しかし、以上のような主要な対立点よりももっと注目すべき問題が、マルチタスクにはあります。
マルチタスクの本当の問題は人間関係への悪影響
マルチタスク主義者が周囲の人々からどのように見られているか、意識したことはあるでしょうか。2013年、ハワード大学と南カリフォルニア大学の研究者達によって、会議中の携帯電話の使用についての調査報告が行われました。ビジネスのプロ達を対象とし、フォーマルな会議とランチミーティングのようなインフォーマルな会議で、どのような携帯電話の使用が不適切とされるかを調べたものです。では、早速60%以上のプロ達から「不適切」とされた例を見てみましょう。
会社でのフォーマルな会議で「不適切」なこと
・電話をする(87%)
・メールを出す(84%)
・メールのチェック(76%)
・インターネットの閲覧(75.7%)
・メールを出す(84%)
・メールのチェック(76%)
・インターネットの閲覧(75.7%)
社外でのインフォーマルな会議で「不適切」なこと
・メールを出す(66.3%)
・電話をする(61.4%)
・インターネットの閲覧(61.4%)
・電話をする(61.4%)
・インターネットの閲覧(61.4%)
そして、大部分のプロ達は、会議中の携帯電話の使用のほとんどを不適切と考えていることが明らかになったのです。つまり、たとえあなたが「私は知能を必要とする複数のタスクを同時にこなせる」と自信を持って言える人であったとしても、こうしたプロ達がいる会議でマルチタスクを行うと、「敬意をもっている」とか「信頼できる」といった印象を彼らに与えるのは難しいということです。
マルチタスクの本当の問題は人間関係への悪影響。仕事の相談中に常に他のタスクに意識をいったりきたりさせている上司は、部下からの信頼を得ることは困難ですし、上司が話をしている最中に部下が他の業務をしていれば叱責の対象となってもおかしくありません。
マルチタスクの代表といえば、堀江貴文さんかもしれません。堀江さんは、取材中でも会議中でもかまわずスマホチェックをします。それを「失礼」と批判されても、時間を有効に使っているだけ、と答えが返ってきそうですね。才能ある人のこのような行動は「個性」と認識されます。しかし、一般人が同様の行動をすると風当たりが強いでしょう。
マルチタスク型よりシングルタスク型の人が有利な時代がきた?
あなたが現在、学生だったとしましょう。現在の教育現場で求められるのは、好きなことに対する集中力であったり、得意なことを最大化するといったことなのです。大学のAO入試も、特に秀でたことや一点突破的な才能を評価しようということで生まれています。そしてそのような人物がこれから「有用」とされているようです。これはもしかすると一点集中型の「シングルタスク」型人間の方が有利なのかもしれません。
AI時代、今後はより「人間性」が重視され、アートやクリエイティブな才能の価値が高まっていくと言われています。アーティストのように自分の好きなことに向かい合うシングルタスクに軍配があがりそうです。同時並行的な作業や思考ができることは優れた才能ですが、人間の「マルチタスク」の才能は、AIには及びません。もしかするとマルチタスクはもういらない、といえる時代がやってきたかもしれませんね。
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