2019年9月13日 更新

働き方改革の知られざるブラックボックス

働き方改革の目指すすがたに、共感するひとは多いでしょう。「ライフワークバランスの実現」「多様な働き方の実現」「副業・兼業の促進」など、公私充実で私のポテンシャルが引き出され、モチベーションも上げてくれそうです。しかし、現実はどうなのでしょうか。

2019.9.13

「働き方改革の功罪」

今回の働き方改革で最も変わった点は「長時間労働の是正」の罰則付きの法律格上げで、これまで手を入れられなかったところに法律のメスが入りました。しかし「結局、家に仕事を持ち帰っている」という声も聞き、要は、法律の遵守が目的となってしまっているケースが多いようです。
ある記事にうなずかされました。経営コンサルタントで採用面接もおこなう筆者は、働き方改革に対して、2つの「功罪」を感じているといいます。
ひとつめは、リソースがないと、働き方改革につぶされる企業があること。ふたつめは、「ライフワークバランス」という言葉が独り歩きしていることです。
”多様な働き方を認めてくれる企業、時間外労働が少ない企業が増えており、賃金のみならず、待遇を改善できない中小企業には、久しく人が集まりにくい状態になっています。”
人手不足のうえ、待遇改善が難しい中小企業に人が集まらず、倒産に至るケースも。例えば、金型職人の確保が必須なメーカーや、実務能力のあるエンジニアが必要なIT企業の倒産例を、筆者は目の当たりにしました。

また改革前後の昨今、中途採用の面接における求職者にある変化を感じているそうです。それは求職者がやたら「ライフワークバランス重視」であること。

前職を辞めた理由として「趣味のドローンの大会に休みを取れなかった」と平然と口にできるような求職者が増えており、彼らは、待遇の良さを要求するのは当然の権利だと言わんばかりだといいます!

このライフワークバランス、数年後には世の生産性をどのくらい向上させているでしょうか。

教員は働き方改革「適用除外」

学生時代の先生や、子どもの担任の先生の勤務状況を慮ってみましょう。先生って、時間外労働が多いですよね。
日々の業務に加え部活の顧問を勤める先生は、休日返上での指導が当たり前です。これは、教員が働き方実行計画から「適用除外」されているからだとご存知でしたか?
その理由は、昭和47年に施行された「教員給与特別措置法」略して給特法です。
給特法には「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」という驚きの下りがあります。その背景には、昭和47年当時は比較にならないくらい教員の残業時間が少なかったことがあります。その代わり「教職調整額」という、毎月の基本給の4%に相当する補助があり、実質的には「残業代の代わり」です。
給特法ができたのは50年も前ですが、その頃は教員の業務の重圧はまだまだ小さかったでしょう。世の中の教育熱は50年でかなり高まり、教員はいじめやスクハラといった扱いにくい問題と対峙しなければならなくなりました。千葉県教育委員会が2019年に実施した調査によると、中学校の教諭の残業が月80時間(過労死ライン)を超える割合は37・9%に上ります。
しかし、未だ「案」の段階ですが、見直しを図ろうという動きもあります。
文部省「学校における働き方改革の実現に向けた方向性」は、「勤務の長時間化の現状と要因」の把握の他、「勤務時間管理の徹底」「学校及び教師が担う業務の明確化・適正化」などの検討事項をまとめました。「教職調整額の見直しについて(案)」では、「給率へのメリハリ」や「時間外勤務手当の支給」が提案されました。
一日も早い教員の働き方改革の施行をのぞむものです。
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