クリエイティブな人は「編集」している|新しい価値を見つけ出す方法

どんな業界であっても、新しい物事が常に求められています。そうはいっても、あらかたの題材は出尽くしている現代社会。多くのクリエイターは、どんなスキルを発揮して、日々新鮮なクリエイティブを生み出しているのでしょうか。 松永光弘著『「アタマのやわらかさ」の原理。』 より、編集という視点で新しい物事を見つけ出す考え方をご紹介します。

2019.10.16

クリエイターはひらめくのではなく見つける

それは「ひらめき」ではなく、「発見」を重視していること。クリエイターたちは、すぐれた企画やアイデアを評価するときに、よく「見つけているね」といいます。
6ページより引用
広告やデザインなど、クリエイティブをテーマとした書籍の企画・編集に携わっている著者。実は、出版だけにとらわれない編集術の実践家であり、編集の考え方を活かした社会人向けスクールや講座をプロデュースしています。商品開発やロボスティックベンチャーなど、企業のアドバイザーも務めているのだとか。
15年にわたり、多くのクリエイターを相手に編集活動をしてきた著者ですが、本著ではありふれたもののとらえ方ではなく、新しいとらえ方をするための考え方のコツが語られています。タイトルにあるように「アタマの柔らかさ」がヒントになっています。
たとえば、本を作るときにはいきなり原稿を書くのではなく、クリエイターたちのアタマの中をのぞくように時間をかけて話し合っているのだといいます。
そんな作業をしているうちに気がついたことは、「ひらめき」ではなく「発見」にあるということです。クリエイターは新しい何かをひらめくのではなく、見つける。そして、見つけるために、アタマの中では絶えず編集が起こっている。編集的に物事をとらえて解釈することによって、物事の価値を普通ではないものに変えることができるのだというのです。
さまざまなことが既にやり尽くされている現代は、今までにない新しいものを生み出すということ自体が至難の技です。新しい価値を見つけ出すアタマの柔らかさを、身につけていきたいものです。

さまざまな視点から物事を見つめる

それは「視点」で考えること。「切り口」といったり、「アングル」といったりする人もいますが、とにかく考える対象となる物事を、さまざまな視点から見つめてみる。
44〜45ページより引用
新しい価値を見つけるために、クリエイターは日々どんな手法を使っているのでしょうか。意外なことに、多くのクリエイターには、メソッドのようなものはないのだといいます。発想を体系化してメソッドを作り出し、日常的に用いるという人はあまりいない。むしろ、何らかの課題を投げかけると、多くのクリエイターはごく普通に考えて悩み、自分の意見を話すのだというのです。
決まったメソッドはない代わりに、クリエイターの考え方には共通しているものがあるようです。それは、「視点」で考えるという姿勢。さまざまな視点で物事を見つめることによって、有効なメッセージや新しい価値が見つかるというのです。
モノ自体は変えずに、とらえ方を変えることによって、新しい価値を見つけ出す。視点で考えるということは、「組み合わせで考える」ことであると著者は説明しています。
さまざまな視点から見るということは、さまざまなものとの組み合わせであると言い換えることができるのだとか。まさに、編集的な物事のとらえ方であるといえるでしょう。

組み合わせて価値やメッセージを引き出す

そもそも、編集とは出版に限ったものではないと著者はいいます。編集とは、組み合わせによって価値やメッセージを引き出すこと。文章や映像といった仕事だけではなく、本来は普遍的でプリミティブな知の営みであるといいます。
アタマが柔らかい人たちは、こんなことが脳内で行われているようです。
1.組み合わせをつくる
2.引き出される価値を読み取る
3.価値を判断する
考える対象に対して、別のモノや人、情報を組み合わせて共通項から価値を読み取る。そして、その価値は求められているものであるか判断する。この3つを繰り返していくことで、新しい価値を見つけ出すことができるといえるでしょう。
新しい可能性を見出す編集という考え方は、これからの時代を生き抜くヒントになりそうです。
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タイトル: 「アタマのやわらかさ」の原理。
著者: 松永光弘
発行: インプレス
定価: 1,500円(税抜)
ナカセコ エミコ

ナカセコ エミコ

(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家/絵本作家/ブックコーディネーター (図書館司書・産業心理カウンセラー・キャリアカウンセラー)。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。
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