なぜ勤務時間外メールで生産性が低下するのか

働き方改革が進められるも勤務時間外メールへの対応を迫られる人はまだ多く、健康被害に至るケースも見られます。勤務時間外メールには「つながらない権利」の侵害や生産性低下という問題があります。メールで疲弊しないために、適切な仕事メールの扱い方を確認しましょう。

2019.11.18

勤務時間外のメール対応と「つながらない権利」

せっかくの休日なのに手元のスマホを見たら仕事のメールが…。勤務時間外の仕事メールは日本ではよく見られるもので、海外でも事情は同じようです。 勤務時間外の仕事メールが生む弊害を重く見た欧米では、「つながらない権利」が重視されるようになりました。勤務時間外に上司や同僚、取引先などからの仕事に関する電話・メール・LINEなどを拒否できる権利で、代表的なのはフランスで2017年から施行された「勤務時間外メール禁止法」です。 勤務時間外メールは社員を疲弊させます。責任感の強い社員ほど夜や休日でも仕事メールが気になり、場合によっては不眠になりってしまうことも。結果として生産性が低下し、燃え尽き症候群の予備軍になってしまうこともあります。

休日の仕事メールが及ぼす悪影響の数々

バージニア工科大学の調査により、実は実際にメールが来ていなくても「来るかもしれない」という不安だけで悪影響があることが分かりました。 具体的に悪影響の数々を列挙してみましょう。
・リラックスする時間が犠牲になる
・リフレッシュや自己肯定、自己実現に関わる趣味の時間が犠牲になる
・休日なのに心身共に疲労回復できない
・家族と過ごす時間が犠牲になる
・社員の家族にもストレスがかかり、家族関係が悪化する
・社員の生活の質が低下する(メールが気になり不眠になるなど)
・仕事へのモチベーションが低下する
・家族関係の悪化や仕事へのモチベーション、生活、睡眠の質の低下により、社員の生産性が低下する

時間外メールを不要・最低限にするコミュニケーション・ガイドライン

社員を時間外メールで疲弊させないためには、休日のメール対応についてガイドラインを設定するしかありません。 ガイドラインの最大の役割は、「勤務時間外でもメール対応をしなければならない」という暗黙の了解(あるいは誤解)を明確に否定すること。終業後や休日は休息すべきであることを明記し、仕事とプライベートの境界線を社員に取り戻してもらいます。社員の家族にもガイドラインを共有すると、さらに効果的でしょう。 次に、勤務時間外は仕事のメールアカウントをチェックしないよう明記。取引先からのメールを放置するのが忍びないなら、休みなので後日返信する旨のメールを自動返信するよう設定します。
「緊急の内容がメールで来るのでは」と社員に心配させないため、緊急事態の場合は電話かチャット、あるいは対面で情報共有するという内容も入れましょう。 LINEなど、勤務時間外メールと同様の問題がある個人的な連絡手段での仕事連絡についての規定も必要です。

メールにかける時間を減らす5つの方法

勤務時間内のメールを処理しきれず夜や休日に処理に追われる人もいるかもしれません。日本ビジネスメール協会による「ビジネスメール実態調査2019」では、1日の平均約12通のメールを送信し、1通を書くのに平均は5分かかるとされています。日本人は毎日約1時間をメールの送信に使っているということです。 メールにかける時間を減らすには、地道で現実的な方法をとりましょう。「メールは見ない」という極端な方法では、秘書でもいない限り必要な情報が受け取れません。データに基づいた現実的な時間管理術を提案するZarvana(ゼルバナ)社は、以下の5項目の実践を提案しました。
1.通知機能をオフにし、1時間に1回だけメールチェックをする
2.メールに1度目を通したら、必ずアーカイブするか削除する。後で対応が必要なメールは「やることリスト」に入れる
3.メールの検索機能と「やることリスト」を活用し、無駄なフォルダ分類をしない
4.メールを振り分けるフォルダ数は「アーカイブ(後で対応が必要なメール)」と「リーディング(後で読みたくなるかもしれないメール)」の2つが最適
5.メルマガなどの定期購読メールは自動フィルタリングでフォルダに入れ、読んでいないメルマガは購読を解除。購読を解除しても送られてくるスパムメールはアドレスをブロックする

いつでも連絡可能だと人は疲弊する

実際にメールが来なくても、「メールが来るかも」という心配だけで人は疲れてしまいます。勤務日にしっかり働くには、休日にきちんと休息できることは必須条件。忙しい部署であればあるほど、生産性を高めるために社員には休んでもらわなければなりません。
夜中でも休みでも容赦なくメールを送りつける経営層もいます。そのような会社・部署は、人の出入りが激しく、雇用が安定しないという課題があるはずです。スタートアップしたばかりの会社・部署で、濃厚なコミュニケーションが頻々に展開されるのは仕方ないといえるでしょう。しかし、経営が軌道にのり、初期メンバー以外の人材を迎え入れるフェーズに入ったら、経営層は最初のスタートアップ気分を改める必要があると、気づく必要があるでしょう。会社をスケールさせたくば、たとえファウンダーといえども自己変革しなければなりません。なぜ人がやめていくのか?と考えることがきっかけになるとよいですね。人材不足のいま、そのような企業に活路はありません。
働き方改革にはメール改革も必要です。社員の私生活を脅かさないよう、社員のメール状況を見直してみましょう。
【参考】
・マット・プラマー「メールに費やす時間を大幅に削減する5つの方法」、Harvard Business Review、2019年3月4日、https://www.dhbr.net/articles/-/5762 ・“The social economy: Unlocking value and productivity through social technologies,” McKinsey Global Institute. 2012年7月、https://www.mckinsey.com/industries/technology-media-and-telecommunications/our-insights/the-social-economy ・「あなたは大丈夫?! 業務時間外のメールで不 眠時間が2倍に」NHK NEWS WEB、2019年10月8日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191008/k10012118281000.html ・日本ビジネスメル協会「ビジネスメール実態調査2019」、https://businessmail.or.jp/research/2019-result/
Anshi

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より充実した素敵な生き方に——一過性のブームに流されない「選ぶ生き方」を掲げ、世の中に氾濫する雑多な情報から本当に役立つものをご紹介しています。
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