2019.4.15
ポリティカル・コレクトネスとは? 具体例とともに理解しよう
情報発信者は、無自覚に差別や偏見を含んだ表現を用いてしまうことがあります。近年特に目にするのが、Twitterなどで他意なく発したつぶやきの炎上です。
ここで重要になるのが、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)という観点。日本語にすると「政治的正しさ」。差別的発想や偏見を含む表現や態度をより中立的にしようというものです。
ポリコレによって表現が改訂された具体例を見てみましょう。
●スチュワーデス → 客室乗務員
●看護婦 → 看護師
●ビジネスマン → ビジネスパーソン
●看護婦 → 看護師
●ビジネスマン → ビジネスパーソン
男性や女性を表す表現が用いられていたものを中立的な言葉に置き換えていることがわかります。
発想そのものが問題になった例もあります。たとえば旅行会社H.I.Sが企画した「東大美女図鑑の学生」をウリにした2016年5月のキャンペーン。女性の容姿の重要視、学歴偏重、美女が隣に座るというサービス内容のどれも旧来型の偏った価値観を思わせるものであったため、大きな批判を受けました。
また、アイドルグループ欅坂46の衣装が「ナチスドイツの軍服と酷似している」と批判され、謝罪を余儀なくされた例もあります。
政治的正しさなんてうんざり? ポリコレ先進国アメリカの今
アメリカはポリコレ先進国と言われています。1970年代からすでに論争の対象となってきました。しかし近年、そのアメリカで「ポリコレ疲れ」という現象が生じています。
マリスト大学世論研究所が行った世論調査によれば、有権者の約半数がポリコレ疲れを表明しました。象徴的なのは「メリークリスマス」というあいさつ。今のアメリカ都市部では、クリスマスの挨拶に「メリークリスマス」を控えて「ハッピーホリディ」を用います。キリスト教以外の人々にはクリスマスというキリスト教の行事は無関係だからです。一方、ポリコレに反対するトランプ大統領は、選挙公約に「再びメリークリスマスと言えるようにする」ことを掲げました。
ポリコレを軽視するとハラスメントに気づけない
日本でも「ポリコレ棒(ポリコレを理由に人の発言を叩く棒)」という表現が用いられています。しかし、日本で近年特に問題になっているようなハラスメントでは、依然としてポリコレは重要。なぜ重要なのか、具体例とともに見ていきましょう。
「女は、かわいい格好したらいいのに」
清潔感のある服装以上のものを「性」に結びつけた発想です。服装で何かすすめたいなら、「○○さんはこういう格好も似合うと思う」程度にするほうが良いでしょう。
「男のくせにできないのか」
「男性なら○○できなきゃいけない」という発想は固定観念以外の何物でもありません。「男のくせに(女のくせに)」という言い方自体が、現在はアウトです。
「子どもはいつできるの?」
いつ妊娠するかは、完全にはコントロールできませんし、妊娠できない人もいます。結婚・妊娠・出産という3つをセットで考えてしまうと、思わぬ摩擦を生んでしまうでしょう。聞かないほうがベターです。
清潔感のある服装以上のものを「性」に結びつけた発想です。服装で何かすすめたいなら、「○○さんはこういう格好も似合うと思う」程度にするほうが良いでしょう。
「男のくせにできないのか」
「男性なら○○できなきゃいけない」という発想は固定観念以外の何物でもありません。「男のくせに(女のくせに)」という言い方自体が、現在はアウトです。
「子どもはいつできるの?」
いつ妊娠するかは、完全にはコントロールできませんし、妊娠できない人もいます。結婚・妊娠・出産という3つをセットで考えてしまうと、思わぬ摩擦を生んでしまうでしょう。聞かないほうがベターです。
言葉や概念には使用されてきた歴史があります。かつては問題のなかった表現が、男女機会均等のような価値観の変化が起こることで、摩擦を生む表現になることがあります。私たちは自分が使うすべての言葉や概念の歴史を知ることはできません。そうであればこそ、なるべく中立的な表現を用いるよう意識するほうが得策です。
ポリコレ疲れと呼ばれる現象は、ポリコレ賛成派にせよ反対派にせよ、それが「正しい/正しくない」基準であるという考えが背景にあるでしょう。
しかし本来、ポリコレは一定の「正しさ」を押しつける主張ではありません。あくまで差別的発想や偏見を含む表現や態度をより中立的なものにしようという観点であり、ダイバーシティ社会における調停方法のひとつ。ある男性が配偶者である女性にはもっぱら家事を任せたいと考え、夫婦間で同意が成立して役割分担できていたとしても、女性を「家内」ではなく「妻」と呼ぶ方が、世間での無用な摩擦を避けられるのです。
しかし本来、ポリコレは一定の「正しさ」を押しつける主張ではありません。あくまで差別的発想や偏見を含む表現や態度をより中立的なものにしようという観点であり、ダイバーシティ社会における調停方法のひとつ。ある男性が配偶者である女性にはもっぱら家事を任せたいと考え、夫婦間で同意が成立して役割分担できていたとしても、女性を「家内」ではなく「妻」と呼ぶ方が、世間での無用な摩擦を避けられるのです。
【参考URL】
「「無防備な炎上」を防ぐ「ポリティカル・コレクトネス」入門」、ITmedia ビジネスオンライン、2016年5月26日、 https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1605/26/news035.html
AFP「米国民に「ポリコレ疲れ」 52%が一段の「是正」反対、トランプ時代映す」、AFPBB News、2018年12月20日、 https://www.afpbb.com/articles/-/3203380