2019.12.29
研究と生活が深く結びつく、研究学園都市つくば市
国内最大の研究学園都市として知られる茨城県つくば市。学校の教科書で、なんとなくその存在を知っている人も多いのではないでしょうか。研究学園都市としての建設は1963 年に始まり、2005 年のつくばエクスプレスで沿線でのまちづくりも加速。大型商業施設の開業や人口の増加などを経て、2014 年には約22 万人の暮らす国際都市へと成長しました。
2011 年に国から「つくばモビリティロボット実験特区」に認定され日本初のモビリティロボット公道実験が行われたり、つくば出身のアザラシ型メンタルコミットロボット「パロ」が、世界で最もセラピー効果があるロボットとしてギネス世界記録に認定されたり。新技術の活用で二酸化炭素の排出を68%削減することに成功し、自動運転や遠隔医療、災害の予測システムの実証実験などでも成果をあげています。
加えて、2015 年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向け、つくば市は政府から「SDGs未来都市」にも選定。2015 年5月からは「つくばSociety 5.0 社会実装トライアル支援事業」を展開し、市内の研究や技術と市民の理想とする暮らしの実現とを結びつけるべく、新たに「Tsukuba Tomorrow Labo」プロジェクトも始動しました。
持続可能なまちづくりーつくば市の「生活実験」VANLIFE
2019 年、つくば市は新しい取り組みとして「生活実験」を行います。その第一弾が3月に開催される「つくばVAN 泊2019」。
現在、「VANLIFE(バンライフ)」という言葉がInstagram を賑わせており、約400 万件もタグ付けされているのだとか。これはバンのような自動車を中心として仕事や生活をするスタイルのこと。当サイトでも、「タイニーハウス」として小型の移動型住居をとりあげたことがあります。つくば市は、仕事と暮らしの「モビリティ」に着目し、このバンライフの生活実験を行おうというのです。
つくば市の五十嵐立青市長によれば、「バンライフは防災や働き方、あるいは暮らし方の観点からも“世界のあした”をいっている」ライフスタイル。大規模災害が発生した際は、車が安全な居住空間のひとつになりますし、車を中心としてどこでも仕事ができる環境が整っていれば、介護と仕事の両立の助けにもなるでしょう。
バンライフに必要な機能をコミュニティ側がサポートできれば、バンライフを送る「バンライファー」と地域との能動的な関わりも生まれます。さまざまな地域を渡り熱く彼らだからこそ、地域の人々だけでは気づけない問題や解決策をもたらしてくれるでしょう。
「つくば市が重視するSDGs の観点でも“これからのやさしさのものさし”になるヒントを『バンライフ』から探っていきたい」と五十嵐市長は語っています。
誰一人取り残さないーつくば市の熱い取り組み
さまざまな取り組みを行ってきたつくば市ですが、多くの研究所や技術、知識を十分には実際の生活に活用できていないという課題を抱えています。これを解決すべく「つくば市全体を実験室にしよう」という趣旨のもと立ち上げられたのが、Tsukuba Tomorrow Labo プロジェクトです。
少子高齢化問題と一口に言っても、そこには子育て、教育、働き方、住宅、介護、交通、健康、サービスなどといった、多岐にわたる課題が多く含まれています。そうしたあらゆる課題に立ち向かうには、多種多様な研究者が向き合い、つくば市内外の企業や団体とも力を合わせて従来とは異なる解決策を見いだしていかなければなりません。
「テクノロジーと暮らしやすさの両方がある、つくば市だからこそ、テクノロジーが市民を幸せにしている社会をつくりだせる」̶̶「誰一人取り残さない」社会の実現という最大の課題に向かい、つくば市の熱い取り組みが続きます。
生活実験の第一弾となる「つくばVAN 泊2019」は、2019 年3月21 日、22 日の2日間にわたって開催予定。詳細は順次発表されていくとのことで、現在のところ、著名バンライファーのバン展示や「バンライフ」の課題解決をテーマとしたイベントや展示、地産地消や地域の特産をフィーチャーしたマルシェ、ワークショップ、「バン図書館」などが計画されています。
未来に向けたライフスタイルを真摯に模索するつくば市。2019 年は、つくば市から目が離せません。
【参考】
Tsukuba Tomorrow Labo「実験01 つくばVAN 泊」、https://tsukuba.tomorrowlabo.jp/vol1/
『つくば PR BOOK』、つくば市市長公室広報課、2014 年pp. 2-13
新國 翔大「つくば市が「生活実験」を開始 マクアケと国内初の取り組みも」、ForbesJAPAN、2018 年12 月19 日、https://forbesjapan.com/articles/detail/24477/3/1/1