表的な例としては、別な部署の仕事に関わる(CEOが休暇中のセールスマンの代役をする)、40代以降は独立開業の準備や、第2の人生としてNPOやボランティア活動(無報酬を含めて)に参加することなどがあげられます。
別な部署の仕事やボランティアの話は、副業・複業・兼業というテーマとずれますし、STAGEの読者は大半が40代以下でしょうから、いったんパラレルキャリアについては忘れてください。
では、パラレルワークについて話を進めましょう。訳すると「いくつかの仕事を並行して行うこと」、日本では主に副業、複業、兼業を指しています。
パラレルワークの種類(複業・副業・兼業)
副業、複業、兼業の分類は、誰もが途中で混乱するはずです。なぜなら、メディアによって言葉の意味が違うから。この問題は、パラレルワークには2つの文脈があることを知っておけば解決します。ひとつは、政府の公開資料や法律用語としての公(おおやけ)の文脈と。もうひとつは、世間の常識として語られる文脈です。
公の文脈では、副業も兼業も「一般的に収入を得るために携わる本業以外の仕事を指す」と一括りにされます。また、複業という言葉は出てきません。
- 雇用形態や収入額は問わず、本業を継続しつつ他の仕事もするのが副業
- 自営業(家業の農家や商店)を継続しつつ、他の仕事もするのが兼業
一方、世間の常識として語られる文脈(雑誌やインターネット)では、副業を2つに分けます。「アルバイト程度の収入を得る副業」と「本業と変わらない収入を得る複業」です(兼業は複業に含まれる)。
- 本業を継続しつつ、アルバイトやネットビジネスで副収入を得るのが副業
- 自営業、雇用、フリーランスといった本業を、複数持っているのが複業/兼業
パラレルワークのメリット・デメリット
パーソル総合研究所が2018年に行った実態調査では、正社員13,958名のうち、本業以外の仕事をしているのは1,082名でした。
収入補填が目的のアルバイトとパートが36%と最も多く、平均月収は70,000円弱。ほとんどの人が本業に差しさわりのない「副業」を選択しているのが現状のようです。他の会社でも正社員として働く人、「複業」として成り立っている理想的なパラレルワーカーは、わずか15.1%でした。
とはいえ、対象者の多くが「既存のやり方にこだわらず、良いと思ったやり方で仕事をするようになった」「自分の仕事のやり方や経験を定期的に振り返るようになった」というメリットを感じているといいます。
面白いのは、副業や複業を全面的に容認している企業ほど、過重労働で本業に支障をきたし、体調を崩してしまう社員が目立つこと。日数制限、定期的な報告などのルールを設ける方が、デメリットは少ないのです。
パラレルワーク初心者の私たちは、ペース配分や体調管理という「自由に働くスキル」が、まだまだ未熟なのかもしれませんね。どんなに副業・複業・兼業が成立しやすい環境になっても、「自由に働くスキル」がなければ、自律的な働き方は実現しません。
最後に パラレルワークの舵取り
過去の起業ブームでは、ブームが過ぎると大量の中高年フリーターが生まれました。働き方改革で減った残業代を、週末のバイト代で補填し、副業で一発当てるセミナーに大金を払っていては、おそらく同じ過ちを繰り返します。
ここで、冒頭のパラレルキャリアという概念を思い出してください。「今」を第2の人生につなげる長期的な視点です。カフェのバイトだって、視点を変えればマーケティングや流通を学ぶ絶好の機会です。独立開業という最終目標も、本当に最終でしょうか? 還暦を迎えたら、資産に応じてボランティア活動へシフトするという生き方もあります。
パラレルキャリアという視点を手放さなければ、副業・複業・兼業のいずれにしろ、パラレルワークを上手に舵取りしていけるはずです。
参考
『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』P.F.ドラッカー著 ダイヤモンド社,1999年
『ドラッカーの実践マネジメント教室』P.F.ドラッカー著 ダイヤモンド社,2014年
『2022年、「働き方」はこうなる』磯山友幸著 PHPビジネス新書,2017年
パーソル研究所 副業・兼業の光と陰
https://rc.persol-group.co.jp/research/hito/files/hito_R5_201904.pdf
パーソル総合研究所 副業の実態・意識調査
https://rc.persol-group.co.jp/news/201902120001.html