それは、私たちの潜在意識の中に「人は経済状況に見合ったお金との付き合い方をするべき」という思考があるからである。「月8万円の生活費の中でやりくりするには100円ショップが適切」という意識が、同時に、「年収1億円の中であればもっと高い消費を行うのが当然」という意識を生むのである。
これとは逆の現象もある。
一流のプロスポーツ選手がポルシェに乗っているのは、それほど違和感がない。しかし、社会人になりたての20代の若者がポルシェに乗っていたらどうだろうか。
スポーツ選手がポルシェに乗っている姿を見ると私たちはこう思う。「並大抵ではない努力をしてきて今の地位を獲得したのだから、ポルシェに乗るくらい当然だ」と。一方で20代の若者に対してはこう思う。「まだ稼ぎも少ないのに、ポルシェに乗るなんて早すぎる」と。
この場合も、「ポルシェを買う」という消費行動そのものは同じ。違うのは、2人の経済状況だ。
一流、つまり高い年俸を稼いでいるスポーツ選手であれば、ポルシェを買うのは正しい消費行動だと多くの人が感じる。だが、収入が少ないであろう若者がそれと同じ消費行動をとると、金銭感覚に問題があるように映ってしまうのである。
こうしたズレや違和感こそが、お金の教養STAGEの考え方の原点なのである。
(『お金原論』170〜172ページより転載)
富者の遺言 第1章 始まり〜本当にそれでいいのですか?[第1話]
元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。
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泉 正人
ファイナンシャルアカデミーグループ代表一般社団法人金融学習協会理事長
日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。