なぜなら、あなたが得をしているということは、相手が損をしているということと同義だからだ。
こちらの希望条件が通ったということは、相手は譲ったということだ。譲った側の立場になって考えれば自明だが、これによって相手から見たあなたの信用が高まることは決してない。「強引な人だ」
「自分の事情ばかりを言う人だ」という印象が残り、大きく信用を失っている可能性が高い。
「自分の事情ばかりを言う人だ」という印象が残り、大きく信用を失っている可能性が高い。
辞めるということを材料に駆け引きをしなくても、仕事で結果を出せば必然的に給料は上がっていく。先述したが、会社からすれば、そうした有能な人材であれば、他社に取られたくないため、できる限り引き抜きや転職の可能性を下げておきたいと考えるからだ。
今回、値引きに応じてくれたのであれば、その分、ここぞという大きな案件で取引をお願いするなど、譲ってもらったことに報いるという配慮も必要だろう。このように、総合的に相手の得を考えてこそ、信用が培われていくのである。
お金はあなたの人格を映す鏡だ。その向き合い方次第で人間的信用を積み上げることもできれば、取り返しがつかないほど信用を落としてしまうこともある。根幹で必要なのは、
「相手に対して誠実に向き合う気持ち」「自分が譲ることで、相手に心地良くなってほしいという気持ち」だ。
「相手に対して誠実に向き合う気持ち」「自分が譲ることで、相手に心地良くなってほしいという気持ち」だ。
「損して得取れ」という言葉があるように、自分の人間的な器を広げ、交渉や駆け引きで相手に勝とうとするのではなく、相手の得を考えて動く思考習慣をつけよう。この思考習慣が、見えないところであなたの信用を積み上げていく。そして、短期的な交渉によって得られたかもしれない「得」の何十倍、何百倍もの価値があるものへと形を変えていずれ戻ってくる。これが信用社会の本質なのだ。
(『お金原論』251〜254ページより転載)
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泉 正人
ファイナンシャルアカデミーグループ代表一般社団法人金融学習協会理事長
日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。