日経ヘルスが注目するのは「腸」
STAGE編集部:特に注目している健康法を教えてください
日経ヘルスは、創刊時から「腸」に注目し、ずっと取材してきました。
これまで、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことが大切とされてきましたが、解析方法の進化などにより、研究が進み、「多様な腸内細菌が存在すること」が重要なのではといわれ始めました。
2020年2月号でも紹介していますが、実際に、健康な人ほど、腸内細菌の多様性が維持されているとわかってきました。腸を健康に保つのは、ひとつの健康法と言えると思います。
STAGE編集部:腸内環境は、体にどう影響するのでしょうか
腸内細菌が出す物質(代謝物)のなかには、強力な殺菌力で有害な細菌から腸を守る物質や、長寿との関連が注目されている物質もあります。
最近は、腸内細菌と、全身の病気との関連にまつわる研究が進み、うつ病や認知症、肥満の人では、腸内細菌の多様性が低下していて、バランスが崩れている人が多いという研究結果もあります。
おもしろい話で、歯周病菌が腸内環境の悪化の原因になっている可能性があるということもわかりました。お口のケアも、腸の健康を保つために大切だと考えられます。芸能人の方など著名な方が歯のケアを大切にしてらっしゃいますが、本当にそうなんですね。
どこを起点に考えるかですが、腸内環境をよくすることは体全体の健康につながるのではと思っています。
STAGE編集部:腸内環境を整えるためには具体的にどうしたら良いですか
腸内細菌の多様性を高めるにはどうすればいいかは、まだはっきりとわかっていないようです。ただ、日経ヘルスでは、お通じを良くすることは大切だろうと考え、便秘を改善するセルフケアをよく紹介しています。食物繊維と発酵食品が2大テーマで、食物繊維豊富な野菜、果物、きのこ、海藻、麦と、納豆やヨーグルトなど発酵食品の手軽なレシピを掲載しています。
機能性乳酸菌の商品も次々と登場しているので、試されるのも手ではと思います。最近は、目の疲れや鼻の不快感、ストレスなど、乳酸菌の様々な機能をうたった機能性表示食品も増えています。
STAGE編集部:自分に合った乳酸菌の選び方は
専門家の方によって意見は異なるのですが、1、2週間とってみて腸の調子が良くなる食品を選ぶと良いといわれています。
あとは、腸内細菌検査のサービスもあります。その結果から、自分の腸内にはどんな菌が多いのか、多様性の度合いなどもわかるようになってきました。
忙しい人におすすめ!2020年注目のトレーニング
STAGE編集部:2020年に注目しているトレーニングはありますか?
短時間でトレーニングしたい方を中心に、EMS(筋電気刺激)スーツを着用して15~20分でトレーニング効果が得られる「時短ジム」が注目されています。X BODY Lab やSIXPAD STATION など続々オープンしています。これは、短時間で全身を鍛えられるので効率的です。
月会費は少し高額なところもありますが、お金があって時間をどう使うかということを重要視している人は選んでいます。私も体験しましたが、トレーナーが出力を調節して、つきっきりでやってくれました。けっこうビリビリきます。
最近は、マシンピラティスの施設も増えています。これまで、ピラティスは、パーソナルトレーナーがついて専用マシンを使って行うか、各自マットを敷いて集団で行うレッスンが多かったのですが、最近増えているマシンピラティスの施設は、各自がベッド型のピラティス専用マシンを使って集団で行います。
CLUB PILATESという北米600店舗展開しているスタジオがありますが、2019年12月に恵比寿に1号店が開業しました。ほかにも、Pilates Kは銀座や大阪など全国5店舗展開しています。マシンピラティスの施設はこれから増えていくと思います。私自身、整形外科の医師に腰痛対策にはピラティスだと勧められ、8年くらい続けています。体幹をしっかり支える筋力がつき、続けていたら腰痛にならなくなりました。
健康維持のために今すぐはじめるべきは「筋トレ」
STAGE編集部:健康を維持にするために、これだけはやっておくべきというものはありますか?
その人の置かれている状況によって異なりますが、運動は重要な要素だとわかっています。「どうしても時間がなくて一つしかできないなら、なにを続けるべきですか?」と聞くと、「スクワット」とおっしゃる専門家が多いですね。もちろん筋トレは全身行った方が良いですが、どれか一つやっておくのであれば、スクワットです。
私も、仕事中に自分の席で、何度かゆっくりと立ち座りしてやっています。もちろんプランクもいいですが、ハードなので、スクワットの方が取り入れやすいようですね。
わざわざできないのであれば、階段の上り下りだけでも意識的に行うといいと思います。
18年の取材で分かった健康のための食事法とは
STAGE編集部:健康のための食事法について教えてください
日経ヘルスでは、多くの食事法を取材してきましたが、津川友介さんの「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」は現時点で一つの解なのではと私は思っています。
津川さんは、データのエビデンスに基づいて食材を5つに分類しています。例えば、健康にいいというデータがしっかりあるのは野菜と果物、魚、精製度の低い炭水化物など。一方、悪いデータがあるのは、加工肉などと紹介されています。
また、日本人を対象とした研究結果から定められた「科学的根拠に基づいた『日本人のためのがん予防法』」の食事の項目も参考になります。減塩、節酒にも言及されていますが、それも重要です。ただ、あまりに厳密にしすぎても、食事を楽しめず、ストレスになりますから、そういった知識も頭に入れつつ、柔軟に対応されるのがいいのではと思っています。
STAGE編集部:白澤編集長の食事について教えてください
わざわざお話しするようなことでもないのですが、気がつくと食物繊維はとれていないことが多いので、積極的にとるようにしています。たとえば、〆切前の忙しい時期には、コンビニを利用しますが、そこでも食物繊維がとれるものを選びます。
手軽なのは、もずく酢と納豆を混ぜた「もずく酢納豆」です。自宅では、たまにキムチも混ぜます。18年間、日経ヘルスで取材をしてきて、お酢と納豆は良いとわかっているので意識的に取り入れています。
あとは、プレーンのヨーグルト1パックに、砂糖を使っていないドライフルーツを一晩漬け込むことも。これは日経ヘルスで何度も取り上げています。一晩置くと、ドライフルーツが柔らかくなってとても美味しいです。
ヨーグルトの最大の弱点は、食物繊維がないこと。そこをドライフルーツで補うわけです。きなこを混ぜるレシピも紹介してきましたが、やはりドライフルーツが一番美味しいですね。
健康で美しく働き続けるために意識したいこと
STAGE編集部:健康で美しく働き続けるために意識すべきことは?
健康を維持することが美しさにつながるのではと、日経ヘルスでは考えています。まず、運動を取り入れ、いつまでも動ける体の土台作りをすることが大切だと思います。運動は骨・筋肉にも、脳にも効くとわかってきました。
特に女性は、40代以降、女性ホルモンの減少により、骨が弱くなりやすくなるので、骨を守るためにも、骨を支える筋肉量を維持するためにも重要です。筋肉は弱くなった関節をサポートする働きもあります。食事による極端なダイエットをすると、やつれたり、げっそりしたりするので、体にいい栄養を“足す”“満たす”意識で食事を選ぶといいと思います。
日経ヘルス2018年8月号の特集で紹介しましたが、2016年の男性の平均寿命は80.98歳、女性の平均寿命は87.14歳。まだまだ伸び続ける可能性があり、2016年生まれの女性が90歳まで生きる割合は、49.9%と推測され、約2人に1人の人があてはまることになります。
人生100年時代、元気に動ける時間を延ばすために、楽しく健康習慣を取り入れることからはじめてみてください。
左から、日経ヘルス、提携する日経グッデイから出版されている筋肉に着目した書籍 ◆女性が医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本/中野ジェームズ修一 (著), 伊藤 恵梨 (監修) ◆強く美しいカラダを手に入れる! 超・尻トレ/荒川裕志(著)、谷本道哉(監修) ◆一生劣化せず今すぐ若返る 整筋・顔体大全/村木 宏衣 (著) (出版社:日経BP)