お金の誕生は、人類の歴史に大きなパラダイムシフトをもたらした。そして、お金の「媒介物」としての役割が大きくなっていくにつれ、私たちの生活とお金のかかわりは、加速度的に密接になってきた。
現代において、私たちの生活とお金とは、もはや一蓮托生だ。生活のあらゆる局面において、その選択には「お金」が多大な影響を及ぼしている。買い物も、住まいも、仕事も、移動手段も、時間の過ごし方も、人間関係も。
しかし、である。この「お金」というものの本質について、これまでいったいどれだけの議論が交わされてきただろうか。これだけ金融工学や経済学が発展した現代にあっても、「お金」そのものの本質についての議論は、ほとんどなされないままになっているのでは ないか。お金が通貨という域を超え、単なる数値になっている今、その数値が何を意味し ているのかを定義する必要があるのではないか。これが本書の筆をとった偽りのない動機だ。
本書は、現代社会にとって欠かせない道具である「お金」について、その本質は何なのかを問い、「お金」という軸から社会構造を捉え直したいという目的で書いた。
ファイナンシャルアカデミーという学校を通じて15年。個人的な体験を含めれば20余年。「お金とは何か」は、私にとっての最大の命題であった。そして、これまで39万人を超える受講生を見てきた結果として、確信を持って言うことができる。
「お金」という軸を通じて自分自身をニュートラルに見ることができれば、他責による 不平不満がなくなり、自分を客観的にコントロールできるようになり、ストレスのない人 生を送ることができる。
「お金」という軸を通じて信用経済の本質を知ることができれば、目の前の収入を増やすことができるだけでなく、社会に大きな影響を与える人材となることができる。
そして、1人ひとりが「お金」という軸を通じて世の中を捉えるようになれば、社会問題として顕在化しているさまざまな歪みをなくすことができ、あるべき未来を見つけ出し ていくことができる、と。
お金はもはや「通貨」ではない。自分や社会の「真実」を知るための道具だ。「お金」という軸から自分や社会をニュートラルに捉え、結果を受け止めたとき、お金は、真実を 知るためのこのうえない道具として、新たな光を放ち始める。
生活や人生と切っても切り離せないものであるにもかかわらず、義務教育でその扱い方を教わることのなかった「お金」。すべての読者が、本書を通じ、お金の本質に気づき、お金との向き合い方、世の中の捉え方に揺るぎない指針を築くことで視界がクリアになり、 人生をもっともっと楽しめる人になっていくこと ── それが私の願いだ。
それでは、「お金とは何か」という、シンプルだが新たな問いへの扉を開けていこう。
お金とは、信用を見える化したもの。(泉 正人)
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