富裕層はなぜ会員制リゾートホテルを好む?別荘持ちでも利用する理由

富裕層向けの会員制リゾートホテルについて、耳にされたことがある方も多いでしょう。実際、別荘所有者が少なくないにも関わらず、富裕層は会員制リゾートホテルも好んで利用していますね。リゾートトラスト社の会員権などは、取引市場も実質的に確立しているようです。
2019.8.30

そもそも富裕層向けの会員制リゾートホテルとは?

富裕層向けの会員制リゾートホテルは、別荘のようなプライベートな空間と、ホテルのようなサービス提供・利便性を両立した施設となっています。会員権を購入してリゾートクラブの会員になることで、そのリゾートクラブが運営する全国各地のホテルを利用することが可能となる仕組みなのですね。実際にホテルを利用するにあたっては、会員権を所有するのみならず、年会費と都度の宿泊料を負担することが求められます。
施設・部屋のグレード感や、楽しめる料理のクオリティを鑑みれば、都度の宿泊料は一般の高級ホテルよりもリーズナブルに設定されている、とも言われます。それでも、会員権の購入代金と毎年の年会費の負担までを考慮すれば、会員制リゾートホテルよりも一般の高級ホテルを利用した方が、コスト面からは有利になることが一般的です。なお、会員制リゾートホテルの会員権は、いくつかの種類が存在しています。
現在、最も一般的なのは「共有制リゾート会員権」と呼ばれる種類です。これは不動産所有権付の会員権で、会員制リゾートホテルでは現在主流の方式ですね。当該ホテルの不動産所有権を会員同士で共有するもので、募集口数で割った各会員の持分を不動産登記することになります。主だったリゾートクラブには、東急ハーヴェストクラブ、リゾートトラスト、グランリゾート、ダイヤモンドソサエティ、GFCなどがあります。

別荘持ちの富裕層も会員制リゾートホテルを使う理由とは?

それでは、富裕層がそれなりに高額なコスト負担をしてまで、なぜ会員制リゾートホテルを使うのでしょうか。リゾートホテルを共同所有するステイタス感が富裕層にアピールするからとも言われますが、これは十分な理由にはならないでしょう。なぜなら、富裕層であれば既に別荘を所有しているケースも少なくないからで、さらにステイタス感が得られるという曖昧な理由だけで、1,000万円単位の会員権を購入し、数十万円の年会費+数万円の都度の部屋使用料を負担するとも考え難いものです。
富裕層が会員制リゾートホテルを使用する主な理由は、まずビジネス上の重要パートナーをゲストとして招いて接待する場として、または個人的に親しい人間と気兼ねなく過ごす場として、会員制リゾートホテルが効果的であるからです。別荘に招待することもできますが、設備や供される食事、対応などの面で高級ホテルのサービスには適いませんし、家族の目が気になる場合もあり得ますね。
さらには、小さな子供さん連れの富裕層の場合、会員制リゾートホテルの方が気兼ねなくステイしやすいことも理由になり得ます。会員制リゾートホテルでは、子供さんが多少五月蠅くしても問題ない部屋をアサインしてくれたり、専属担当が付いて個別の便宜を図ってくれたりするケースも少なくないようです。一般の高級ホテルでは、小さな子供さん連れは歓迎され難いですし、他のステイ客にも気を遣って却って気疲れしてしまうこともあります。

富裕層は節税対策としても会員制リゾートホテルに宿泊?

そもそものお話、富裕層向けの会員制リゾートホテルは、会員権を保有する企業オーナーや自営業の富裕層が、利用コストを接待交際費として経費で落とすことを前提に成り立っているケースも少なくありません。つまり、利用する富裕層にとっては、所有企業の節税対策となっている面も否定できないのですね。先にも触れましたが、会員制リゾートホテルの利用に当たっては、会員権を所有している前提で数十万円の年会費、及び数万円の都度の宿泊料を負担することになります。
その上、取引市場も実質存在するリゾートトラスト社の会員権の価格などは、概ね1,000万〜3,000万円台で設定されていることが多いようです。これでは、高年収でも給与所得者の立場では、おいそれと手を出し難いのが実態でしょう。加えて、会員制リゾートホテルの多くが風光明媚な自然の中に設けられているにも関わらず、なぜか会議室やセミナールームが備え付けられている物件が多いものです。
このことは、会員制リゾートホテルを利用する富裕層には、ある種のビジネスのアリバイ作り的な面が必要であることも、否定できないかも知れません。もちろん、会員制リゾートホテルに集う富裕層同士で、現実にビジネス関連の情報交換も折に触れて行われ、新しいビジネスに結び付いているケースもあろうことは、容易に想像がつきますね。会員制リゾートホテルと富裕層のビジネスとは、相性の良い組み合わせだとも言えそうです。

Kenneth S

総合商社のIT戦略担当からIT系ベンチャー企業の経営補佐などを経て、現在は海外在住の個人投資業。時折、物書きもしている。

STAGE(ステージ)