遅刻してくれてありがとう? 加速の時代を生きる私たち
流れの速い現代社会において、時間は大きな価値をもっています。信頼されるビジネスパーソンが遅刻に気をつかうのは当たり前。待たされたほうは時間をムダにされ、その遅れが競争で不利に働くことがあるためです。
ところが、ニューヨーク・タイムズ紙で支局長を務め、2002 年に3度目のピュリツァー賞を受賞したトーマス・フリードマンは、朝食を兼ねたミーティングに遅刻してきた相手に「謝らないでほしい。それどころか、遅刻してくれて、ありがとう」と言ってのけました。
IBM のジョン・E・ケリー3世は、テクノロジーの急激に発展する現在は「自動車が急加速したり急ブレーキをかけたりするときの加速や減速」のような状態であると指摘しました。急加速や急ブレーキがつねに繰り返されている中では、心の安定は難しいもの。グーグルの研究開発機関のテラーCEO も、そうした加速度がすでに平均的な人間と社会構造が適応できるレベルをはるかに超えているとし、多くの人が混乱してしまうとしています。
だからこそ、「パニックを起こしたり、現実逃避したりせずに、立ち止まってじっくり考える必要がある」とフリードマンは言います。著書のタイトルである『遅刻してくれて、ありがとう』は決して嫌味ではありません。立ち止まることで、周りの世界を見回し、考えるひとり時間をもてるようになるのです。
加速の時代に立ち止まることの効用
実は筆者も15 分遅刻して感謝された経験があります。マンツーマンの英会話教室でのことです。マンツーマンですから、私がいなければ講師はレッスンを始められません。到着してすぐに謝罪すると、講師は「いやいや、謝らないで。おかげで僕は休憩できたから」と首を振ったのです。皮肉かと彼の目を見ると、いたって真剣な眼差し。私の遅刻による空き時間を彼は有効活用していたのです。
フリードマンも、相手の遅刻で熟考する時間を得られるとしています。遅刻だけでなく、普段は気にとめない相手と話し、関係を築くことで、「急激な変化の時代に世界を読み解くための自分の枠組みを分解し、よく調べて、組み立て直す」こともできる。その結果、彼の著書『遅刻してくれて、ありがとう』が生まれました。
フリードマンによれば、時代の急激な変化についていけない多くの人々は「未知の人間同士の接触すべてが、自分たちを呑み込んでしまうように感じたり、自分たちをつなぎとめるもの̶̶仕事、地元の文化、家庭や地域や祖国があるという実感̶̶を脅かすと感じたり」します。
けれど、閉鎖的になってしまうことは、多様性を損ない、企業もコミュニティも行き詰まる結果になってしまうでしょう。狭い価値観に閉じ込もらず、可能性に目を向け生産的であるには、足下に「堅牢な床」が必要。自分の内部や周囲の世界を見直すひとり時間で、それを築く必要があります。
相手の遅刻は、あなたの一時停止ボタンを押し、考え始めるための大切なひとり時間をあなたに与えてくれるでしょう。
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