2019年9月4日 更新

“アート”が身近にあるオフィスはビジネスに好影響をもたらすのか?

オフィスにアート作品を飾る会社が増えています。IT関連企業が現代アート作品を展示するパターンが多いようです。心地よい空間で右脳が刺激されてクリエイティブなアイデアが浮かぶといいます。そこで働く社員の評判は上々で、今後ひろがりをみせそうです。

2019.9.4

会社がまるで「アートギャラリー」になる?

「芸術の秋」到来。アート作品というと「美術館に行って鑑賞するもの」と思われがちですが、自社オフィスの中にアート作品を展示する会社がいま、増えています。それも受付や応接室や役員室やミーティングルームやリラクゼーションルームだけではありません。事務机やパソコンが並ぶワーキングルームの壁面にもアートを飾り、働くビジネスパーソンは仕事中、ちょっと顔を上げれば目に入ってきます。まるでアートギャラリーのようなオフィス環境の中で、人が働いています。社員の間での評判は上々です。

現状は、そのようにオフィスにアートを飾る会社はIT系企業が多く、展示するのは現代アートが多い、という傾向があります。たとえばGMOインターネットグループの本社では、シンプルでユーモラスな味わいがある英国の現代アート作家、ジュリアン・オピーの作品がオフィスのあちこちに展示されています。それは創業者で会長兼社長(CEO)の熊谷正寿氏のコレクションで、全部で70点以上もあり定期的に掛け替えられています。

「わが社のエンジニアやクリエイターは、オフィスの中で『本物』に触れて、いい刺激を受けてほしい」というのが、熊谷氏がアートをオフィスに飾る最大の理由だそうです。しかも、作品は社員が見るだけでなく、オフィスが休みの土曜、日曜に有料の「ギャラリー」として一般開放をしたこともあります。その運営スタッフを社内で募集すると応募が殺到したそうで、社員のアートに対する関心度は高まっていました。

なお、ジュリアン・オピーの作品は、ネット通販大手「ZOZOTOWN」を運営するZOZOのオフィスにも掛けられています。創業社長の前澤友作氏は美術収集家として知られ、現代アートの支援団体の会長も務めています。

美術品レンタルやウォールアート施工も参入

アメリカでは「GAFA」の一角のGoogleや配車のUber、民泊のAirbnbのような有名ネット企業が、競うようにオフィスに現代アート作品を取り入れています。オフィスで企業の個性をアピールしたければ欠かせないアイテムになっているようです。
日本のIT企業ガイアックスは、若手作家の現代アート作品を60点以上オフィスに掛けており、定期的に展示を入れ替えています。ゲーム開発会社の「アカツキ」は、オフィスに遊び心をくすぐる楽しそうなオブジェや絵画をいくつも置いています。そんな環境なら面白いゲームがつくれるかもしれません。
ネット企業のヤフーは2018年11月から2019年1月まで、東京本社のオフィスやカフェテリアなどで、原田郁氏など8組のアーティストの作品を展示しました。これは一般社団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンが手がける現代アートをオフィスに展示してもらうプロジェクト「CVJ Workplace Art Project」の第1弾で、オフィス内での若手作家によるアート制作の実演や作品の販売も行っていました。
「オフィスでアート」の市場に本格参入する企業も現れています。その名もオフィスアート(Office Art/本社:東京)は、アーティストと組んでオフィス空間のウォールアートの"制作・施工"を手がけています。アートアンドリーズン(本社:東京)は、「日本のオフィスにはアートが少ない」と、月々4,800円(税別)の定額制で2,000点以上のアート作品からセレクトしてオフィスにレンタルするサービスを始めています。気に入った作品は買い取りもできるそうで、すでに20社以上の企業が利用しています。

企業が現代アートのパトロンになる一つの形

最近では「アートはビジネスパーソンの基礎教養だ」と唱える人がいて、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周・著/光文社)というビジネス書がよく売れたりしました。仕事ができるビジネスパーソンはアート感度も高いのだそうです。それはともかく、「オフィスをアートギャラリーにする」動きについてはその仕掛け人も経営者も「働く人の創造性を高めるきっかけになればいい」と話しています。「心地よい空間でこそ右脳が刺激されて、クリエイティブなアイデアが浮かぶ」と言う人もいます。働き方改革にからめてアピールし、新卒採用への好影響を期待する企業もあります。
美術は、作品を買い上げるパトロンがつくことで発展してきました。古くは王侯貴族や教会、19世紀の新興のブルジョワ階級、20世紀のアメリカのビリオネア(億万長者)などです。21世紀は、ここに挙げた形で企業が現代アートのパトロンの役割を果たしてくれれば、日本の新進気鋭のアーティストが活躍する場がひろがり、その中から美術史上に残るような傑作が生まれるかもしれません。
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