2019年4月9日 更新

就活の話題作りだったはずが、僕はフィリピンで涙を流した。

フリーランス国際協力師としてアフリカのウガンダ共和国で働く筆者。今でさえ国際協力の最前線で活動していますが、大学に入学した当初はこの分野に全く興味がなかったと語ります。 一年生の時、「就活の話題作りになればいい」と思って参加した海外ボランティア。そこで、彼の人生を大きく変える出来事が起こりました。

ボロボロのワンピースを着た一人の女の子

ですがフィリピン滞在の最終日、空港に向かう車の中から僕はある光景を目の当たりにします。

車の往来激しい3車線の道路。車と車の間を通り抜けながら、一人のストリートチルドレンが歩いていました。ボロボロのワンピースを着た7歳くらいの女の子です。

彼女は裸の赤ん坊を抱え、車の窓ガラスを叩きながら「お金をください」と物乞いしていたのです。あの瞬間、雷に打たれたような衝撃が自分の中に走りました。

「今まで色々な場所を訪問してボランティアしてきたのに、まだここにも貧しい子どもがいる。しかも、これまで出会ったどの子どもよりも辛そうな表情をしている。僕が目を向けるべき課題、やるべき活動は、もっと他にもあったんじゃないか…?」

そう、僕は強い後悔に襲われました。

なぜこの世界はこんなにもアンバランスなのか?

その瞬間、もう一つ感じたことがあります。それが、アンバランスすぎる今の世界への憤りです。

「大学の授業が終わり、帰りにコンビニでお菓子を買える僕のような大学生がいる一方で、どうして飛行機でたった数時間来た先のフィリピンには、その日生きるためのお金を得るため物乞いしなくてはならない子どもがいるのか。どうしてこの世界は、これほどまでにアンバランスなのか。」

こんな世界の不平等、本を読んだり、映画を観たりすれば、すぐにでも分かることです。でも、生まれて初めて自分の目で“世界の不条理”を見たからこそ、アンバランスすぎる今の世界に強い憤りを感じました。

空港に着いた後僕はトイレに駆け込み、一人涙を流しました。

5年前の自分に伝えたい。「無力感に負けるな」と

南スーダン難民支援に携わっていた時の筆者。2017年3月撮影

物乞いの女の子と出会った時、僕はどうしようもない無力感に襲われました。目の前に巨大過ぎる問題を突き付けられた気がして、自分の存在がいかにちっぽけかを痛感したんです。

あの瞬間は、「自分なんかに一体何ができるのか」と思っていました。

でも、あれからの5年間、僕はたくさんの国際協力活動に携わってきました。時にはアフリカの難民を支援したり、時には日本で平和講演をしたり、時には自分の経験を本にして出版したり。

「どんな功績を残したのか?」と質問されても、うまく答えられるかは分かりません。でも、少なくとも自分が無力な存在ではないと、胸を張って答えることができます。

国際協力は大きなテーマだからこそ、時として自分一人ができることの限界を痛感させられます。でも、決して無力感に負けることなく、目の前にある自分にできることを淡々と続ければ、きっと道は拓けるはず。

この5年間の経験を通じ、そう確信しています。


フリーランスという立場で働いている今、個人で出来る国際協力に限界を感じ、悔しくなることもあります。そんな時こそ、自分自身に「無力感に負けるな」と言い聞かせたい。

この記事を書き終えた今、改めてそう思います。

原貫太

1994年生まれ。フリーランス国際協力師。早稲田大学卒。 フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動をはじめる。これまでバングラデシュのストリートチルドレンやウガンダの元子ども兵、南スーダンの難民を支援してきた。 大学在学中にNPO法人コンフロントワールドを設立し、新卒で国際協力を仕事にする。また、出版や講演、ブログを通じた啓発活動にも取り組み、2018年3月小野梓記念賞を受賞した。 大学卒業後に適応障害を発症し、同法人の活動から離れる。半年間の闘病生活を経てフリーランスとして活動を再開。現在はアフリカと日本を行き来しながら、国際協力をテーマに多様な働き方を実践している。著書『世界を無視しない大人になるために』 オフィシャルブログ➡https://www.kantahara.com/
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