NTTが米スマートシティ化で高評価の理由 Googleは難航

経済

「スマートシティ」への取り組みが遅れ気味だった日本ですが、昨年はNTTが米ラスベガス市のスマートシティ化に技術を商用提供することが決まるなど、日本企業の取り組みが目立つようになりました。一方、注目のGoogleトロントスマートシティ計画は難航しているようです。その理由とNTTが評価された理由に迫ります。

2019.3.15

スマートシティ、日本でも加速

スマートシティは、今まで抱えていた地域や環境の課題を、IoT、AI、ビックデータなどハイテクを活用することで解決し、安全で便利な街づくりを目指すものです。
北米を始め、世界各国でスマートシティプロジェクトが急激に進められております。我が国でも、国土交通省が2018年12月から約1カ月に渡り、企業、地方公共団体等を対象にスマートシティの技術やニーズに関する提案募集を行い、スマートシティの実現に向けての取り組みが加速しております。
この「スマートシティ実現に向けた提案募集の結果」について、国土交通省は公表しており、沢山の企業が色々な形でこの革命的なビジネスチャンスに取り組んでいいることがわかります。 地域によって課題やニーズが違うため、今回の提案募集では地域によるニーズとそれに対応できる企業の技術提案をマッチしやすいよう考慮されており、各地域がスマートシティ構想の具体化がすすめやすくなることでしょう。
日本は北米から比べたら出遅れたようですが、各企業が日本独特のきめ細かいアイデアや技術を提案しており、今後は日本のみならず、世界のスマートシティプロジェクトで注目され、活躍することになるのではないでしょうか。

NTTが米ラスベガス市をスマートシティへ

昨年の12月にはNTTがラスベガス市にスマートシティソリューションを商用提供することで合意したと発表しました。
NTTのスマートシティソリューションでは、「センサー近くにマイクロデータセンタを設置し、映像や音声データに加え、犯罪履歴、天候データ、SNS情報などのデータを統合し、区域内の状況認識を向上」させることと、「NTTグループが有する技術『corevo®』(※1)を活用したAIや機械学習技術などの状況分析技術を活用して、異常と思われるパターンを検出し当局に警告を発出することにより、初期対応の時間短縮を実現」させることの2つを提供するとのこと。「(※1)「corevo®」は日本電信電話株式会社の商標です。(http://www.ntt.co.jp/corevo/)」(2018年12月8日NTT持株会社ニュースリリース
ニュースイッチ(日刊工業新聞)によると、NTTの澤田社長は「ビッグデータ収集基盤は非常に柔軟で、他社のIT機器やソフトウエアと連携できる点がネバダ州政府からも評価された」とその技術力の高さをアピールしております。
また、同紙では「同事業で得たデータをNTTの所有とせずに地方自治体のものとした競合他社との差別化戦略」がNTTを有利にしたとみているようです。

Googleのトロント市スマート化は住民がプライバシー保護に疑問

スマートシティ開発で最も懸念されることはプライバシー保護の問題です。集められたデータは誰にみられるのか、悪用されないのかという疑問を市民が持つことは当然です。
Google の姉妹会社である、Sidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)は、トロント市(カナダ)のウォーターフロントにゴミを収集するロボット、自動運転のバス、などGoogleらしいサービスを提供するまさに夢のスマートシティを実現しようとしています。
しかし、この計画はプライバシー保護の問題で地元住民から反対を受けたり、昨年10月には顧問が数人辞職するなどかなり難航しています。
その理由として顧問であった、アン・カブキアン氏は「住人に関する個人の特定が可能な情報を、サイドウォーク・ラボが第三者である企業や開発者がアクセスできるようにしようと計画している」とサイドウォーク・ラボ側のデータ管理の問題を指摘しました(MITテクノロジーレビュー)。
今年3月には、カナダ市民人権団体がこのスマートシティで集められた個人情報が適切に集められ、管理され、使われるべく「デジタルデータ・ガバナンス・ポリシー」を連邦、州、市町村の3つのレベルの政府で確立するまではこのプロジェクトを停止してほしいという訴訟を起こすことを考えている、と地元新聞社、The Starが報じています。
このようにデータを自社で利用したいサイドウォーク・ラボが難航しているのに対して、NTTは収集したデータは地方自治体に渡すということで信頼を得ました。やはり、データの取り扱いがスマートシティー開発の課題となっているようです。
スマートシティの実現で我々の生活は益々便利で安全になることでしょう。しかし監視されていることや個人情報を悪用される可能性など負の面もあり、プライバシー保護は個人でも強化していかなければならないのでしょう。
参照記事:
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
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